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従来型ガス給湯器からエコジョーズに替えて元が取れるかは、年間の節約額ではなく「上乗せして払ってよい価格差の上限」で決まります。
その上限は、点検・取替えの目安である10年ぶんの節約額です。都市ガスなら1人暮らしで約2.9万円、4人以上で約8.1万円、LPガスなら約18.5万円になります。
東京ガスが公表している実売価格では16〜24号の価格差が1,127〜3,434円しかなく、この条件ならどの世帯でも1年強で回収できる計算です。
この記事の要点(2026年8月21日確認)
- 熱効率は従来型81.7%・エコジョーズ95%。ここから逆算すると給湯に使うガスは14.0%減る
- 年間の給湯・保温負荷18.3GJで計算すると、ガス投入量の差は年3,135MJ(都市ガス換算で約69.7立方メートル)
- 金額に直すと都市ガスで年約8,400〜12,500円、LPガス(5.9円/MJ)で年約18,500円
- メーカーが掲げる「年間約43,200円おトク」はLPガス+設定変更(エコスイッチ)+節水を合計した数字で、機器の差だけではない
- エコジョーズは国の給湯省エネ2026事業の対象外(対象はエコキュート・ハイブリッド・エネファームの3機種のみ)
「元が取れるか」は節約額ではなく、払ってよい価格差の上限で決まる
エコジョーズの記事の多くは「年間◯円おトク」で終わっています。しかし読者が現場で迫られる判断は、見積書に並んだ従来型とエコジョーズのどちらに丸を付けるか、という一点です。判断に必要なのは節約額そのものではなく、節約額と価格差のどちらが大きいかです。
そこで本記事は式を1本だけに絞ります。給湯器は「設計上の標準使用期間10年」を目安に点検・取替えが推奨されているため、判断の物差しは10年です。
払ってよい価格差の上限 = 1年あたりの節約額 × 10年
この上限より価格差が小さければ元が取れ、大きければ取れません。あとは1年あたりの節約額を、自分のガス種と単価で正しく出すだけです。以下では公表されている熱効率と負荷の数値から、その節約額を自前で組み立てます。
熱効率から、減るガスの量を計算する
エコジョーズ(潜熱回収型ガス給湯器)は、従来型が捨てていた約200度の排気熱を二次熱交換器で回収します。日本LPガス協会は、従来の給湯器では約80%が限界だった給湯熱効率が、最大95%まで向上したと公表しています。ノーリツは自社の試算条件のなかで、比較対象の従来給湯器を2006年度基準エネルギー消費効率81.7%と明記しています。
同じ試算条件には、年間の給湯・保温負荷が18.3GJ(給湯16.6GJ+追いだき1.7GJ、平成28年省エネルギー基準の計算プログラム・6地域)と書かれています。この2つを割り算するだけで、投入するガスの量が出ます。
削減率は3,135÷22,398で14.0%です。これは「給湯に使うガス」に対する削減率であって、コンロなどを含む家庭全体のガス使用量に対する削減率ではありません。この区別を落とすと、後述するとおり公表値どうしが食い違って見えます。
都市ガスとLPガスで、年間の削減額はここまで変わる
減るガスの量が年3,135MJと決まれば、あとは自分の単価を掛けるだけです。都市ガスは検針票の単位料金(円/立方メートル)を、東京ガス13Aの標準熱量45MJ/立方メートルで割れば円/MJに直せます。
年間の削減額 = 3,135MJ × 自分の円/MJ
都市ガスの円/MJ = 検針票の単位料金(円/立方メートル)÷ 45
同じ機器でも、LPガス世帯は都市ガス世帯のおよそ1.5〜2.2倍の削減額になります。エコジョーズの損得を語るときにガス種を書かない記事は、この時点で結論が変わってしまいます。
東京ガスの公表額は、料金表の基準単位料金で再現できる
