2027年度(令和9年度)の住宅省エネ補助金は、例年より約3か月早く姿を見せました。国土交通省が2026年8月28日に公表した令和9年度予算概算要求に、新規事業として「みらいエコ住宅2027事業」2,000億円が計上されています。
過去4年は、いずれも11月下旬の補正予算で決まっていました。10月末から11月下旬に総合経済対策が閣議決定され、その1週間前後で補正予算案が閣議決定され、交付申請の受付が始まるのは翌年3月末という流れが4年続いています。
ただし概算要求は「要求」であって「決定」ではありません。金額も要件も、12月の政府予算案までに変わります。この記事では、過去4年の実際の日付と、2026年8月30日時点で確認できる令和9年度の要求内容を、すべて公式資料から並べます。
この記事でわかること
- 過去4年の「総合経済対策の日」「補正予算案の日」「受付開始日」の実際の日付
- 対象工事の着手起点日が、年度によって最大8日ずれてきた理由
- 令和9年度概算要求に載った住宅向け3事業と要求額(合計3,480億円)
- GX志向型住宅の補助額が、要求段階で10万円下がっていること
- 2026年度の事業を使う人が、いま押さえるべき2つの期限
結論|2027年度は「概算要求の段階」で3事業が並んだ
国の住宅向け省エネ補助金には、大きく2つの財布があります。ひとつは毎年8月末に各省が財務省へ出す当初予算の概算要求、もうひとつは秋の経済対策にあわせて組まれる補正予算です。
住宅省エネキャンペーン(先進的窓リノベ・給湯省エネ・みらいエコ住宅など)は、2023年から2026年まで4年連続で補正予算で措置されてきました。だから「来年の補助金は概算要求を見れば分かる」という説明は、この4年に関しては当てはまりませんでした。
ところが2026年8月28日に公表された令和9年度概算要求では、国土交通省・環境省の両方が、消費者向けの定額補助にあたる事業を当初予算として要求しています。4年ぶりに「概算要求を見れば来年度の輪郭が分かる」年になった、というのが2026年8月30日時点の状況です。
過去4年の発表日|「総合経済対策 → 補正予算案 → 3月末に受付開始」が定型だった
まず、実績を並べます。すべて国土交通省・環境省の報道発表と各事業の公式サイトから拾った日付です。
| キャンペーン | 総合経済対策の閣議決定 | 補正予算案の閣議決定 | 対象工事の着手起点 | 交付申請の受付開始 |
|---|---|---|---|---|
| 住宅省エネ2023 こどもエコすまい | 2022年10月28日 | 2022年11月8日 | 2022年11月8日 | 2023年3月下旬 |
| 住宅省エネ2024 子育てエコホーム | 2023年11月2日 | 2023年11月10日 | 2023年11月2日 | 2024年3月29日 |
| 住宅省エネ2025 子育てグリーン | 2024年11月22日 | 2024年11月29日 | 2024年11月22日 | 2025年3月31日 |
| 住宅省エネ2026 みらいエコ住宅 | 2025年11月21日 | 2025年11月28日 | 2025年11月28日 | 2026年3月31日 |
4年に共通するのは次の3点です。
- 10月末〜11月下旬に総合経済対策が閣議決定される
- その7〜11日後に補正予算案が閣議決定され、事業の骨格(補助額・要件)が報道発表で公表される
- 実際に申請できるのは翌年3月下旬から末。閣議決定から4か月前後の空白がある
この「4か月の空白」が、毎年トラブルの元になります。補助対象になる工事の着手日は閣議決定の日までさかのぼるのに、申請できるのは3月末。先に工事を終えてしまい、事業者登録が間に合わずに申請できないケースが毎年起きています。
見落とされている論点|着手の起点日は「総合経済対策の日」と「予算案の日」で入れ替わる
前の表の「対象工事の着手起点」の列をもう一度見てください。4年のうち2年は総合経済対策の閣議決定日、2年は補正予算案の閣議決定日が起点になっています。同じ制度の後継事業なのに、根拠にする日付が入れ替わっているのです。
| 年度 | 起点にした日 | 2つの閣議決定の間隔 | 前年の考え方だったら |
|---|---|---|---|
| 住宅省エネ2023 | 補正予算案の日 | 11日 | — |
| 住宅省エネ2024 | 総合経済対策の日 | 8日 | 8日ぶん狭くなる |
| 住宅省エネ2025 | 総合経済対策の日 | 7日 | 同じ考え方 |
| 住宅省エネ2026 | 補正予算案の日 | 7日 | 7日ぶん広かった |
