新電力が撤退したら家庭の電気はどうなるか【2026年】最終保障供給は高圧だけ・受け皿は従量電灯で30A月300kWhなら月11,063円

住宅の分電盤のブレーカー。新電力が撤退しても送配電網は変わらず電気は止まらないことを示すアイキャッチ

新電力が撤退しても家庭の電気はすぐ止まりません。最終保障供給は高圧以上だけの制度で、家庭(低圧)の受け皿は大手電力の従量電灯です。東京電力30A・月300kWhなら月11,063円(2026年9月17日時点の公式単価)。

情報基準日: 2026-09-17

結論① 家庭(低圧)は「最終保障供給」の対象外。東京電力パワーグリッドも関西電力送配電も、約款の対象を高圧以上に限定している。
結論② 受け皿になるのは大手電力の従量電灯(経過措置料金)。2019年7月に全国全地域で継続が決まり、2026年9月時点も残っている。
結論③ 受け皿は「止まらない」だけで「安い」わけではない。関東では自由料金との差が年1,054〜4,509円あり、放置すると取り戻せない。

この記事の前提

  • 対象は一般家庭の低圧契約(従量電灯・自由料金プランのどちらも)。高圧以上の事業所は制度が別なので後半で分けて書きます。
  • 料金は東京電力エナジーパートナーの公式単価(2026-09-17取得)。燃料費調整額・再生可能エネルギー発電促進賦課金・国の支援は月ごとに変わるため、表からは除いています。
  • 撤退・休止の件数は資源エネルギー庁「登録小売電気事業者一覧」(令和8年9月14日現在)を当サイトで集計した値です。
  • この記事に広告リンクはありません。乗り換え先の紹介は各社の公式サイトへのリンクのみです。
目次

新電力が撤退・倒産すると家庭の電気はどうなるか

先に手続きの順番を押さえます。電気の「小売」と「送配電」は別の会社が担っていて、撤退するのは小売の側だけです。電線とメーターを持つ一般送配電事業者は撤退しないので、契約先が消えても物理的な供給網はそのまま残ります。だから撤退の連絡が来た日に停電するわけではありません。

資源エネルギー庁は「電力小売全面自由化 よくある質問」で、この場面の流れを次のように説明しています。撤退・倒産する場合は電力会社から「無契約状態になる期日」の通知が届き、原則その期日までに新しい小売電気事業者と契約すれば供給は続きます。期日に間に合わなくても直ちに止まるわけではないものの、無契約状態が長期間続くと供給が止まることもあり得るため、早めに切替先を探す必要がある——という整理です。

つまり読者がやることは2つだけです。①通知に書かれた期日を確認する ②その期日までに次の契約を決める。逆に「何もしないと即停電」という説明も、「自動で別の会社に引き継がれるから放っておける」という説明も、どちらも正確ではありません。

撤退の通知が届いてからの流れ 1. 撤退の通知 無契約になる期日 2. 検針票を用意 供給地点特定番号22桁 3. 期日までに申込 最短4日で切替完了 供給は継続 停電なし・解約連絡も不要 申込が期日に間に合わなかった場合 直ちには止まらないが、無契約が長引くと停止もあり得る 出典: 資源エネルギー庁 「よくある質問」 取得日 2026-09-17

エリアや設備から選び直すところまでまとめて知りたい場合は、電力会社の選び方 2026を先に読むと全体像がつかめます。

「最終保障供給」は家庭には使えない制度

撤退の話題で必ず出てくるのが最終保障供給です。どの小売電気事業者とも契約が成立しないときに、一般送配電事業者が代わりに電気を供給する仕組みで、料金は大手電力の標準的なメニューの1.2倍に設定されています。ただしこの制度は高圧以上の需要家向けで、一般家庭の低圧は対象に入っていません。ここを取り違えると「家庭でも1.2倍で受けられる」という誤解につながります。

