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長期優良住宅を取ると、2026年入居の住宅ローン減税の借入限度額は最上位の4,500万円になります。
ただし「ZEH水準との上限差1,000万円 × 0.7% × 13年 = 91万円」は、13年間ずっと残高が4,500万円を超えている場合の理論値です。
4,500万円を35年・金利1.5%で借りた場合、実際の差は約31万円。借入が3,500万円以下なら差はゼロになります。
図1|この記事の要点(2026年8月21日時点の公式情報で確認)
- 認定基準は令和7年4月1日施行の見直しで断熱等性能等級5かつ一次エネルギー消費量等級6が必要になった
- 住宅ローン減税の借入限度額は長期優良・低炭素 4,500万円 / ZEH水準 3,500万円 / 省エネ基準適合 2,000万円(いずれも令和8年入居・新築)
- 差が大きいのはZEH水準との比較ではなく省エネ基準適合住宅との比較(同条件で約161万円)
- 補助金は みらいエコ住宅2026事業で長期優良は最大100万円、ZEH水準住宅は最大60万円
- デメリットは着工前申請・30年以上の維持保全・記録保存。報告を怠ると30万円以下の罰金の規定がある
- 令和7年度の新築一戸建ての認定取得割合は49.8%で5年連続の過去最高
長期優良住宅とは|認定は9つの基準で決まる
長期優良住宅は、長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた住宅として、建築および維持保全の計画を所管行政庁(都道府県・市・区)が認定したものです。新築の認定は平成21年6月に始まり、平成28年4月に増築・改築、令和4年10月に建築行為を伴わない既存住宅へと対象が広がりました。
認定を受けるには、住宅の性能に関する基準に加えて、規模・居住環境・維持保全計画・災害配慮の基準を満たす必要があります。ここを「性能さえ高ければ取れる」と誤解すると、土地の条件で足止めされます。
| 項目 | 求められる内容 |
|---|---|
| 劣化対策 | 数世代にわたり構造躯体が使用できること |
| 耐震性 | 極めて稀な地震に対し、継続利用のための改修が容易になるよう損傷を低減すること |
| 維持管理・更新の容易性 | 内装・設備の清掃、点検、補修、更新を容易に行える措置 |
| 可変性 | ライフスタイルの変化に応じて間取りを変更できる措置(共同住宅等) |
| バリアフリー性 | 将来の改修に対応できる共用廊下等のスペース確保(共同住宅等) |
| 省エネルギー性 | 断熱等性能等級5かつ一次エネルギー消費量等級6(令和7年4月1日施行の基準) |
| 居住環境 | 地区計画・景観計画・建築協定などの地域ルールに配慮していること |
| 住戸面積 | 戸建ては専用部分の合計75平方メートル以上、かつ少なくとも1の階が40平方メートル以上(階段部分を除く) |
| 維持保全計画・災害配慮 | 定期的な点検・補修の計画があること。土砂災害特別警戒区域は対象外(横浜市の運用) |
省エネ性能の基準は令和7年4月1日施行の見直しで引き上げられ、それ以前の断熱等性能等級4では認定を受けられません。この水準はZEH水準省エネ住宅と同じ等級で、2025年4月から始まった省エネ基準の適合義務化で求められる最低ラインより2段階上にあたります。
メリット1|住宅ローン減税の借入限度額が最上位の4,500万円になる
令和8年度税制改正で住宅ローン減税は5年延長され、令和8年1月1日から令和12年12月31日までに入居する人が対象になりました。控除率0.7%・控除期間13年は共通で、住宅の性能によって変わるのは借入限度額です。
| 住宅の区分 | 借入限度額 | 子育て世帯等 | 控除期間 |
|---|---|---|---|
| 長期優良住宅 | 4,500万円 | 5,000万円 | 13年 |
| 低炭素住宅 | 4,500万円 | 5,000万円 | 13年 |
| ZEH水準省エネ住宅 | 3,500万円 | 4,500万円 | 13年 |
| 省エネ基準適合住宅 | 2,000万円 | 3,000万円 | 13年 |
長期優良住宅と低炭素住宅が同じ4,500万円で並び、ZEH水準省エネ住宅はその1段下の3,500万円です。ZEH水準の性能で建てても、長期優良か低炭素の認定を取らなければ枠がひとつ下がる、という構造になっています。
上限差1,000万円は91万円の得か|借入額別に実際の差を計算した
多くの記事は「長期優良住宅は借入限度額が1,000万円多いので、1,000万円 × 0.7% × 13年 = 91万円お得」と書きます。これは間違いではありませんが、13年間ずっと年末のローン残高が4,500万円を上回っている場合だけ成立する上限値です。
控除額は毎年の年末残高と借入限度額の小さいほうで決まります。元金は毎年減っていくので、残高が3,500万円を下回った年からは、長期優良でもZEH水準でも控除額はまったく同じになります。そこで、元利均等返済・返済期間35年・全期間金利1.5%・繰上返済なしという条件で、13年分の年末残高を計算し、実際の差額を出しました。
