雨戸とシャッターは、国の省エネ計算にちゃんと登場します。建築研究所が公表している平成28年省エネルギー基準の技術情報には「付属部材の熱抵抗」という表があり、シャッター又は雨戸は0.10(m2K/W)と定められています。
ただし、その効果は半分しか算入されません。同じ技術情報の式では、付属部材がある開口部の熱貫流率を「閉めた状態と開けた状態の平均」で計算します。1日の半分は開けている前提になっているためです。
そして同じ表の和障子は0.18で、雨戸・シャッターの1.8倍あります。紙の障子1枚のほうが、金属のシャッターより国の計算では効くことになっています。この記事では、その理由と、実際に暖房費が年いくら下がるのかを、公式の計算式だけで出します。
この記事の結論
- シャッター・雨戸の熱抵抗は0.10。効果は「半分だけ」算入される
- 窓の熱貫流率は、アルミ単板ガラス窓で19.3%、樹脂+Low-E複層窓では9.1%しか下がらない
- 暖房費の削減は、窓6か所の家で年2,605円(アルミ単板)から年439円(樹脂Low-E)
- 和障子は0.18で、同じ窓でも削減額が1.4〜1.6倍になる。ただし1つの窓で評価できるのは1種類だけ
- 国の補助金は、シャッター・雨戸そのものを対象にしていない。台風対策で対象になるのは合わせガラスだけ
国の計算に雨戸・シャッターは入っている|ただし「半分」で計算される
根拠は、国立研究開発法人 建築研究所が公開している「平成28年省エネルギー基準に準拠したエネルギー消費性能の評価に関する技術情報(住宅)」の第三章第三節です(Ver.26・2026年4月版)。ここに、付属部材が付いた開口部の計算方法が書かれています。
付属部材がある窓の熱貫流率
開口部の熱貫流率 = 0.5 ×(付属部材なしの熱貫流率)+ 0.5 ×(付属部材ありの熱貫流率)
付属部材ありの熱貫流率 = 1 ÷(1 ÷ 付属部材なしの熱貫流率 + 付属部材の熱抵抗)
| 付属部材の種類 | 熱抵抗(m2K/W) |
|---|---|
| シャッター又は雨戸 | 0.10 |
| 和障子 | 0.18 |
出典:建築研究所「平成28年省エネルギー基準に準拠したエネルギー消費性能の評価に関する技術情報(住宅)」第三章第三節 表8(2026年8月30日確認)。同一の開口部に複数の付属部材がある場合は、いずれか1つだけを評価する。
先頭の「0.5」がこの記事の要点です。シャッターを閉めている時間と開けている時間を半々とみなし、両方の平均を年間の性能として扱うという割り切りが、国の計算に組み込まれています。24時間閉めっぱなしにしても計算上の評価は変わりませんし、逆にほとんど閉めない家でも同じ数字になります。
もうひとつ、同じ技術情報には重要な一文があります。窓の熱貫流率を試験や計算で求めるとき、「雨戸又はシャッター等の付属物を閉めた状態での試験及び計算は認められない」と明記されているのです。つまり、メーカーがカタログに載せている窓のUw値には、シャッターの効果は一切含まれていません。
窓の性能別に計算する|下がり幅は9.1%から19.3%
同じ技術情報の付録Bには、枠の種類とガラスの仕様から窓の熱貫流率を出す簡略式(表3)と、ガラスの熱貫流率の一覧(表7)が載っています。この2つを使えば、シャッターを付けた前後の数字を自分で出せます。
| 窓の仕様 | シャッターなし | シャッターあり | 下がり幅 | 削減率 |
|---|---|---|---|---|
| アルミ枠+単板ガラス | 6.26 | 5.06 | 1.21 | 19.3% |
| アルミ枠+複層ガラス(12mm) | 3.87 | 3.33 | 0.54 | 13.9% |
| アルミ樹脂複合枠+Low-E複層(12mm) | 2.59 | 2.32 | 0.27 | 10.3% |
| 樹脂枠+Low-E複層(12mm) | 2.23 | 2.03 | 0.20 | 9.1% |
並べると、はっきりした傾向が出ます。窓の性能が低いほどシャッターの効果は大きく、良い窓ほど小さくなるのです。熱抵抗0.10という固定値を足す計算なので、もとの熱抵抗が小さい(=性能が低い)窓ほど、相対的な上乗せが大きくなります。
これは「シャッターを付けるより先に窓を替えたほうがいい」という話ではなく、順番の問題です。窓を樹脂+Low-E複層に替えてしまえば、あとからシャッターを足しても9.1%しか動きません。逆にアルミ単板のままなら、シャッターを閉める習慣だけで19.3%ぶんの改善が計算上は得られます。