根拠は各社の約款そのものです。東京電力パワーグリッドは最終保障供給を「小売電気事業者のいずれとも電気の需給契約についての交渉が成立しない高圧以上のお客さまに対して」供給することと定義しています。関西電力送配電も約款の一覧で名称自体を「最終保障供給(高圧LR)」としており、低圧の枠がありません。契約期間はいずれも1年以内で、期間満了までに契約先が決まらなければ更新できる建て付けです。

区分 最終保障供給 実際の受け皿 料金の考え方
低圧(一般家庭・小規模店舗) 対象外 大手電力の従量電灯(特定小売供給約款=経過措置料金) 認可された規制料金。割増はない
高圧・特別高圧(ビル・工場など) 対象(東京電力PG・関西電力送配電とも高圧以上) 一般送配電事業者の電気最終保障供給約款 標準メニュー水準の1.2倍。契約期間は1年以内

出典: 東京電力パワーグリッド「最終保障供給契約について」、関西電力送配電「各種約款・要綱・料金等」(いずれも取得日 2026-09-17)

家庭にとってはむしろ好都合な話です。高圧の受け皿が1.2倍の割増であるのに対し、低圧の受け皿は経済産業大臣の認可を受けた規制料金なので、割増が乗りません。撤退に巻き込まれた家庭が「高い緊急料金」を強いられる構造にはなっていない、というのがこの制度の実態です。

家庭の受け皿は大手電力の従量電灯(経過措置料金)

低圧の規制料金は、本来なら2020年3月末で廃止される予定でした。しかし2019年7月に、全国すべての供給区域で低圧の経過措置料金を継続させることが決まり、2026年9月時点も各エリアの大手電力(みなし小売電気事業者)が従量電灯A・B・Cを提供し続けています。この約款には供給の申込みに応じる前提があるため、どの新電力にも断られた家庭でも申し込む先が残ります。

では、その受け皿はいくらかかるのか。東京電力エナジーパートナーの従量電灯Bの公式単価(基本料金10Aにつき311円75銭、電力量料金は第1段階29円80銭・第2段階36円40銭・第3段階40円49銭)で、世帯別に月額と年額を計算しました。燃料費調整額・再エネ賦課金・国の支援は月ごとに動くため除いています。

世帯の目安契約容量月の使用量基本料金電力量料金月額年額
一人暮らし20A200kWh623.50円6,488.00円7,111.50円85,338円
2人暮らし30A300kWh935.25円10,128.00円11,063.25円132,759円
4人家族(戸建て)40A450kWh1,247.00円16,201.50円17,448.50円209,382円
電気使用量の多い世帯50A500kWh1,558.75円18,226.00円19,784.75円237,417円
東京電力エナジーパートナー「料金単価表‐電灯」(取得日 2026-09-17)の従量電灯Bの単価から当サイトが計算。燃料費調整額・再生可能エネルギー発電促進賦課金・国の支援は含みません。
受け皿(東京電力 従量電灯B)の年額 燃料費調整額・再エネ賦課金を除く/取得日 2026-09-17 20A 200kWh 85,338円 30A 300kWh 132,759円 40A 450kWh 209,382円 50A 500kWh 237,417円 0 25万円

契約先が休止・撤退しそうかを公式一覧で確かめる

「この会社は危ないのか」を判定する材料は、比較サイトのランキングではなく国の登録簿にあります。資源エネルギー庁が公開している「登録小売電気事業者一覧」には登録番号・名称・登録年月日に加えて「休止予定期間」の開始と終了の欄があり、小売事業を止めている(止める予定の)事業者はここに日付が入ります。自分の契約先の名前を探すだけで、登録が生きているか休止中かが分かります。

この一覧(令和8年9月14日現在・全820事業者)を当サイトで集計した結果が下の表です。休止予定期間の記載があるのは35社で全体の4.3%。うち2026年9月17日時点で期間内に入っているのは10社でした。

項目件数割合
登録小売電気事業者(全体)820社100%
休止予定期間の記載あり35社4.3%
 うち2026年9月17日時点で期間内(休止中)10社1.2%
 うち記載の期間が既に終了25社3.0%
資源エネルギー庁「登録小売電気事業者一覧」(令和8年9月14日現在・取得日 2026-09-17)を当サイトで集計。

