賃貸住宅の給湯器が古くなって壊れたときの修理・交換費用は、原則として大家(貸主)の負担です。根拠は貸主の修繕義務を定めた民法606条です。借主はまず管理会社か大家に連絡します(情報基準日: 2026-11-07)。
結論を3行でまとめます。
1. 経年劣化や自然故障なら、修理代も交換代も大家の負担が原則。
2. 先に業者を呼ばず、管理会社へ連絡して記録を残す。
3. お湯が使えない日が続けば、家賃の減額を相談できる。
この記事の要点
- 修繕は貸主の義務(民法606条)。借主のせいで壊れたときだけ例外
- 借主には遅滞なく知らせる義務がある(民法615条)
- 連絡しても直さないときや急ぐときは、借主が修理して費用を請求できる(民法607条の2・608条)
- 使えない期間は家賃が割合に応じて減る(民法611条)。業界団体の目安では「風呂が使えない」が10%・免責3日
給湯器の修理費は誰が払うか|原則は大家、例外は借主の過失
民法606条1項は「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」と定めています。部屋に付いている給湯器は貸主の設備なので、壊れたら直すのは貸主です。
例外は、借主の責任で修繕が必要になった場合です。同じ条文のただし書きに書かれています。物をぶつけて壊したときなどがこれにあたります。
| 壊れた原因 | 負担の原則 | 根拠・補足 |
|---|---|---|
| 長年の使用による劣化・部品の寿命 | 大家 | 民法606条1項(貸主の修繕義務) |
| 原因不明の自然故障 | 大家 | 借主に落ち度がなければ貸主の設備の不具合 |
| 借主が物をぶつけた・誤った操作で壊した | 借主 | 民法606条1項ただし書き |
| 凍結防止の案内を無視して配管が破損 | 借主になることがある | 過失の有無で判断が分かれる。管理会社と相談 |
| 借主が自分で持ち込んだ設備 | 借主 | そもそも貸主の設備ではない |
出典:e-Gov法令検索「民法」第606条(取得日 2026-11-07)。凍結の行は当サイトの整理で、個別の判断は契約と事情によります。
ただし、契約書に修繕の特約がある場合は内容を確かめてください。パッキンや電球のような小さな修繕を借主の負担とする特約はよく見かけます。給湯器本体の交換まで借主に負わせる特約は珍しいので、迷ったら管理会社に条項を示して確認します。
壊れたらまずやること|連絡の順番と記録
民法615条は、修繕が必要になったら借主は「遅滞なく」貸主に知らせると定めています。黙って使い続けて被害が広がると、その分を借主が問われるおそれがあります。
図1 給湯器が壊れたときの連絡の流れ
- 1安全を確保する
ガス臭い・水が漏れ続けるときは、ガス栓や給水の止水栓を閉める - 2症状を記録する
リモコンのエラー番号、日時、水漏れの写真を残す - 3管理会社か大家へ連絡
電話のあと、同じ内容をメールやアプリでも送ると記録が残る - 4修理の日程を決める
業者の手配は貸主側。在庫や部品の取り寄せで日数が変わる - 5使えなかった日数を控える
家賃の減額を相談するときの根拠になる
エラー番号は修理の手配を早めます。番号の意味は給湯器のエラーコード111・140・290・632の意味で確かめられます。冬に急にお湯が出なくなった場合は、凍結かもしれません。凍結でお湯が出ないときの対処を先に見てください。
管理会社へ送る連絡文の例
電話で伝えたあとに、同じ内容を文字でも送っておくと「いつ知らせたか」が残ります。607条の2の「通知」を示す材料にもなります。
連絡文の例
〇〇号室の△△です。本日11月7日の朝から給湯器のお湯が出ません。リモコンに「111」と表示されています。お風呂とキッチンの両方で使えない状態です。修理の手配と、来ていただける日時を教えてください。写真を添付します。
返事がないまま数日たったら、文面を送り直しましょう。そのとき「〇日までに予定が分からなければ、こちらで業者に見てもらいます」と書き足します。日付を入れた期限が、後で「相当の期間」を説明するときの根拠になります。
大家が直してくれないとき|自分で修理して費用を請求できる条件
2020年4月施行の改正民法で、借主が自分で修繕できる場合が条文になりました。民法607条の2です。次のどちらかにあてはまれば、借主が業者を呼んで直せます。
図2 借主が自分で修理できるかのチェック
- □ 貸主に修理が必要だと知らせた(または貸主がすでに知っている)
- □ それなのに、相当の期間がたっても貸主が直さない
- ――または――
- □ 急いで直さないと被害が広がる「急迫の事情」がある
上の2つがそろうか、急迫の事情があれば、民法607条の2で借主が修繕できます。
かかった費用のうち、本来は貸主が払うべき分は「必要費」です。民法608条1項により、借主は貸主に直ちに返すよう求められます。見積書と領収書、連絡した記録は必ず残しておきます。
「相当の期間」が何日かは条文に書かれていません。冬に入浴できない状態か、壊れ方はどうかで変わります。自分で手配する前に、期限を書面で伝えておきます。「○日までに修理の予定が立たなければ、こちらで業者を呼びます」と書けば、後でもめにくくなります。
