今の省エネ基準は「外皮の熱性能」と「一次エネルギー消費量」の2本立てで、気密性能(C値)はどちらにも含まれていません。
かつては基準の中にありました。平成11年基準(次世代省エネ基準)は相当隙間面積で寒冷地2.0、その他の地域5.0という数値を定めていましたが、平成25年基準で削除されています。
2025年4月にすべての新築住宅で省エネ基準への適合が義務化されましたが、そこでも気密は審査されません。よく聞く「C値0.5以下」は法律の基準ではなく、事業者側の自主目標です。
この記事の要点(2026年8月30日確認)
- 現行の住宅の省エネ基準は外皮基準(UA値・ηAC値)と一次エネルギー消費量基準の2つ。気密の項目はない
- 平成11年基準には相当隙間面積 寒冷地2.0cm²/m²・その他5.0cm²/m²という数値基準があった
- 削除の理由として国が挙げたのは「一定程度の気密性が確保される状況」と「多様な方法による気密確保が可能になったこと」
- 2025年4月からの適合義務化は建築確認の中で構造安全規制等と一体で審査されるが、気密測定の提出は求められない
- 測定方法そのものはJIS A 2201として規格が存在する。測るしくみはあるのに、基準が参照していないという状態
今の省エネ基準は何を見ているのか
建築物省エネ法にもとづく住宅の省エネ基準は、次の2つで構成されています。
- 外皮基準:外壁・屋根・窓などを通じて逃げる熱の量(外皮平均熱貫流率UA値)と、夏に入ってくる日射の量(冷房期の平均日射熱取得率ηAC値)
- 一次エネルギー消費量基準:暖冷房・換気・給湯・照明などの設備が1年に使うエネルギーを、基準となる住宅と比べた値
気密性能はこのどちらにも登場しません。UA値は「壁や窓という材料を熱がどれだけ通るか」の計算であって、隙間から空気が出入りすることによる熱の損失は計算に入っていないのです。ここが、気密が基準から抜け落ちていることの本質的な意味です。
かつては基準にあった|平成11年基準の2.0と5.0
1999年に告示された平成11年基準(次世代省エネルギー基準)には、気密住宅についての定量基準がありました。相当隙間面積、いわゆるC値です。
| 基準 | 年 | 気密の定量基準 |
|---|---|---|
| 昭和55年基準(旧省エネ基準) | 1980年 | なし |
| 平成11年基準(次世代省エネ基準) | 1999年 | 寒冷地2.0cm²/m²・その他5.0cm²/m² |
| 平成25年基準 | 2013年公布 | 削除 |
| 平成28年基準(現行) | 2016年 | なし |
| 適合義務化 | 2025年4月 | 審査対象外 |
図:相当隙間面積の基準値(平成11年基準)と現行の比較
単位は「床面積1平方メートルあたり、家全体の隙間が何平方センチメートルあるか」です。寒冷地の2.0でも、床面積120平方メートルの家なら合計240平方センチメートル、はがき約1.6枚分の穴が家じゅうに散らばっている計算になります。当時の基準は、今の高気密住宅の水準からするとかなりゆるいものでした。
なぜ削除されたのか|国が挙げた2つの理由
平成25年基準への改正で、この相当隙間面積の基準は姿を消しました。国の説明として示されているのは、おおむね次の2点です。
- 建設される住宅について、一定程度の気密性が確保される状況になってきたこと
- 住宅性能表示制度における特別評価方法認定の蓄積により、多様な方法による気密性の確保が可能であることが明らかになってきたこと
読み違えやすい点:「気密は重要ではないから外した」とは書かれていません。数値ひとつで縛らなくても実務で確保できるようになった、という趣旨の説明です。基準から外れたことは、性能として不要になったことを意味しません。この2つは別の話として切り分けてください。
2025年4月の適合義務化でも、気密は審査されない
2025年4月以降に着工するすべての新築住宅・非住宅に、省エネ基準への適合が義務づけられました。この適合性審査は、建築確認の中で構造安全規制などの審査と一体的に行われます(階数2以上または延べ面積200平方メートル超でない、建築士が設計する平屋200平方メートル以下の住宅は審査省略の対象です)。
図:建築確認で何が審査されるか
