賃貸の結露カビは退去時に誰が払うのか【2026年】国のガイドラインが定める3条件と、6年で1円になる負担割合

水滴が付いた賃貸住宅の窓ガラス。結露のカビの負担は3条件がそろった時だけという記事のアイキャッチ

賃貸で結露によるカビが出ても、それだけで借主負担にはなりません。国土交通省のガイドラインは「①貸主に通知せず ②拭き取るなどの手入れを怠り ③壁等を腐食させた」の3つがそろった場合に限って借主負担としています。負担する場合もクロスは入居6年で残存価値1円まで下がります(2026年9月19日時点のガイドライン再改訂版)。

結論① ガイドラインは「結露は建物の構造上の問題であることが多い」と明記している。カビが出たこと自体は借主の落ち度ではない。
結論② 借主負担になるのは3条件がそろったときだけ。通知を1回しておくだけで①が崩れる。
結論③ 負担すると決まっても全額ではない。クロスは6年で残存価値1円の直線で減り、範囲も原則㎡単位・最大で一面分まで。

この記事の要点

  • 民法621条は「通常の使用による損耗」と「経年変化」を原状回復の対象から除いている。
  • 国のガイドラインで借主負担(区分B)になるのは「通知せず・手入れを怠り・腐食させた」の3条件がそろった場合。
  • クロスの負担割合は入居年数で下がり、6年で残存価値1円になる。
  • 負担範囲は原則㎡単位。色や模様を合わせる場合でも「毀損箇所を含む一面分」までが限度とされる。
  • 結露そのものを止めるには、湿度を下げるか窓の表面温度を上げるかの二択しかない。
目次

「結露が出た=借主負担」ではない|国が定める3つの条件

退去の立会いで「壁のカビは結露を放置したからです」と言われ、クロス全面の張替費用を請求される——という相談は少なくありません。しかし、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)は、結露によるカビをそこまで単純には扱っていません。

ガイドラインの別表1は、壁・天井(クロス)の項目に「結露を放置したことにより拡大したカビ、シミ」を挙げ、これを区分B=賃借人のその後の手入れ等管理が悪く発生・拡大したと考えられるものに分類しています。ただし、その「考え方」欄の書き方が要点です。

ガイドライン別表1(原文)

結露は建物の構造上の問題であることが多いが、賃借人が結露が発生しているにもかかわらず、賃貸人に通知もせず、かつ、拭き取るなどの手入れを怠り、壁等を腐食させた場合には、通常の使用による損耗を超えると判断されることが多いと考えられる。

出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」第1章 別表1(2026年9月19日確認)

最初の一文が「結露は建物の構造上の問題であることが多い」です。つまり国は、結露の発生そのものを原則として建物側の事情と見ています。そのうえで借主負担へ振れる条件を、「通知もせず」「かつ」「手入れを怠り」「壁等を腐食させた場合」と重ねて書いています。3つは「または」ではなく「かつ」でつながっているため、どれか1つでも欠ければ区分Bの要件は満たしません。

図1 借主負担(区分B)になるかどうかの判定 ① 貸主・管理会社に通知したかガイドラインの「賃貸人に通知もせず」に当たるか ② 拭き取るなどの手入れをしたか「拭き取るなどの手入れを怠り」に当たるか ③ 壁等が腐食するまで至ったか「壁等を腐食させた場合」に当たるか いいえ はい いいえ 貸主の負担 通常損耗・経年変化の扱い 3つすべてに当てはまる=借主の負担(区分B) ただし負担は全額ではなく、入居年数で減額される 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」別表1・別表3の記載をもとに作成
図1 3つの条件は「かつ」で連なっているため、1つでも欠ければ借主負担の要件を満たさない。

根拠は民法621条とガイドライン別表3|どちらも「経年変化は貸主」と書いている

原状回復の範囲は、2020年4月施行の改正民法で条文に書き込まれました。民法621条は次のとおりです(e-Gov法令検索の条文を2026年9月19日に確認)。

民法 第六百二十一条(賃借人の原状回復義務)

賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

出典:e-Gov法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)」(2026年9月19日確認)

条文がわざわざ括弧で除いているのが「通常の使用による損耗」と「経年変化」です。ガイドラインの別表3(契約書に添付する原状回復の条件に関する様式)は、この原則を貸主・借主の修繕分担表という形にしています。壁・天井(クロス)の欄を並べると、線引きがそのまま読めます。

貸主(賃貸人)の負担となるもの 借主(賃借人)の負担となるもの
テレビ・冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(いわゆる電気ヤケ)日常の清掃を怠ったための台所の油汚れ
壁に貼ったポスターや絵画の跡結露を放置したことで拡大したカビ、シミ(賃貸人に通知もせず、かつ、拭き取るなどの手入れを怠り、壁等を腐食させた場合)
壁等の画鋲、ピン等の穴(下地ボードの張替えは不要な程度のもの)クーラーから水漏れし、賃借人が放置したため壁が腐食
借主所有のエアコン設置による壁のビス穴・跡タバコ等のヤニ・臭い(居室全体が変色・臭いが付着した場合)
表1 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」別表3「賃貸人・賃借人の修繕分担表」の壁・天井(クロス)欄より抜粋(2026年9月19日確認)。借主負担側の結露の行にも、3条件がそのまま括弧書きで残されている。