和障子のほうが効く|同じ窓で評価できるのは1種類だけ
表8をもう一度見てください。和障子の熱抵抗は0.18で、シャッター・雨戸の0.10の1.8倍です。国の計算上は、金属のシャッターより紙の障子のほうが断熱に効くことになっています。
熱抵抗が1.8倍でも、実際の削減幅がそのまま1.8倍になるわけではありません。式に入れると次のようになります。
| 窓の仕様 | シャッター (0.10) |
和障子 (0.18) |
和障子は何倍 |
|---|---|---|---|
| アルミ枠+単板ガラス | 6.26 → 5.06 △1.21 | 6.26 → 4.60 △1.66 | 1.38倍 |
| 樹脂枠+Low-E複層(12mm) | 2.23 → 2.03 △0.20 | 2.23 → 1.91 △0.32 | 1.57倍 |
注意|シャッターと障子を両方付けても足し算にはならない
技術情報には「同一の開口部に対して複数の付属部材がある場合は、いずれか1つを評価する」と明記されています。シャッターと和障子の両方が付いていても、計算に使えるのは性能の高いほう1つだけです。風除室に面する場合も同じ扱いで、風除室と付属部材のどちらか一方しか評価できません(風除室の値もシャッターと同じ0.1)。
暖房費は年いくら下がるのか|窓6か所の家で年439円から2,605円
熱貫流率の差を電気代に直します。資源エネルギー庁 省エネポータルが暖房の試算に使っている条件(外気6℃・室温20℃・1日9時間・年169日=年1,521時間、温度差14K)を使い、エアコン暖房の実効COPを4.0、電気料金を31円/kWhとして計算します。
| 窓の仕様 | 腰高窓1か所 1.62m2 |
掃き出し窓1か所 3.31m2 |
窓6か所の家 13.10m2 |
|---|---|---|---|
| アルミ枠+単板ガラス | 322円 | 658円 | 2,605円 |
| アルミ枠+複層ガラス | 144円 | 295円 | 1,167円 |
| アルミ樹脂複合枠+Low-E複層 | 71円 | 145円 | 575円 |
| 樹脂枠+Low-E複層 | 54円 | 111円 | 439円 |
数字を見て拍子抜けした方もいると思います。いちばん効く条件(アルミ単板の家で窓6か所)でも年2,605円、いまどきの樹脂+Low-E複層の家なら年439円です。シャッターの後付けは1か所あたり数万円の工事になるため、暖房費だけで回収するという考え方は成り立ちません。
ただし、この計算には冷房期が入っていません。シャッターは日射そのものを遮るので、夏はここに書いた額とは別の効果があります。夏の窓対策を実額で比べた記事も用意しています(エアコンの電気代を「窓」から下げる)。
国の補助金は雨戸・シャッターを対象にしていない
2026年度の住宅省エネ2026キャンペーンで、開口部の断熱に出る補助は2つあります。どちらも対象は「窓そのもの」で、雨戸・シャッターは入っていません。
- 先進的窓リノベ2026事業(環境省)|対象は窓(ガラス・サッシ)の断熱改修工事で、内窓設置・外窓交換・ガラス交換の3種類。熱貫流率Uw1.9以下などが要件
- みらいエコ住宅2026事業のリフォーム(国土交通省)|開口部の断熱改修・躯体の断熱改修・エコ住宅設備の設置などが対象。付属部材の単独工事は区分そのものが存在しない
理由は、ここまで見てきた計算方法から説明がつきます。国の補助は「窓の熱貫流率がいくつになるか」で区分を切っています。ところが技術情報は窓の性能を測るときにシャッターを閉めた状態での試験・計算を認めていないので、シャッターを付けても窓の区分は1つも動きません。区分が動かない工事に定額を出す仕組みが作れない、という構造です。
台風の飛来物対策として国が補助するのは合わせガラスだけ
「断熱より台風対策で付けたい」という動機のほうが多いかもしれません。実は2026年度の制度には、まさにその用途の補助区分があります。みらいエコ住宅2026事業の「防災性向上改修」です。
ただし公式サイトが定める対象設備は「窓」だけで、基準は次のとおりです。
防災性向上改修の対象基準(みらいエコ住宅2026事業)
「JIS R 3109:2018 建築用ガラスの暴風時における飛来物衝突試験方法」に基づく試験により、屋根瓦の破片相当以上の飛来物の衝突に対して安全性を有することが確認された合わせガラスまたは合わせ複層ガラスであること。施工は「全周支持のはめ込み構法」であること。
