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エアコンの温度計が20℃を指していても窓ぎわが寒いのは、気のせいではありません。窓の内側の表面温度が低く、体から窓へ熱が逃げているからです。
国が定める窓の断熱等級(JIS H-1からH-8)ごとに内側表面温度を計算すると、室温20℃・外気0℃で5.7℃から17.1℃まで11.4℃の開きが出ます。
この差を体感の数値に直すのが作用温度です。窓から離れた部屋の中央では19.1℃から19.4℃と0.3℃しか変わらないのに、窓ぎわでは17.2℃から19.2℃と2.0℃も動きます。窓の性能は「部屋の平均」ではなく「窓ぎわ」に効きます。
この記事の要点(2026年9月2日確認)
- 窓の内側表面温度は「室温 − 0.13 × 熱貫流率 × 内外温度差」で概算できる。室温20℃・外気0℃なら等級H-1(4.7)で7.8℃、H-5(2.3)で14.0℃
- 国土交通省の窓の性能表示制度では、断熱性能はJIS等級H-1(4.7)からH-8(1.1)の8段階。★3つ以上(1.9以下)がZEH達成の目安
- 体感は室温ではなく作用温度(室温と平均放射温度の平均)で決まる。静穏な気流のもとではグローブ温度とほぼ一致する
- 窓ぎわの作用温度がWHO推奨の18℃を下回るのは、計算上H-3(3.5)より低い性能の窓。単板ガラスとアルミサッシの多くがここに入る
- 内窓は表面温度そのものを上げる。厚手カーテンは表面温度をほとんど上げず、足元へ流れ落ちる冷気(コールドドラフト)を止める。効く相手が違う
「室温20℃なのに窓ぎわが寒い」の正体
部屋の温度計は空気の温度しか測っていません。人が寒いと感じるかどうかは、空気の温度に加えて、まわりの壁・床・天井・窓の表面温度からどれだけ放射で熱を奪われるかで決まります。
冬にいちばん冷たくなる面が窓です。国土交通省の資料でも、屋根や壁に比べて窓やドアからは室内の熱が外に逃げやすいため、窓の断熱性能を高めることがとても重要だと明記されています。
つまり「窓ぎわが寒い」という感覚は、暖房の能力不足ではなく、体のすぐ横に冷たい面があるという配置の問題です。エアコンの設定温度を1℃上げても、窓が冷たいままなら窓ぎわの体感はほとんど改善しません。
窓の断熱性能は8段階で表示されている
2023年に新しくなった窓の性能表示制度では、窓の断熱性能を熱貫流率にもとづくJIS等級(H-1からH-8)と★マークで表示します。★が多いほど熱が逃げにくく、地域によって異なるものの★3つ以上の窓を用いることでZEHを達成できる可能性があるとされています。
| JIS等級 | 熱貫流率(W/㎡K) | 位置づけ |
|---|---|---|
| H-8 | 1.1 | 最上位。樹脂サッシ+Low-E三層複層ガラスの領域 |
| H-7 | 1.5 | 樹脂サッシ+Low-E複層/三層の領域 |
| H-6 | 1.9 | ★4つ相当。国交省パンフの表示ラベル例と同じ値 |
| H-5 | 2.3 | 樹脂サッシ+Low-E複層ガラスの標準的な位置 |
| H-4 | 2.9 | アルミ樹脂複合サッシ+Low-E複層ガラスの領域 |
| H-3 | 3.5 | アルミ樹脂複合サッシの下位 |
| H-2 | 4.1 | アルミサッシ+複層ガラスの領域 |
| H-1 | 4.7 | 等級として表示できる下限 |
| 等級外 | 4.7超 | 単板ガラス+アルミサッシの多くがここ |
出典:国土交通省「省エネ性能向上のための窓の性能表示制度」(2023年4月発行)。組合せの記載は同資料の対応表にもとづく目安。
表面温度は熱貫流率から計算できる
熱貫流率がわかれば、窓の内側がおよそ何度になるかは計算できます。使うのは次の式です。
窓の内側表面温度 = 室温 − 0.13 × 熱貫流率 × (室温 − 外気温)
0.13は室内側の熱伝達抵抗(㎡K/W)。窓の熱貫流率の計算で用いられる標準値です
室温20℃・外気0℃、つまり内外温度差20℃で当てはめます。熱貫流率4.7(H-1)の窓なら、20 − 0.13 × 4.7 × 20 = 7.8℃。熱貫流率2.3(H-5)なら、20 − 0.13 × 2.3 × 20 = 14.0℃です。
つまり同じ室温20℃の部屋でも、窓の内側は7.8℃のことも14.0℃のこともあります。真冬に窓へ手を近づけると冷たく感じるのは、そこだけ気温が一桁になっているからです。
計算:室温20℃・外気0℃・室内側熱伝達抵抗0.13㎡K/Wでの概算。熱貫流率のしきい値は国土交通省「窓の性能表示制度」による。
この計算はカーテンやブラインドを掛けていない状態の値です
国の省エネ基準は、窓の熱貫流率にカーテンや障子の効果を算入していません。カーテンを閉めた場合、ガラス面はここで計算した値よりさらに下がり、部屋側から見える面はカーテンの表面温度に置き換わります。数字の意味が変わるので、後半で分けて扱います。