制度の全体像は2025年4月の省エネ基準適合義務化を整理した記事にまとめています。ここで押さえておきたいのは、義務化されたのは外皮と一次エネルギーであって、気密ではないという一点です。
基準にないのに気密が効く3つの理由
基準にないのなら気にしなくていいのか、というとそうではありません。理由は3つあります。
1. 計画換気が計画どおりに流れない
24時間換気は建築基準法で義務づけられており、給気口から入って排気ファンから出る、という道筋を前提に設計されています。ところが隙間が多い家では、空気は抵抗の小さいところ、つまり設計者が意図していない隙間から入ってきます。給気口の位置を工夫しても、狙った部屋に新鮮な空気が届きません。換気の設計と気密は、切り離せない関係にあります。
2. UA値には漏気の熱損失が入っていない
外皮基準で計算されるのは、壁・窓・屋根といった部位を熱が通り抜ける量です。隙間から暖気が逃げ、冷気が入り込むぶんは、この計算の外側にあります。同じUA値の家が2軒あっても、気密の差はカタログ上どこにも表れないまま、暖房費として毎月の請求書に出てくることになります。
3. 断熱材の実力が出し切れない
繊維系の断熱材は、その中に静止した空気を保つことで熱を止めます。壁の中を空気が動くと、この静止空気が乱され、断熱材のカタログ性能どおりの働きが得られなくなります。断熱と気密は、どちらか一方だけ強くしても効きにくい組み合わせです。
「C値0.5」は誰が決めた数字なのか
高気密をうたう住宅会社の資料でよく見る「C値0.5以下」は、法律や告示のどこにも書かれていません。事業者や業界団体が掲げる自主的な目標値です。ここを混同すると、「基準をクリアしています」という説明を、法基準の話だと受け取ってしまうことになります。
一方で、測定方法そのものはJIS A 2201(送風機による住宅等の気密性能試験方法)として規格化されています。測るしくみは存在するのに、省エネ基準がそれを参照していない、というのが現在の姿です。だからこそ、施主の側から契約前に確認する意味があります。
契約前に確認したい5項目
- 気密測定を実施するか。するなら全棟か、モデル棟のみか
- 測定の時期は中間(断熱工事後・内装前)か完成時か。中間なら手直しができる
- 測定結果に数値の保証があるか。目標値の提示だけなのか、下回った場合の対応が契約に書かれているか
- 試験はJIS A 2201にもとづくか。測定報告書を受け取れるか
- 費用は誰の負担か。測定は数万円程度で、建築費全体から見れば小さい
よくある質問
断熱等性能等級を上げれば気密も上がりますか
連動しません。断熱等性能等級は外皮平均熱貫流率UA値で判定される等級で、気密は評価項目に入っていないためです。等級6や7を取得した住宅でも、気密測定を行っていなければC値は不明のままです。等級の高さと気密の高さは、別々に確認する必要があります。
既存住宅の気密を後から上げられますか
部分的には可能ですが、新築時ほどの効果は望みにくいのが実情です。隙間は壁の中や床下、天井裏の配管・配線まわりに分散しており、仕上げを壊さずに全部を塞ぐことは難しいためです。現実的には、窓まわりの気密パッキン交換や内窓の設置、コンセントボックスの気密カバーなど、手の届く範囲から取り組むことになります。
気密測定を断られたら、その会社はやめるべきですか
断られたこと自体で判断するのは早計です。測定は義務ではないため、行っていない会社は数多くあります。確認したいのは理由のほうで、「測ったことがないので数値が分からない」のか、「自社の標準仕様では気密を主要な性能として扱っていない」のかで意味が変わります。前者は施工品質のばらつきが読めない状態、後者は設計思想の違いです。
出典
- 国土交通省「全ての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合が義務付けられます」(2025年4月からの適合義務化・建築確認における一体的審査/2026年8月30日確認)
- 国土交通省 住宅局「建築物省エネ法のページ」「令和4年度改正建築物省エネ法の概要」(住宅の外皮基準と一次エネルギー消費量基準/2026年8月30日確認)
- 平成11年基準(次世代省エネルギー基準)における相当隙間面積の基準値、および平成25年基準改正時の気密基準除外の説明(2026年8月30日確認)
- JIS A 2201 送風機による住宅等の気密性能試験方法