| 借入額 | 長期優良の控除総額 | ZEH水準の控除総額 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 理論上限(残高が常に4,500万円超) | 409.5万円 | 318.5万円 | 91.0万円 |
| 5,000万円 | 374.7万円 | 318.1万円 | 56.6万円 |
| 4,500万円 | 342.8万円 | 312.1万円 | 30.7万円 |
| 3,500万円 | 266.6万円 | 266.6万円 | 0円 |
4,500万円を借りた場合、年末残高が3,500万円を下回るのは10年目です。つまり差がつくのは最初の9年分だけで、合計しても約31万円にとどまります。借入が3,500万円以下なら、長期優良住宅を取っても住宅ローン減税の額は1円も変わりません。
一方、比較の相手を省エネ基準適合住宅(借入限度額2,000万円)に変えると話は逆転します。同じ4,500万円の借入なら差は約161万円、3,500万円の借入でも約85万円です。長期優良住宅の減税メリットは「ZEH水準との差」ではなく「最低ラインとの差」で見るほうが実態に近いといえます。
注意|控除しきれない年があると差はさらに縮む
住宅ローン減税は所得税から控除し、引ききれない分だけを住民税から控除します。住民税からの控除には課税総所得金額等の5%(最大97,500円)という上限があるため、納税額が小さい世帯では上の試算どおりには受け取れません。図5は「控除しきれる場合」の上限値です。
長期優良住宅を標準仕様で通せる会社かどうかは、依頼先で大きく違う
認定に必要な断熱等性能等級5・一次エネルギー消費量等級6は、標準仕様で満たせる会社もあれば、オプション扱いで数十万円の追加になる会社もあります。「持ち家計画」は、建てたいエリアと希望条件を入れると、対応できるハウスメーカー・工務店のカタログをまとめて取り寄せられる無料サービスです。全国のエリアに対応しており、Webだけで完結します。カタログには断熱仕様やサッシの種類が書かれているので、この記事の認定基準と突き合わせれば、長期優良住宅を追加費用なしで取れる会社かどうかを営業担当と会う前に見分けられます。
入力は約3分・利用料は無料/気になる会社だけを選んで請求できます
メリット2|補助金と税の特例は実額でいくら差がつくか
住宅ローン減税以外の優遇は、補助金と3つの税の特例です。まず補助金は、みらいエコ住宅2026事業で長期優良住宅の新築が最大100万円、ZEH水準住宅が最大60万円。差は40万円で、これは借入額に左右されない確定的な差です。制度全体の内容はみらいエコ住宅2026事業の解説記事で扱っています。
| 税目 | 一般住宅の特例 | 長期優良住宅の特例 |
|---|---|---|
| 固定資産税の減額期間 | 3年間(マンション等は5年間) | 5年間(マンション等は7年間) |
| 登録免許税(保存登記) | 0.15% | 0.1% |
| 登録免許税(移転登記) | 0.3% | 戸建0.2%・マンション0.1% |
| 不動産取得税の控除額 | 1,200万円 | 1,300万円 |
この3つは率や年数で示されるので実額が見えにくいのですが、建物の固定資産税評価額を1,200万円と置くと具体的に計算できます。固定資産税は1,200万円 × 1.4% = 16.8万円で、その2分の1にあたる8.4万円が毎年軽減されます。長期優良は5年、一般住宅は3年なので、差は2年分の16.8万円です。なお新築住宅の減額は床面積120平方メートル相当分までが対象なので、延床がこれを超える住宅では超過分に減額が及びません。
登録免許税の保存登記は0.15%と0.1%の差なので、1,200万円に対して6,000円の差にとどまります。不動産取得税は控除額が100万円増えるので、税率3%を掛けて3万円の差。ただし評価額が1,200万円以下なら一般住宅の控除でも税額がゼロになるため、この100万円の上乗せは効きません。
つまり税の特例3点で増えるのは合わせて20万円前後です。長期優良住宅を取る金銭的な理由は、税の特例ではなく補助金の40万円と、借入額が大きい場合の住宅ローン減税にあります。
デメリット|着工前の申請と30年の維持保全がセットになる
長期優良住宅の負担は、建てるときの手間だけでは終わりません。認定を受けた人は認定計画実施者と呼ばれ、住宅の建築と維持保全について法律上の義務を負い続けます。
図8|長期優良住宅で必ず発生する5つの負担
- 着工前に申請しなければならない。登録住宅性能評価機関で構造等の確認を受け、所管行政庁へ申請する。着工後は申請できない
- 30年以上にわたり維持保全を行う。認定を受けた維持保全計画に沿って定期的な点検・補修を続ける
- 建築と維持保全の記録を作成・保存する。認定申請書、設計図書、認定通知書、点検の記録などを保管する(電子データも可)
- 設計変更・増築・リフォームは工事着手前に計画変更の認定が必要。認定基準に適合させたうえで申請する
- 相続・売買では地位の承継の承認手続きが必要。承継すると維持保全の義務も引き継がれる
