本記事にはプロモーションが含まれます
台風で屋根の板金がめくれた、雪の重みで雨樋が壊れた——こうした自然災害による損害なら、火災保険の「風災・雹災・雪災」補償で修理費用が支払われる可能性があります。一方で、経年劣化やサビによる損傷は対象外です。ここを混同させて「保険を使えば実質無料で直せる」と勧誘するのが、消費者庁も注意喚起している住宅修理トラブルの入口です。
結論はシンプルで、①保険会社への連絡は業者ではなく自分で行う、②請求期限は3年(保険法95条)、③申請サポート業者に保険金の30〜40%を払う必要はない——この3点を押さえれば、多くのトラブルは避けられます。この記事では公的機関の一次情報を根拠に、対象の線引きと正しい手順を整理します。
火災保険で修理できるのは「自然災害による損害」だけ
日本損害保険協会は、自然災害による住宅の損害について「多くの場合、加入しているすまいの保険(火災保険、地震保険等)で補償されます」としたうえで、「自然の消耗もしくは劣化または性質によるさびなどによって生じた損害はお支払いの対象とはなりません」と明記しています。判断の分かれ目は「壊れているかどうか」ではなく、「何が原因で壊れたか」です。
| 区分 | 具体例 | 火災保険の扱い |
|---|---|---|
| 風災 | 台風・突風で屋根の棟板金がめくれた、飛来物が外壁に当たり破損した | 対象になり得る |
| 雹災 | 雹(ひょう)で屋根材やカーポート屋根が割れた | 対象になり得る |
| 雪災 | 積雪の重みで雨樋が変形・破損した | 対象になり得る |
| 経年劣化 | 年数の経過による塗膜の色あせ・チョーキング、コーキングのひび割れ | 対象外 |
| サビ・自然消耗 | 金属部のサビ、素材の性質による劣化 | 対象外 |
| 地震・噴火・津波 | 地震で屋根瓦がずれた | 火災保険では対象外(地震保険の領域) |
「風災なら必ず全額出る」わけでもありません。契約時に設定した免責金額(自己負担額)を超えない損害は支払われないためです。日本損害保険協会は免責金額を「損害の一定額部分について、契約者などが自己負担するものとして、契約時に設定する金額」と説明しています。自分の契約の免責金額は、保険証券か契約概要で確認できます。
請求期限は3年|保険法95条の消滅時効
「去年の台風の被害だから、もう遅い」と諦める必要はありません。日本損害保険協会は、保険金請求権について「保険法に基づき、3年を経過すると時効となります」と説明しています(保険法95条:保険給付を請求する権利は、これを行使することができる時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する)。
つまり被害から3年以内であれば請求できる可能性があります。ただし時間が経つほど「その被害が本当にその災害によるものか」の立証は難しくなり、協会も「時間が経過すると事故の調査などが困難となり、適切・迅速な保険金支払いができなくなるおそれがあります」として、速やかな連絡を求めています。被害に気づいたら、まず写真を撮って保険会社に連絡するのが最善です。
火災保険を使った修理の正しい5ステップ
順番を間違えないことが最大の防御になります。先に業者と工事契約を結んでしまうと、保険金が下りなかった場合に工事代金の自己負担だけが残ります。
日本損害保険協会も「損害保険会社や代理店へ連絡する前に、問題のある住宅修理業者や保険金請求代行業者と契約してしまうと、保険金が支払われずに修理代金を自己負担することになったり、解約しようとすると高額な解約手数料を要求されるなどのトラブルに巻き込まれてしまうことがあります」と注意を促しています。①写真 → ②保険会社へ自分で連絡、この2つを業者より先に済ませてください。
「保険申請サポート業者」に保険金の30〜40%を払う必要はない
近年のトラブルの中心は、訪問販売の悪徳業者だけではありません。「申請の手伝いをする、完全成功報酬型」を名乗る保険金請求代行・申請サポート業者です。日本損害保険協会は、実際の相談事例として次の2件を公表しています。
- 「当社で工事をしなかった場合は、保険金の4割を支払ってもらう」と言われ、契約書も手元にない(2018年受付・80歳代男性・関東地方)