東京ガスは、従来型からエコジョーズへ替えた場合のガス料金の節約効果を家族構成別に公表しています。注記には「各家族構成のガス平均使用量を12%削減できた場合」と条件が明記されています。この12%が何を指すのかは書かれていませんが、公表額を削減量で割り戻すと正体が分かります。
| 家族構成 | ガス平均使用量 | 12%ぶんの削減量 | 公表の節約額(月) | 割り戻した単価 |
|---|---|---|---|---|
| 1人暮らし | 14立方メートル | 1.68立方メートル | 244円 | 約145円/立方メートル |
| 2人家族 | 26立方メートル | 3.12立方メートル | 407円 | 130.4円/立方メートル |
| 3人家族 | 34立方メートル | 4.08立方メートル | 532円 | 130.4円/立方メートル |
| 4人家族以上 | 43立方メートル | 5.16立方メートル | 673円 | 130.5円/立方メートル |
2人・3人・4人以上の3件は130.4〜130.5円/立方メートルにぴたりと揃います。これは東京ガスが料金計算の例として示している料金表Bの基準単位料金130.46円/立方メートルと一致します。1人暮らしだけ約145円と高いのは、月14立方メートルという使用量が20立方メートル未満の別の料金表に入るためです。つまり同社の公表額は、公表されている料金表と12%という前提だけで完全に復元できます。
ここで重要なのは、この12%が家庭のガス使用量全体に対する割合だという点です。前章で熱効率から出した14.0%は給湯分だけに対する割合なので、両者は矛盾しません。4人以上世帯を例に取ると、43立方メートル×12ヶ月×12%=年61.9立方メートルとなり、熱効率から求めた年69.7立方メートルと1割強の差に収まります。2つの独立した経路が近い値を出したので、どちらの数字も信頼して使えます。
10年で元が取れる「価格差の上限」早見表
年間の節約額が決まれば、冒頭の式に入れるだけです。都市ガスは東京ガスの公表値(12%前提)、LPガスは熱効率の差だけから求めた金額を使います。
| ガス種・世帯 | 年間の節約額 | 10年で払ってよい価格差の上限 |
|---|---|---|
| 都市ガス・1人暮らし | 2,928円 | 約29,000円 |
| 都市ガス・2人家族 | 4,884円 | 約48,000円 |
| 都市ガス・3人家族 | 6,384円 | 約63,000円 |
| 都市ガス・4人家族以上 | 8,076円 | 約80,000円 |
| LPガス(熱効率差のみ) | 18,498円 | 約184,000円 |
見積書の差額をこの上限と見比べれば、それだけで判断が付きます。念のため、価格差ごとの回収年数も並べておきます。
| 価格差 | 1人暮らし | 2人家族 | 3人家族 | 4人以上 | LPガス |
|---|---|---|---|---|---|
| 3,000円 | 1.0年 | 0.6年 | 0.5年 | 0.4年 | 0.2年 |
| 10,000円 | 3.4年 | 2.0年 | 1.6年 | 1.2年 | 0.5年 |
| 30,000円 | 10.2年 | 6.1年 | 4.7年 | 3.7年 | 1.6年 |
| 50,000円 | 17.1年 | 10.2年 | 7.8年 | 6.2年 | 2.7年 |
| 100,000円 | 34.2年 | 20.5年 | 15.7年 | 12.4年 | 5.4年 |
実際の価格差はいくらか|公表された実売価格では1,127〜3,434円
ここまでで「払ってよい上限」は出ました。問題は実際の価格差です。ところがこの数字は、情報源によって数千円から10万円以上まで割れます。まず、実売価格を号数別に公表している数少ない例として、東京ガスの機器交換の価格表を見ます。パロマのふろ給湯器で、リモコン2つと基本工事費を含んだ販売価格です。
| 号数 | エコジョーズ | 従来型 | 販売価格の差 | 基本工事費の差を引くと |
|---|---|---|---|---|