| 大きさの区分 | ガラス交換 | 1枚あたり | 外窓交換 | 1か所あたり |
|---|---|---|---|---|
| 大 | 1.4m2以上 | 21,600円 | 2.8m2以上 | 49,200円 |
| 中 | 0.8〜1.4m2 | 14,400円 | 1.6〜2.8m2 | 32,400円 |
| 小 | 0.1〜0.8m2 | 8,400円 | 0.2〜1.6m2 | 19,200円 |
つまり、国が「台風の飛来物に効く」と認めて金額を付けているのは合わせガラスであって、雨戸やシャッターではありません。シャッターの飛来物への強さはメーカーごとの耐風圧性能で示されますが、補助制度の物差しには乗っていないのが2026年度の状況です。
なお、2027年度に向けた動きはあります。国土交通省が2026年8月28日に公表した令和9年度予算概算要求では、住宅・建築物省エネ等改修推進事業の拡充として「特定課題対応リフォーム」が挙げられ、レジリエンス性能の確保・雪害対策・防犯対策・気候風土適応に係る改修が例示されています。地方公共団体の住生活基本計画に位置づけられた課題に対する改修に限られる仕組みなので、地域によって扱いが変わる可能性があります(2027年度の住宅省エネ補助金はいつ発表される?)。
付ける・付けないをどう決めるか
判断のための5つの確認
- いまの窓はアルミ枠+単板ガラスか。そうなら削減率は19.3%で、シャッターの断熱効果がいちばん出る条件
- すでに樹脂枠+Low-E複層なら、断熱目的での上乗せは9.1%・窓6か所で年439円。断熱以外の理由がないと割に合わない
- その窓に和障子があるか。あるなら計算上は障子のほうが効くので、閉める習慣を先に見直す
- 目的が台風なら、国の補助が付くのは合わせガラス。シャッターは自己負担になる前提で見積もる
- 断熱を本気で上げるなら、内窓や外窓交換のほうが桁が違う。補助金の対象にもなる
付けない理由を探す記事ではありません。シャッターには、防犯・遮音・強い雨風の日の安心感といった、熱の計算に出てこない価値があります。ただし「断熱のために付ける」「光熱費で元が取れる」という説明を受けたら、この記事の数字と突き合わせてください。国の計算で出る削減率は、いちばん効く条件でも2割弱です。
窓まわりで熱がどれだけ動くかは、すきま風の量にも左右されます。開口部の隙間を先に塞いだほうが効く場合もあるので、あわせてすきま風対策はどこを塞ぐかで決まるも確認してみてください。
よくある質問
シャッターを一晩じゅう閉めれば、計算上の効果も2倍になりますか
なりません。国の計算式は「付属部材なしの熱貫流率」と「付属部材ありの熱貫流率」を0.5ずつで平均する形に固定されており、閉めている時間の長さを入力する欄がありません。実際の住まい方で得られる効果は変わりますが、省エネ基準の評価や補助金の判定に使う数字は動かない、と理解してください。
シャッターを付ければ断熱等級は上がりますか
外皮平均熱貫流率(UA値)の計算には付属部材が反映されるため、理屈のうえでは効きます。ただし窓の熱貫流率そのものは変わらないので、窓の性能区分で切っている補助制度(先進的窓リノベ2026事業など)の判定は動きません。等級の判定は住宅全体の計算になるため、シャッター1か所で等級が変わることはまずありません。
雨戸とシャッターで断熱効果に差はありますか
国の技術情報では区別されていません。表8は「シャッター又は雨戸」で1行にまとめられており、どちらも熱抵抗0.10です。素材が木でも金属でも、電動でも手動でも、計算上の値は同じになります。
出典
- 国立研究開発法人 建築研究所「平成28年省エネルギー基準に準拠したエネルギー消費性能の評価に関する技術情報(住宅)」第三章第三節 熱貫流率及び線熱貫流率(Ver.26・2026年4月)表3・表7・表8
- みらいエコ住宅2026事業 公式サイト「防災性向上改修【リフォーム】」「対象要件の詳細【リフォーム】」
- 環境省「断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業」令和9年度概算要求資料
- 国土交通省「令和9年度住宅局関係予算概算要求概要」(令和8年8月)
- 資源エネルギー庁 省エネポータルサイト(暖房の算出根拠・金額換算係数31円/kWh)
- いずれも2026年8月30日に閲覧して確認しました。
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