お湯が使えない間の家賃|減額の目安を計算する
民法611条1項は、借主のせいでなく部屋の一部が使えなくなった場合を定めています。そのとき家賃は、使えない割合に応じて「減額される」とされています。改正前は「請求できる」でしたが、2020年4月からは当然に減る形になりました。
割合の決め方は条文にありません。目安としては、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会の指針があります。名前は「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」(2024年10月4日)です。給湯器そのものの項目はありません。お風呂に入れない状態なら「風呂が使えない」の項目が近く、減額割合10%・免責日数3日です(当サイトの当てはめ)。
計算は「月額家賃×10%×(使えなかった日数−3日)÷30日」です。家賃8万円で試算すると、次の表と図のとおりです。
| 使えなかった日数 | 計算式 | 減額の目安 |
|---|---|---|
| 5日 | 80,000円×10%×(5−3)÷30 | 約533円 |
| 7日 | 80,000円×10%×(7−3)÷30 | 約1,067円 |
| 14日 | 80,000円×10%×(14−3)÷30 | 約2,933円 |
| 30日 | 80,000円×10%×(30−3)÷30 | 約7,200円 |
出典:公益財団法人日本賃貸住宅管理協会「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」(2024年10月4日・取得日 2026-11-07)。e-Gov法令検索「民法」第611条(取得日 2026-11-07)。計算は当サイト。
このガイドラインに法的な拘束力はなく、割合や日数は事情に応じて調整できると明記されています。実際の金額は貸主との話し合いで決まることが多いので、使えなかった日数の記録を添えて相談します。
借主の負担になりやすい場面と、注意したいこと
注意 借主の負担になりやすい3つの場面
- 連絡せずに自分で業者を呼び、貸主が手配すればもっと安く済んだ場合
- 壊れたことを知りながら使い続け、水漏れで床や階下に被害が広がった場合
- 寒波の前に管理会社から凍結防止の案内があったのに、何もしなかった場合
もう一つは、入居時から付いていた設備かどうかです。前の入居者が置いていった「残置物」は、契約で貸主の設備から外されていることがあります。重要事項説明書や契約書の設備欄を見ると、どちらか分かります。
持ち家で給湯器の交換を考えている方は、給湯器の交換費用の相場で種類別の総額を確かめられます。
よくある質問
| よく聞かれること | 先に結論 |
|---|---|
| 賃貸の給湯器が壊れたら誰が払う? | 経年劣化や自然故障なら大家。借主の過失なら借主(民法606条) |
| 大家がなかなか直さないときは? | 知らせても相当の期間直さないか急ぐときは、借主が修理して費用を請求できる(民法607条の2・608条) |
| お湯が出ない間の家賃は? | 使えない割合に応じて減る(民法611条)。業界団体の目安は「風呂が使えない」で10%・免責3日 |
自分で業者を呼んで修理してもいいですか?
先に管理会社か大家へ連絡してください。知らせても相当の期間直さないときや、急迫の事情があるときに限られます。その場合は借主が修理し、費用を請求できます(民法607条の2・608条)。
10年以上使った古い給湯器でも大家の負担ですか?
はい。古くなって壊れたのは借主の責任ではないので、修理や交換は貸主の負担が原則です(民法606条)。
家賃は何もしなくても減りますか?
条文上は使えない割合に応じて当然に減ります(民法611条)。ただ金額は決まっていないので、使えなかった日数を示して貸主と話し合う流れが多いです。
お湯が出ない間の銭湯代は請求できますか?
法律や業界の目安に決まりはありません。契約や事情によるので、領収書を残し、家賃の減額とあわせて管理会社に相談してください。
冬に凍結して壊れたら誰の負担ですか?
寒波による凍結そのものは借主の落ち度とは限りません。管理会社から凍結防止の案内があったのに対策しなかった場合などは、借主の負担を求められることがあります。
管理会社と大家のどちらに連絡しますか?
契約書や入居のしおりにある連絡先へ。管理会社がいれば管理会社、いなければ大家です。夜間の緊急窓口が書かれていることもあります。
出典
- e-Gov法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)」第606条・第607条の2・第608条・第611条・第615条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089(取得日 2026-11-07)
- 公益財団法人日本賃貸住宅管理協会「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」2024年10月4日 PDF(取得日 2026-11-07)