| 16号 | 156,873円 | 153,439円 | +3,434円 | -966円 |
| 20号 | 165,551円 | 163,311円 | +2,240円 | -2,160円 |
| 24号 | 172,331円 | 171,204円 | +1,127円 | -3,273円 |
販売価格の差は1,127〜3,434円で、前章の上限(1人暮らしでも約29,000円)を大きく下回ります。この条件なら世帯人数にかかわらず1年強で回収できる計算です。
さらに踏み込むと、同社はエコジョーズの基本工事費が従来型より4,400円高いことも公表しています。販売価格の差がそれより小さいということは、本体とリモコンの部分だけを見れば価格差は実質ゼロか、むしろエコジョーズのほうが安いという計算になります。「エコジョーズは本体が高い」という前提そのものが、少なくともこの価格表では成立していません。
一方でノーリツは自社の解説ページで、初期費用の目安をエコジョーズ20〜40万円・従来型ガス給湯器15〜30万円としています。この差を素直に読むと5〜10万円になり、東京ガスの実売価格差とは桁が違います。差が生まれる理由は次章で分解します。ここで押さえるべきは、価格差は製品の性質ではなく、どの業者からどの機種を買うかで決まる変数だということです。
同じ機種でも総額は業者で変わります
上の相場はあくまで平均で、実際の総額は本体の仕入れ値と工事費の設定で数万円単位の差が出ます。お湯が出ない.comは給湯器・エコキュートの交換に対応する業者へまとめて見積もりを依頼できるサービスで、入力は無料です。相場の確認だけの利用でも問題なく、条件が合わなければ断って構いません。
数字が割れる4つの理由
エコジョーズのガス削減率は、公表元によって10%・12%・13%・15%とばらつきます。年間節約額も8,000円から43,200円まで幅があります。どれも嘘ではなく、前提が違うだけです。
理由1|従来型の効率を何%とみるか
日本LPガス協会は約80%、ノーリツは2006年度基準の81.7%。80%なら削減率15.8%、81.7%なら14.0%になり、これだけで2ポイント動きます。
理由2|給湯分に掛けるか、世帯全体に掛けるか
熱効率から出る14.0%は給湯分だけの話です。コンロなど給湯以外を含む世帯全体の使用量に掛け直すと、東京ガスが使う12%に近づきます。
理由3|設定変更と節水が混ざっている
ノーリツの「年間約43,200円おトク」の算出条件には、水道料金265円/立方メートルと、エコスイッチ(シャワー流量10→8L/分、設定温度-1度、ふろ湯量-10L)が併記されています。機器の差だけではありません。
理由4|ガス種と単価の年次が違う
LPガス5.9円/MJは都市ガス換算のおよそ2倍です。都市ガスの単位料金も原料費調整で毎月動きます。単価を書いていない金額は比較できません。
この4点をふまえて、ノーリツの43,200円を分解します。LPガス5.9円/MJで熱効率の差だけを金額にすると年約18,500円。残るおよそ24,700円は、設定変更と節水と水道代の効果です。機器を替えただけで得られるのは43,200円のうち4割ほど、というのが実際のところです。逆にいえば、エコスイッチは機器を替えなくても近い効果を出せる部分を含んでいます。
元が取れないのはどんなときか
ここまでは有利な材料が並びましたが、エコジョーズには構造上の制約があります。次の4点に当てはまる場合、価格差が上限を超えるか、そもそも設置できません。
図5|ここに当てはまると回収できない・設置できない
- ドレン排水の経路が取れない:エコジョーズは燃焼の過程で酸性のドレン水(約80〜100cc/分、約30度)が出ます。中和器を通して排水しますが、排水経路そのものが確保できないと設置できません。
- マンションのパイプシャフト設置:東京ガスは、PS内設置は共用廊下へドレンを流せないため設置できない代表例だと明記しています。ドレンアップ方式や専用部材で対応できる機種もあるため、管理組合への確認が先です。