- 「完全成功報酬型で、保険金が支払われた時にのみ保険金の30%を請求する」と説明され契約。保険金100万円が下りたが、残る70万円では修理できないと住宅メーカーに言われた(2020年受付・40歳代男性・関東地方)
2件目が問題の本質を示しています。保険金は「修理に必要な費用」として算定されるため、そこから3〜4割を手数料として抜かれると、修理費が構造的に足りなくなります。そして日本損害保険協会は「保険金の請求は、加入者ご自身で!!」と明言しており、請求自体は保険会社・代理店に連絡すれば無料で案内してもらえます。手数料を払う必然性はありません。
相談件数も無視できない規模です。日本損害保険協会によると、住宅修理に保険金が使えると言って勧誘された事例の相談は、2010年度からの累計で11,261件(2020年8月時点)に達しています。また訪問販売によるリフォーム工事(屋根工事・壁工事・塗装工事など)の相談は、2007年度以降、毎年5,000件を超えています。消費者庁も2024年6月27日、「火災保険を使って実質的に無料で修理ができる」とうたう事業者への注意喚起を行いました。
訪問販売で来る業者の見極め方そのものについては、外壁塗装に補助金は使える?|「実質無料」営業の見抜き方でも「実質無料」トークの構造を解説しています。
保険金が出ない部分は「適正価格の修理」で備える
保険が使えるのは災害由来の損害だけなので、経年劣化ぶんの工事費は自己負担になります。だからこそ工事の適正価格を自分で把握しておくことが、そのまま防御策になります。屋根まわりの費用相場は次のとおりです。
| 工法 | 費用相場(30坪目安) | 主な用途 |
|---|---|---|
| 屋根塗装 | 40〜60万円 | 塗膜の劣化・色あせ |
| カバー工法 | 120〜180万円 | 既存屋根の上に新しい屋根材を重ねる |
| 葺き替え | 120〜260万円 | 下地まで傷んでいる場合 |
相場を知らないまま「保険金でまかなえます」と言われると、その金額が高いのか安いのかを判断できません。保険会社に連絡したうえで、複数社から見積もりを取れば、金額の妥当性は自然に見えてきます。
見積もりを依頼する先は、訪問してきた業者ではなく、自分で選んだ複数社にしてください。以下は加盟店審査のある一括見積もりサービスで、利用は無料・その場で契約する必要はありません。
屋根・外壁の修理費用を複数社で比較する
ヌリカエは加盟店審査を実施しており、依頼後のしつこい営業を受けた場合の相談窓口もあります。見積もりを取るだけの利用でも問題ありません。
無料・比較だけの利用OK・合わなければ断って大丈夫です
外壁塗装をあわせて検討する場合は、塗装専門の窓口から相見積もりを取ると、工事範囲ごとの内訳を比較しやすくなります。
外壁塗装の相場を複数社の見積もりで確かめる
外壁塗装の窓口は、加盟店を審査したうえで最大3社を無料で紹介します。「一式」ではなく内訳が出た見積書どうしを比べれば、適正価格が判断できます。
サービスごとの違いは無料一括見積もりサービス比較ナビで整理しています。工事のタイミングそのものを見直したい場合は外壁塗装のベストなタイミングもあわせてご覧ください。
困ったときの相談窓口
| 窓口 | 電話番号 | 内容 |
|---|---|---|
| 保険金に関する災害便乗商法 相談ダイヤル(日本損害保険協会) | 0120-309-444 | 「申請サポート業者から勧誘を受けた」「契約を解除したい」など。平日9〜12時、13〜17時 |
| 消費者ホットライン(国民生活センター) | 188 | 最寄りの消費生活センターにつながる。契約トラブル全般 |
| そんぽADRセンター(日本損害保険協会) | 03-4332-5241 | 保険会社との間のトラブル。平日9時15分〜17時 |
訪問販売や電話勧誘で契約してしまった場合は、特定商取引法のクーリング・オフ(法定書面の受領日から8日間)が使える可能性があります。不安を感じた時点で、契約前でも上記の窓口に相談して構いません。
よくある質問
去年の台風の被害でも火災保険を請求できますか?