住宅省エネ2026事業では、2025年11月21日の総合経済対策から11月28日の補正予算案までの7日間に着手した工事は対象外になりました。前年と同じ考え方を前提に「経済対策が出たから着工していい」と判断していたら、その7日間は補助を取り逃がしていたことになります。
注意|2026年度は起点だけでなく「工事の種類」も変わった
国土交通省は令和7年11月28日の報道発表の補足事項で、新築の対象工事を、子育てグリーン住宅支援事業の「基礎工事より後の工程の工事」から、みらいエコ住宅2026事業では「基礎工事」へ変更したと明記しています。起点日は7日ぶん遅くなった一方、工事の種類のほうは前倒しになりました。年度をまたぐ比較は、日付と工事種類の両方を見ないと結論が逆になります。
そして2027年度についても、手がかりがあります。環境省が令和9年度概算要求に出した「脱炭素志向型住宅の導入支援事業」の要求資料には、対象について「予算案の閣議決定日以降に、工事着手したものに限る」と書かれています。要求段階での記述なので確定ではありませんが、2026年度と同じ考え方が引き継がれる可能性が高いことは読み取れます。
令和9年度概算要求に載った住宅向け3事業|合計3,480億円の要求
国土交通省は令和9年度予算の概算要求概要を2026年8月28日に公表しました。住宅局関係の要求総額は4,187億円で、令和8年度当初予算1,721億円の2.43倍です。内訳は公共事業が1,644億円から3,585億円(2.18倍)、行政経費が76億円から602億円(7.87倍)となっています。
このうち、一般の住まい手が直接受け取る定額補助にあたるのは次の3事業です。いずれも「新規」として要求されています。
| 事業名 | 所管 | 令和9年度要求額 | 2026年度の対応事業 |
|---|---|---|---|
| みらいエコ住宅2027事業 | 国土交通省 | 2,000億円 | みらいエコ住宅2026事業 新築1,750+リフォーム300 |
| 断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業 | 環境省 | 980億円 | 先進的窓リノベ2026事業 1,125億円 |
| 脱炭素志向型住宅の導入支援事業 | 環境省 | 500億円 | みらいエコ住宅2026事業の GX志向型住宅(環境省分) |
| 合計 | — | 3,480億円 | 3,780億円(給湯・賃貸集合を含む) |
断熱窓の事業は、環境省の要求資料に「実施期間:令和9年度〜」「令和9年度要求額 98,000百万円(新規)」と明記されています。対象は2026年度と同じく、住宅と一部の非住宅における窓(ガラス・サッシ)の断熱改修工事(内窓設置・外窓交換・ガラス交換)で、熱貫流率Uw1.9以下などの要件も維持されています。
一方で、給湯省エネ事業にあたる経済産業省側の要求事業は、2026年8月30日時点の当サイトの確認範囲では特定できませんでした。ただし環境省の2事業はどちらも要求資料の表題に「(経済産業省・国土交通省連携事業)」と記されており、3省連携の枠組み自体は令和9年度も維持される前提で組まれています。
要求段階でGX志向型住宅は10万円下がっている
金額の中身まで踏み込むと、上振れだけではないことが分かります。環境省「脱炭素志向型住宅の導入支援事業」の要求資料に書かれた補助額は、2026年度のGX志向型住宅より1戸あたり10万円低い水準です。
| 地域区分 | 2026年度(確定) GX志向型住宅 |
2027年度(要求) 脱炭素志向型住宅 |
差 |
|---|---|---|---|
| 1〜4地域(寒冷地) | 125万円/戸 | 115万円/戸 | −10万円 |
| 5〜8地域(その他) | 110万円/戸 | 100万円/戸 | −10万円 |
要件は据え置きで金額だけ下がる形なので、「同じ性能の家を建てても受け取れる額が減る」要求になっています。もっとも、これはあくまで8月末時点の要求値です。過去4年は補正予算で組まれたため、要求と最終額を直接比べられる年がなく、どの程度動くかの前例がありません。
リフォーム側では、国土交通省の「住宅・建築物省エネ等改修推進事業」が拡充で要求されています。住宅の省エネ型は省エネ基準到達で30万円/戸、ZEH水準到達で70万円/戸。性能向上型は評価基準で80万円/戸、認定基準で160万円/戸(三世代同居・子育て世帯・既存住宅購入の場合は50万円/戸を加算)。いずれも定額で、寒冷地は加算があります。
概算要求は「決定」ではない|12月までに何が起きるか