注目したいのは、分担表という短い一覧のなかでも、結露の行だけ「賃貸人に通知もせず、かつ、拭き取るなどの手入れを怠り、壁等を腐食させた場合」という条件が省略されずに残っていることです。ガイドラインはこの3条件を、要約の場面でも落とせない要素として扱っています。

借主負担でも全額ではない|クロスは6年で残存価値1円まで下がる

3条件がそろって借主負担(区分B)になった場合でも、修繕費の全額を払う話にはなりません。ガイドラインは経過年数の考え方を導入しており、その理由をこう説明しています。「経年変化・通常損耗の分は、賃借人は賃料として支払ってきているところで」あり、退去時にも負担させると「二重に評価されることになるため、賃貸人と賃借人間の費用負担の配分について合理性を欠く」——つまり家賃で払い済みの分をもう一度取ることはできない、という理屈です。

別表2は壁(クロス)について、「6年で残存価値1円となるような直線(または曲線)を想定し、負担割合を算定する」と定めています。新築時からの経過年数がわからない場合は、入居年数で代替してよいことも本文に書かれています。直線で置くと負担割合は次のように下がります。

図2 入居年数別・クロス張替費用の借主負担割合(6年で残存価値1円の直線) 借主負担と判定された場合でも、この割合を超える請求には根拠がない 入居0年(入居直後)100.0%入居1年83.3%入居2年66.7%入居3年50.0%入居4年33.3%入居5年16.7%入居6年以上実質0%(残存1円) 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」別表2の「6年で残存価値1円」を直線で計算
図2 修繕費が10,000円なら、入居4年での借主負担は約3,333円、入居6年以降は実質1円になる。

この直線は金額に対してそのまま掛け算になります。仮に該当箇所のクロス張替費用が10,000円だとすると、入居2年なら約6,670円、入居4年なら約3,333円、入居6年を過ぎていれば残存価値1円です。長く住んだ部屋ほど、結露のカビで請求できる金額は小さくなるというのがガイドラインの設計です。なお、襖紙や障子紙のような消耗品は減価償却資産にあたらないため、経過年数を考慮しない扱いになっています。

請求できる広さは「㎡単位」が原則|部屋全体の張替は限度を超える

もうひとつ争点になりやすいのが「どこまでの広さを張り替える費用を払うのか」です。ガイドラインは負担対象範囲の基本的な考え方として、「原状回復は、毀損部分の復旧であることから、可能な限り毀損部分に限定し、毀損部分の補修工事が可能な最低限度を施工単位とすることを基本とする」と定めています。

そのうえで、クロスは一部だけ張り替えると色や模様が合わないという実務上の事情を認め、別表2で次のように線を引いています。

項目 ガイドラインの定め 請求が過大になっていないかの見方
工事施工単位壁(クロス)は最低㎡単位見積書に数量(㎡)の記載があるかを確認する
借主の負担単位㎡単位が望ましいが、毀損させた箇所を含む一面分までは借主負担としてもやむをえない一面分を超える範囲(部屋全体など)の請求は、ガイドラインの想定外
居室全体になる場合タバコ等のヤニで居室全体が変色・臭いが付着した場合「のみ」結露のカビは、この「のみ」の例外に含まれていない
経過年数6年で残存価値1円となる直線(または曲線)で負担割合を算定入居年数での減額が明細に反映されているかを確認する
表2 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」別表2(壁・天井(クロスなど))の記載をもとに作成(2026年9月19日確認)。右欄は本サイトによる読み方の整理。

居室全体の張替が借主負担として妥当とされているのは、ガイドライン上はタバコのヤニ・臭いの場合「のみ」です。結露のカビはこの例外に挙がっていません。したがって、カビが1か所に出ただけで部屋4面すべての張替費用を請求されている場合、その見積書はガイドラインの負担単位より広い範囲を含んでいることになります。

注意|ガイドラインは法律そのものではない

このガイドラインに法的な拘束力はなく、契約書に有効な特約がある場合はそちらが優先されることがあります。ただし別表3の様式は、特約が「民法90条及び消費者契約法8条・9条・10条に反しない内容」であることを前提として書かれています。契約書に原状回復の特約がある場合は、退去前に条項の文言を確認してください。判断に迷う内容であれば、お住まいの自治体の消費生活センターや、宅地建物取引業協会などの相談窓口で確認するのが確実です。本記事は制度の読み方を整理したもので、個別の契約についての法的助言ではありません。