請求できる可能性があります。日本損害保険協会は保険金請求権について「保険法に基づき、3年を経過すると時効となります」と説明しており、被害から3年以内であれば請求は可能です。ただし時間の経過とともに災害との因果関係の立証が難しくなるため、早めに保険会社へ連絡してください。
経年劣化の外壁も火災保険で直せますか?
できません。日本損害保険協会は「自然の消耗もしくは劣化または性質によるさびなどによって生じた損害はお支払いの対象とはなりません」と明記しています。経年劣化を災害由来だと偽って請求すれば保険金詐欺にあたり、依頼した消費者自身が加担することになります。
「保険金の30%で申請を代行します」という業者は使うべきですか?
使う必要はありません。日本損害保険協会は「保険金の請求は、加入者ご自身で!!」としており、請求手続きは保険会社や代理店に連絡すれば無料で案内を受けられます。実際に、保険金100万円に対し30%=30万円の報酬を取られ、残る70万円では修理できなかったという相談事例が公表されています。
すでに修理を終えていても請求できますか?
3年の時効内であれば請求自体は可能ですが、被害状況を示す写真や修理前の見積書などの資料が残っているかが鍵になります。損害の程度を保険会社の鑑定人が確認できない場合、支払いの判断が難しくなります。まずは加入先の保険会社に、手元の資料を伝えて相談してください。
火災保険を使うと保険料は上がりますか?
火災保険には自動車保険のような等級制度がないため、保険金を受け取ったことを理由に次年度の保険料が上がる仕組みはありません(出典: ソニー損保)。自動車事故と違い、自然災害は契約者の過失で発生頻度が変わるものではないためです。ただし保険金額の全部が支払われた場合(全損)は契約が終了します。また保険料率が全契約者共通で改定されることはありますが、これは個別の請求の有無とは無関係です。
出典
- 日本損害保険協会「住宅の修理などに関するトラブルにご注意」(2026年6月22日更新)https://www.sonpo.or.jp/news/caution/syuri.html
- 日本損害保険協会「損害保険Q&A 問 保険金請求権の時効とは?」(保険法95条)https://soudanguide.sonpo.or.jp/basic/5_1_q3.html
- 日本損害保険協会「損害保険Q&A 問 免責と免責金額とは?」https://soudanguide.sonpo.or.jp/basic/5_1_q4.html
- 国民生活センター「保険金で住宅修理ができると勧誘する事業者に注意!」(2021年9月2日)https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20210902_2.html
- 消費者庁「「火災保険を使って実質的に無料で修理ができる」などとうたい、火災保険金を利用した修理工事契約を締結させる事業者に関する注意喚起」(2024年6月27日)https://www.caa.go.jp/notice/entry/038391/
- ソニー損保「火災保険を使うと次年度の保険料は高くなる?」https://www.sonysonpo.co.jp/fire/fp027.html
あわせて読みたい関連記事
この記事の執筆・編集方針について
本記事は省エネ住宅ナビ編集部が執筆・編集しています。補助金・制度に関する記述は、経済産業省・環境省・国土交通省および各自治体の公式サイト・公式資料を確認したうえで作成し、記事内に出典を明記しています。特定のメーカー・施工会社に属さない中立な立場で情報を整理しています。
制度の受付状況・要件・予算の消化状況は変動します。申請の最終判断は必ず各事業の公式サイトでご確認ください。記載内容の誤りにお気づきの場合は、お問い合わせフォームよりご連絡いただければ、確認のうえ速やかに訂正します。