- 追加工事が必要な設置状況:配管の延長・移設、壁貫通、電源増設などが乗ると、価格差は本体差ではなく工事差で膨らみます。上限を超えるのはたいていこのケースです。
- 中和器の交換が発生する:中和器は一定量のドレン水を中和すると寿命を迎え、エラー92が出て、放置すると93に変わり使えなくなります。従来型にはない部品なので、部品交換費は従来型より高くなります。
もうひとつ、補助金は当てにできません。国の給湯省エネ2026事業の対象機器は、エコキュート・ハイブリッド給湯機・エネファームの3種類だけで、エコジョーズ(潜熱回収型ガス給湯器)は含まれていません(2026年8月21日に公式サイトで確認)。同事業の予算に対する補助金申請額の割合は37%、撤去加算は19%です(2026年8月19日午前0時時点)。エコジョーズを検討する読者にとって、この予算消化率は関係がないという点まで含めて理解しておく必要があります。
自治体の制度では対象になる場合があります。東京都の東京ゼロエミポイントは潜熱回収型ガス給湯器も対象で、東京ガスの機器交換では12,000円(税込)の割引として適用されます。ただし暖房付きふろ給湯器は給湯部熱効率94%以上、給湯専用とふろ給湯器はモード熱効率83.7%以上という性能要件があります。
よくある質問
エコジョーズに国の補助金は使えますか?
2026年8月21日時点で使えません。給湯省エネ2026事業の対象機器はエコキュート・ハイブリッド給湯機・エネファームの3種類で、エコジョーズは含まれていません。ただし東京都の東京ゼロエミポイントのように、自治体の制度では対象になる場合があります。お住まいの自治体の制度を個別に確認してください。
マンションでもエコジョーズに交換できますか?
ドレン水の排水経路が取れるかどうかで決まります。玄関横のパイプシャフト内に給湯器がある場合、共用廊下へドレンを流せないため設置できないことがあります。一方で、浴室の防水パンへポンプで排水するドレンアップ方式や、取替え用の専用部材を使えば設置できる機種もあります。まず管理組合や管理会社に工事申請の要否を確認したうえで、施工業者に現地判断を求めてください。
エコジョーズの維持費は従来型よりどれくらい高くなりますか?
金額はメーカーが公表していないため、本記事では具体額を書きません。確実にいえるのは、従来型にない中和器という部品があり、10年程度で交換が必要になる場合があること、そのぶん部品交換時の費用が従来型より高くなるとメーカー自身が説明していることです。見積もりを取る段階で、中和器交換の想定費用と保証の範囲を業者に確認しておくと、この不確実性を減らせます。
出典・参考
- ノーリツ「エコジョーズについて」(年間給湯・保温負荷18.3GJ、従来給湯器の効率81.7%、LPガス5.9円/MJ、年間約43,200円の算出条件、ドレン水と中和器)2026年8月21日確認
- ノーリツ「エコジョーズの価格相場と費用をノーリツがしっかり解説!」(初期費用の目安、ガス消費量削減の目安10〜15%、中和器のエラー92・93、ドレン水約80〜100cc/分)2026年8月21日確認
- 東京ガス「エコジョーズのメリットと注意点」(家族構成別の節約額と12%の前提、パロマ機の販売価格、基本工事費、PS設置の制約、東京ゼロエミポイント)2026年8月21日確認
- 東京ガス「ガス一般料金」(料金表Bの基本料金1,056.00円・基準単位料金130.46円/立方メートル)2026年8月21日確認
- 東京ガスネットワーク「都市ガスの種類・熱量・圧力・成分」(13Aの標準熱量45MJ/立方メートル)2026年8月21日確認
- 日本LPガス協会「エコジョーズ」(従来型の給湯熱効率は約80%が限界、エコジョーズは最大95%)2026年8月21日確認
- 給湯省エネ2026事業【公式】(対象機器3種、予算に対する補助金申請額の割合37%・撤去加算19%=2026年8月19日午前0時時点)2026年8月21日確認