ここが最も誤解されやすいところです。概算要求は各省が財務省へ出す希望額であり、そのまま通ることはまずありません。決定までの流れは次のとおりです。
つまり、2027年度の補助額と要件が「使える情報」として固まるのは、早くて11月ごろの経済対策、遅ければ12月下旬の政府予算案の閣議決定にあわせた報道発表です。8月末の概算要求で分かるのは、事業が続く見込みがあることと、要求ベースの金額感までにとどまります。
待つより先に|2026年度事業で今すぐ効く2つの期限
2027年度を待つ判断は、2026年度の枠がどれだけ残っているかとセットで考えるものです。住宅省エネ2026キャンペーンの期限は、環境省・経済産業省・国土交通省が2026年3月30日に同時発表した資料で公表されています。
| 区分 | 申請予約の期限 | 交付申請の期限 |
|---|---|---|
| 新築(ZEH水準・注文住宅) | 2026年8月17日 ※すでに経過 | 2026年9月30日 |
| 新築(上記以外) | 2026年11月16日 | 2026年12月31日 |
| リフォーム(4事業共通) | 2026年11月16日 | 2026年12月31日 |
2026年8月30日時点で残り31日の枠がある
新築の注文住宅でZEH水準を狙う場合、交付申請の期限は2026年9月30日です。申請予約の期限(8月17日)はすでに過ぎているため、いま使えるのは基礎工事が完了して交付申請そのものができる案件だけになります。他の区分より3か月早く閉まる区分なので、着工済みの方は事業者に申請状況を確認してください。
2027年度を待つかどうかを決める5つのチェック
- 使いたい事業の2026年度の予算消化率を公式サイトで確認したか(事業ごとに大きく違う)
- 工事を2027年に回すと、間の冬を今の断熱性能で越すことになる。その光熱費を織り込んだか
- 2027年度も予算案の閣議決定日より前の着工は対象外になる可能性が高いことを理解しているか
- 自治体の補助(都道府県・市区町村)は年度が変わると要件も予算も変わる。国だけで判断していないか
- 事業者の繁忙期(1月〜3月)に工事が重なると、着工が翌年度にずれるリスクがあることを確認したか
よくある質問
2027年度の補助金の申請はいつから始まりますか
2026年8月30日時点で公表されていません。過去4年の実績では、交付申請の受付開始は2023年3月下旬、2024年3月29日、2025年3月31日、2026年3月31日で、いずれも年度替わりの直前でした。同じ流れなら2027年3月末ごろになりますが、令和9年度は当初予算での要求という前例のない形なので、時期がずれる可能性があります。公式の受付開始発表を待ってください。
概算要求に載っていれば、その補助金は必ず実施されますか
されるとは限りません。概算要求は各省が財務省へ出す要求額で、査定を経て12月下旬の政府予算案で額が決まり、翌年の国会で予算が成立して初めて実施されます。事業名や補助額、区分が途中で変わることもあります。2026年8月30日時点で確定しているのは「国土交通省と環境省が要求を出した」という事実までです。
2027年度を待つあいだに工事を始めても大丈夫ですか
補助金を使うつもりなら危険です。過去4年はすべて、対象になる工事の着手日に下限が設けられており、閣議決定の日より前に着手した工事は対象外でした。環境省が令和9年度概算要求に出した「脱炭素志向型住宅の導入支援事業」の資料にも「予算案の閣議決定日以降に、工事着手したものに限る」と書かれています。着工日を先に決めてしまうと、制度が始まっても乗れないことがあります。
出典
- 国土交通省「令和9年度予算」概算要求の概要(令和8年8月28日)/「令和9年度住宅局関係予算概算要求概要」(令和8年8月)
- 環境省「令和9年度(2027年度)エネルギー対策特別会計概算要求」各事業資料(断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業/脱炭素志向型住宅の導入支援事業)
- 国土交通省 報道発表「住宅の省エネ化への支援強化に関する予算案を閣議決定!」(令和7年11月28日・令和6年11月29日)
- 環境省 報道発表「令和7年度補正『住宅省エネ2026キャンペーン』の交付申請(予約含む)の受付開始について」(2026年3月30日)
- 住宅省エネ2026キャンペーン公式サイト/住宅省エネ2024キャンペーン公式サイト
- いずれも2026年8月30日に閲覧して確認しました。
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