いちばん安く効く対策は「通知」|結露そのものを止める順番も決まっている

3条件のうち、借主がもっとも低い費用で崩せるのが①の「通知」です。結露が出ていることを貸主または管理会社に伝え、その記録が残っていれば、ガイドラインが言う「賃貸人に通知もせず」には当たりません。費用は0円で、しかも構造上の問題であれば貸主側で対処すべき事柄なので、伝えること自体が本来の筋でもあります。

記録が残る形で通知するための4点

  • 電話だけで済ませず、メール・専用アプリ・書面など日付が残る手段を1回は使う。
  • どの部屋のどの窓・どの壁かを書き、結露やカビの写真を添える。
  • 返信がなくても、送った側の控えが残っていれば通知した事実は示せる。
  • 拭き取りなど自分で行った手入れも、日付のわかる写真で残しておく(②の条件への備えになる)。

そのうえで、結露そのものを減らす手はふたつしかありません。空気側の湿度を下げるか、窓ガラスの表面温度を上げるかです。結露はガラス表面の温度が室内空気の露点温度を下回ったときに発生するため、この2つ以外に原理的な打ち手はありません。窓の内側表面温度は「室温 − 0.13 × 窓の熱貫流率 × (室温 − 外気温)」で概算でき、室温20℃・外気0℃のとき、国の窓の性能表示のH-1相当(熱貫流率4.7)で約7.8℃、H-5相当(2.3)で約14.0℃、H-8相当(1.1)で約17.1℃になります。窓の性能が上がるほど表面温度が露点から離れ、結露しにくくなるという関係です。露点の早見表と対策の順番は窓の結露対策の決定版にまとめてあります。

賃貸で取れる手段は、原状回復できるかどうかで分かれます。換気と除湿、こまめな拭き取りは費用も痕跡も残りません。窓ガラスに貼る断熱シートや、窓枠の内側に置くタイプの簡易内窓は、両面テープや接着剤を使わない製品を選べば退去時に戻せます。一方、窓枠にビスで固定する本格的な内窓は建物への加工にあたるため、貸主の承諾なしには設置できません。国の補助制度を使う工事も、発注するのは建物の所有者側になります。賃貸では「借主ができること」と「貸主に依頼すること」を分けて、①の通知の時点で貸主側の対処もあわせて求めておくのが最短です。

よくある質問

先に答えると 結論
結露のカビは借主負担か通知せず・手入れを怠り・腐食させたの3条件がそろった場合のみ。1つでも欠ければ貸主負担。
負担するといくらかクロスは6年で残存価値1円。入居4年なら修繕費の約33%、6年以上なら実質1円。
どこまでの広さを払うのか原則は㎡単位、最大でも毀損箇所を含む一面分まで。居室全体はタバコのヤニの場合のみ。

結露によるカビは必ず借主の負担になりますか?

必ずしも借主負担にはなりません。国土交通省のガイドラインは「結露は建物の構造上の問題であることが多い」としたうえで、借主負担となるのは「賃貸人に通知もせず、かつ、拭き取るなどの手入れを怠り、壁等を腐食させた場合」と定めています。3つの条件は「かつ」でつながっているため、貸主や管理会社へ通知していれば、この要件は満たされません。

借主負担になった場合、クロスの張替費用は全額払うのですか?

全額ではありません。ガイドラインは経過年数の考え方を導入し、壁のクロスは「6年で残存価値1円となるような直線(または曲線)を想定し、負担割合を算定する」と定めています。新築時からの年数がわからない場合は入居年数で代替してよいとされており、入居3年なら約50%、入居6年以上なら残存価値1円まで下がります。

カビは1か所なのに、部屋4面すべての張替費用を請求されました。

ガイドラインの負担単位は「㎡単位が望ましいが、賃借人が毀損させた箇所を含む一面分までは張替え費用を賃借人負担としてもやむをえない」とされています。居室全体の張替えを借主負担としてよいと書かれているのは、タバコ等のヤニで居室全体が変色・臭いが付着した場合のみで、結露のカビはその例外に含まれていません。

退去前にしておくと有利になることはありますか?

結露が出た時点で貸主または管理会社へ、日付の残る方法(メールや書面)で伝えておくことです。ガイドラインの3条件のうち「通知もせず」を崩せるため、費用をかけずに最も効きます。拭き取りなどの手入れを行った記録を日付のわかる写真で残しておくと、2つ目の条件への備えにもなります。

出典

  • 国土交通省住宅局「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」第1章 別表1・別表2・別表3(2026年9月19日確認)
  • e-Gov法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)」第621条(2026年9月19日確認)
  • 国土交通省「住宅:『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』(再改訂版)のダウンロード」(2026年9月19日確認)

情報基準日:2026年9月19日

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この記事を書いた人

省エネ住宅ナビ編集部です。国・自治体の公式情報をもとに、補助金・太陽光・蓄電池・エコキュート・リフォームの「いくらかかる?いくら戻る?」を中立の立場で整理しています。数値・期限は必ず一次情報で確認し、情報基準日を明示する編集方針です。

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