体感を数値化する「作用温度」
表面温度がわかっても、それだけでは寒さの度合いになりません。人の体感は、空気の温度と、まわりの面から受ける放射の温度(平均放射温度)の両方で決まります。この2つをまとめた指標が作用温度です。
気流が静かな室内(おおむね毎秒0.2m以下)では、作用温度は室温と平均放射温度の平均、つまり2つを足して2で割った値になります。黒球温度計で測るグローブ温度とほぼ一致する値でもあります。
平均放射温度は、その場所から見える各面の温度を、見える割合(形態係数)で重みづけした平均です。ここが今回の要点で、同じ部屋でも立つ位置によって窓の見える割合がまったく違います。
部屋の中央と窓ぎわでは、窓の重みが5倍以上違う
掃き出し窓が1枚ある6畳の洋室を想定します。床10.0㎡、天井10.0㎡、壁の合計31.2㎡で室内表面の合計は51.2㎡、うち窓が3.24㎡です。部屋全体で平均すると窓の占める割合は6.3%にすぎません。
ところが窓から50cmほどの位置に座ると、体の正面の視野は窓でほぼ埋まります。ここでは窓の形態係数を0.35として計算します。窓以外の面は断熱された住宅を想定して19℃としました。
| 窓の断熱等級 | 窓の内側表面温度 | 部屋の中央の作用温度 | 窓ぎわの作用温度 |
|---|---|---|---|
| 等級外(目安5.5) | 5.7℃ | 19.1℃ | 17.2℃ |
| H-1(4.7) | 7.8℃ | 19.1℃ | 17.5℃ |
| H-2(4.1) | 9.3℃ | 19.2℃ | 17.8℃ |
| H-3(3.5) | 10.9℃ | 19.2℃ | 18.1℃ |
| H-4(2.9) | 12.5℃ | 19.3℃ | 18.4℃ |
| H-5(2.3) | 14.0℃ | 19.3℃ | 18.6℃ |
| H-6(1.9) | 15.1℃ | 19.4℃ | 18.8℃ |
| H-7(1.5) | 16.1℃ | 19.4℃ | 19.0℃ |
| H-8(1.1) | 17.1℃ | 19.4℃ | 19.2℃ |
計算:室温20℃・外気0℃、窓以外の室内面19℃。窓の形態係数は部屋の中央0.063(面積比)、窓ぎわ0.35として作用温度=(室温+平均放射温度)÷2で算出。
部屋の中央では、窓が等級外でもH-8でも作用温度は19.1℃から19.4℃で、差はわずか0.3℃です。温度計の読みだけを見て「うちは20℃だから十分」と判断してしまう理由がここにあります。
一方で窓ぎわは17.2℃から19.2℃まで2.0℃動きます。窓の性能は部屋の平均ではなく、窓の近くで過ごす人にだけ集中して効くということです。
WHOが推奨する18℃を、窓ぎわは割り込むことがある
世界保健機関(WHO)は、居住者の健康を守る室温として18℃以上を強く勧告しています。国土交通省もスマートウェルネス住宅等推進事業の調査で、室温が低い住宅の居住者ほど起床時の血圧が高く、断熱改修後に朝の血圧が有意に低下したことを報告しています。
計算値。基準線はWHO住宅と健康に関するガイドラインの推奨室温18℃。
室温20℃という、多くの家庭が普通に設定している条件でも、窓の性能が低いと窓ぎわの作用温度は18℃を割り込みます。等級外・H-1・H-2の3段階が該当し、単板ガラスとアルミサッシの組合せはこの範囲に入ります。
逆に言えば、内窓を足して窓全体をH-5(2.3)相当まで持っていければ、同じ室温のまま窓ぎわの作用温度は18.6℃になり、18℃の線を上回ります。暖房の設定を変えずに体感だけを改善できるのが窓の断熱です。
断熱等級を上げると暖房費そのものも下がる
体感だけでなく費用も動きます。国土交通省の資料には、6地域・木造2階建て約120㎡・エアコン暖房(居室のみ)の条件で、断熱等級別の年間暖房エネルギー消費量を等級4を100として比較した数値が示されています。
出典:国土交通省「省エネ性能向上のための窓の性能表示制度」(2023年4月発行)。建築研究所のエネルギー消費性能計算プログラムによる試算。
等級3から等級4へ上げるだけで暖房エネルギーは186から100へ、およそ46%減ります。等級6まで上げれば等級4の47%、つまり半分以下です。窓は住宅のなかで最も熱が出入りする部位なので、この改善の多くは窓が担っています。
内窓と厚手カーテンは「効く相手」が違う
窓ぎわの寒さには2つの成分があります。1つは冷たい面に熱を吸い取られる放射、もう1つは窓で冷やされた空気が足元へ流れ落ちるコールドドラフト(対流)です。内窓とカーテンは、このどちらに効くかが違います。
内窓は窓全体の熱貫流率そのものを下げます。したがって室内側に面するガラスの表面温度が上がり、放射で奪われる熱が減ります。図3の表で言えば、H-1の行からH-5やH-6の行へ移動する変化です。