見落とされやすいのが、所管行政庁が実際に調査を行っている点です。横浜市は建築工事の完了日を基準におおむね5年、10年、20年、30年が経過した住宅から無作為に抽出し、毎年9月から11月ごろに報告依頼書を郵送しています。岡山市は建築後5年以上を経過したものを対象に、報告書と点検・修繕の記録の写しの提出を求めています。
注意|報告しない・虚偽の報告をすると30万円以下の罰金の規定がある
国土交通省は、認定計画実施者が報告の求めに応じない場合や虚偽の報告をした場合に30万円以下の罰金に処せられることがあると明記しています。岡山市も同じ内容を法第20条として案内しています。さらに、建築・維持保全が適切になされていないと認められると是正指導や改善命令の対象になり、改善命令に違反すると認定を取り消される場合があります。
もうひとつのデメリットは、土地の条件で認定できないことがある点です。認定基準には地区計画や景観計画などに配慮する居住環境基準があり、横浜市の場合は都市計画施設の区域や土地区画整理事業の施行区域では認定できないことがあると明記されています。災害配慮基準では土砂災害特別警戒区域が認定の対象から外されます。性能は満たしていても、敷地の位置だけで前提が崩れることがあるので、土地が決まった段階で所管行政庁に確認しておくのが安全です。
費用について、全国一律の金額は存在しません。所管行政庁へ支払う認定申請の手数料は各自治体の条例で定められ、登録住宅性能評価機関による技術的審査の費用は機関ごとに異なるためです。金額を知りたい場合は、建築予定地の所管行政庁の手数料の案内と、依頼する評価機関の料金表の2つを確認してください。当サイトでは根拠の取れない相場額は掲載しません。
新築戸建ての約5割が認定を取る時代|それでも取らない判断が合理的なケース
国土交通省が2026年7月17日に公表した令和7年度末時点の認定状況では、新築一戸建ての認定は155,838戸で、新設住宅着工戸数に対する割合は49.8%に達しました。5年連続で過去最高を更新しています。
一方で共同住宅等は9,433戸・2.4%にとどまり、戸建てとの差は20倍以上あります。また新築以外の認定はほとんど使われていません。令和7年度の増築・改築の認定は67戸、建築行為を伴わない既存住宅の認定は127戸で、新築の累計190万戸に対して桁が3つ以上違います。長期優良住宅は事実上、新築一戸建てのための制度だというのが実績の示す姿です。
では誰が取らなくてよいのか。判断は「借入額」「補助金を使うか」「点検を続けられるか」の3点でほぼ決まります。
図11|契約前に確認したい6項目
- 依頼先の標準仕様で断熱等性能等級5・一次エネルギー消費量等級6に届くか。届かない場合の追加費用はいくらか
- 認定申請の手数料と技術的審査の費用を、見積書のどの項目に入れているか
- 建築予定地が土砂災害特別警戒区域や都市計画施設の区域に該当しないか
- 戸建てなら専用部分の合計が75平方メートル以上あるか
- 維持保全計画の点検時期と、点検を担当する会社が誰になっているか
- 年末のローン残高が13年間どう推移するか(3,500万円を下回る年から減税の差は消える)
よくある質問
着工後に長期優良住宅の認定を申請できますか。
できません。国土交通省は、認定を受けようとする方は建築および維持保全に関する計画を作成し、着工前に所管行政庁に申請する必要があると明記しています。手順としては、着工前に登録住宅性能評価機関へ申請して構造等の確認を受け、そのうえで所管行政庁へ認定申請を行い、認定後に認定通知書が発行されます。
長期優良住宅とZEH水準省エネ住宅は、どちらが得ですか。
借入額によって変わります。当サイトの試算では、4,500万円を35年・金利1.5%で借りた場合の住宅ローン減税の差は約31万円、3,500万円以下の借入なら差はゼロです。一方でみらいエコ住宅2026事業の補助額は長期優良が最大100万円、ZEH水準住宅が最大60万円なので、補助金を使うなら40万円の差が確定的に生じます。
認定を受けたあと、点検をしないとどうなりますか。
所管行政庁から報告を求められることがあり、報告をしない場合や虚偽の報告をした場合は30万円以下の罰金に処せられることがあります。建築や維持保全が適切になされていないと認められると是正指導や改善命令の対象になり、改善命令に違反すると認定を取り消される場合があります。横浜市や岡山市は実際に抽出調査を実施しています。
出典
- 国土交通省「住宅:長期優良住宅のページ」(最終更新 令和7年12月1日・2026年8月21日確認)
- 国土交通省 報道発表「新築戸建ての着工戸数のうち長期優良住宅の認定取得割合が約5割に(令和7年度末時点)」2026年7月17日
- 国土交通省「認定長期優良住宅を取得したときに利用できる減税制度」(2026年8月21日確認)
- 国土交通省「住宅ローン減税」および「住宅を新築したとき・建築後使用されたことのない住宅を取得したとき」(2026年6月更新・2026年8月21日確認)
- 横浜市「2. 認定基準等について」「長期優良住宅の維持保全について」(2026年1月8日更新・2026年8月21日確認)
- 岡山市「長期優良住宅の維持保全について」(2025年10月16日・2026年8月21日確認)