厚手カーテンは違います。国の省エネ基準は窓の熱貫流率にカーテンを算入していないため、制度上は窓の性能値を1ミリも動かしません。実際にも、カーテンを閉めるとカーテンとガラスのあいだの空気が冷え、ガラス面はむしろさらに下がります。
ではカーテンは無意味かというと、そうではありません。カーテンが止めているのは、窓面で冷やされた空気が床へ滑り落ちる流れです。足元がすうすうする感覚はほとんどこれで、丈の長いカーテンを床まで垂らして裾の隙間をふさぐと明確に変わります。
内窓(樹脂サッシ+Low-E複層など)
- 窓の熱貫流率そのものを下げる
- 室内側の表面温度が上がる(例:H-1の7.8℃からH-5の14.0℃へ)
- 放射で奪われる熱が減るので、窓ぎわの作用温度が上がる
- 結露の起きにくさにも効く
- 制度上も熱貫流率に反映され、断熱等級の計算に入る
厚手カーテン・ハニカムシェード
- 窓の熱貫流率は制度上も実際も、ほぼ変えない
- ガラス面の温度はむしろ下がる(カーテン裏が冷える)
- 効くのは足元へ落ちるコールドドラフトの抑制
- 裾が床から浮いていると効果が大きく落ちる
- 工事も申請も不要で、その日から試せる
整理:国土交通省の窓の性能表示制度および省エネ基準における熱貫流率の扱いにもとづく。
順番を間違えると効果が出ません
窓ぎわの放射が原因なのにカーテンだけを厚くしても、体感はあまり変わりません。逆に足元の冷気が原因なのに内窓だけを入れると、床付近の不快感が残ることがあります。まず「顔まわりが寒いのか、足元が寒いのか」を切り分けてから対策を選んでください。
どこから手をつけるか
✓温度計を窓から50cmの高さ1.1m(座位の頭の高さ)に置き、部屋の中央と比べる。空気の温度がほぼ同じなら原因は放射
✓窓ガラスに手のひらを近づける。触れずに冷たさを感じるなら、表面温度は室温より10℃以上低い可能性が高い
✓足首の高さだけ寒いかどうかを確かめる。足元だけならコールドドラフトが主因で、まずカーテンの丈を見直す
✓サッシの材質を見る。銀色の金属枠なら等級外からH-2、樹脂や複合なら概ねH-3以上
✓ガラスの厚みを見る。縁に空気層があれば複層、1枚だけなら単板
✓結露の量を記録する。毎朝ガラス下端に水がたまるなら、表面温度が露点を下回っている
チェックの結果、放射が主因で、かつサッシが金属・ガラスが単板なら、費用対効果がいちばん大きいのは内窓の追加です。既存の窓を壊さずに内側へもう1枚足す工事なので、工期は1箇所あたり1時間程度で済みます。
国の補助制度も窓の断熱改修に手厚く、内窓は住宅省エネキャンペーンの主要メニューです。実際にいくら自己負担が残るのかは、窓のサイズとグレードで決まります。
相談・見積もり比較は完全無料。合わない場合は断ってOKです。
無料・比較だけの利用OK・合わなければ断って大丈夫です
よくある質問
窓の内側の表面温度は自分で測れますか?
非接触の赤外線温度計をガラス面へ向けると測れます。ただしガラスは放射率の設定によって読みがずれるため、放射率0.95前後に設定してください。手元に無い場合は、本記事の式(室温 − 0.13 × 熱貫流率 × 内外温度差)で概算しても、傾向をつかむには十分です。
作用温度とグローブ温度は同じものですか?
厳密には別の指標ですが、気流が毎秒0.2m以下の静かな室内ではほぼ一致します。黒球温度計があればグローブ温度を測り、それを作用温度の代わりに使って差し支えありません。
内窓を入れれば暖房費はどれくらい下がりますか?
窓だけの改修で住宅全体の等級が1段階上がるとは限らないため、金額の断定はできません。国土交通省の資料では、6地域・木造2階建て約120㎡の条件で断熱等級3から4へ上がると年間暖房エネルギーが186から100へ、等級6まで上げると47へ下がるとされています。窓は熱の出入りが最も大きい部位なので、この改善の相当部分を窓が担います。
出典
- 国土交通省「住宅の新築・リフォームをお考えのお客様へ 省エネ性能向上のための窓の性能表示制度」(2023年4月発行)/断熱性能のJIS等級と熱貫流率、断熱等級別の暖房エネルギー消費量の比較
- 国土交通省「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」/断熱性能(UA値・ηAC値)と地域区分の考え方
- 国土交通省 報道発表「住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する調査の中間報告」/室温と起床時血圧の関係、断熱改修後の血圧低下
- 世界保健機関(WHO)住宅と健康に関するガイドライン/居住者の健康を守る室温として18℃以上を強く勧告
本記事の表面温度・作用温度は、上記の公表値をもとにした概算です。実際の値は窓の設置状況、外気温、暖房方式、室内の気流によって変わります。