休止の開始年でも並べてみました。2021年1社、2022年9社、2023年7社、2024年15社、2025年2社、2026年1社。2022年から2024年に集中していて、2025年以降は年1〜2社に落ち着いています。あわせて新規登録の年次推移を見ると、2016年の205社がピークで、2023年は17社まで落ち込み、2025年61社・2026年33社(9月14日まで)と戻してきています。撤退ラッシュは2022〜2024年の現象で、2026年は新規参入のほうが多い局面という読み方ができます。

ただし注意点が2つあります。ひとつは、この一覧は「登録」の状態を示すもので、経営が健全かどうかを示す指標ではないこと。もうひとつは、期間が終了した記載が残っている行もあるため(2022年に終了した日付のまま載っている例があります)、日付は必ず今日の日付と見比べる必要があることです。

契約先の登録状態を確かめる4ステップ

  1. 検針票または会員ページで、契約している小売電気事業者の正式名称を確認する(ブランド名と法人名が違うことがあります)。
  2. 資源エネルギー庁「登録小売電気事業者一覧」をブラウザで開き、ページ内検索でその名称を探す。
  3. 行の右端にある「休止予定期間」の開始・終了を見る。空欄なら登録は通常の状態。
  4. 日付が入っていて、かつ今日がその期間内なら休止中。切替先を探す作業に入る。

名称が見つからない場合は、親会社が登録事業者で自社は取次・媒介という形態のこともあります。その場合は契約書面の「小売電気事業者」の記載を確認してください。

受け皿に留まったままだと年いくら損をするか

撤退に巻き込まれた家庭がやりがちなのが、大手電力の従量電灯へ移してそのまま放置することです。停電は避けられますが、規制料金は自由料金と比べて安いとは限りません。当サイトが関東エリアの公式単価で計算した結果では、東京ガスの基本プランは東京電力の従量電灯Bより年1,054〜4,509円安いという差が出ています(使用量と契約容量によって幅があります)。受け皿に留まる期間が長いほど、この差額は取り戻せません。

一方で、撤退の直後に「とにかく安いところ」へ飛び込むのも勧めません。2022年から2024年に休止が集中した背景には卸電力市場価格の高騰があり、市場連動型のプランを持つ事業者ほど影響を受けやすい構造がありました。急いで選ぶ場面でこそ、燃料費調整額の上限があるか、市場連動かどうかを確認する価値があります。

急いで決めるときに見落としやすい3点

  • 燃料費調整額の上限:規制料金には上限がありますが、自由料金では上限を設けていないプランが多く、燃料価格が上がると単価差が逆転することがあります。
  • 市場連動型かどうか:基本料金0円をうたうプランには市場連動型が含まれます。2021年1月には1kWhあたり251円まで跳ねた実績があります。
  • 解約金と契約期間:撤退を受けて短期間で移った先に解約金があると、翌年の見直しで動けなくなります。

今日やることチェックリスト

  •  通知書の「無契約状態になる期日」を確認し、カレンダーに入れる
  •  検針票を撮影して、供給地点特定番号(22桁)とお客様番号を控える
  •  現在の契約容量(アンペア)と直近12か月の使用量を書き出す
  •  資源エネルギー庁の登録一覧で、候補先の登録と休止予定期間を確認する
  •  候補を2社に絞り、燃料費調整額の上限と解約金の有無を公式サイトで読む
  •  期日の1週間前までに申し込む(切替は最短4日、余裕を持たせる)
  •  旧契約への解約連絡は不要。誤って自分で止めない

よくある質問

すぐ電気が止まるか止まりません。通知された期日までに次を決めれば継続します
家庭は最終保障供給を使えるか使えません。約款の対象は高圧以上です
どこへ申し込めばよいか大手電力の従量電灯が確実な受け皿。比較は後からでも可

新電力が撤退したら電気は止まりますか

すぐには止まりません。資源エネルギー庁は、撤退・倒産の際は事業者から無契約状態になる期日の通知が届き、原則その期日までに新しい小売電気事業者と契約すれば供給が続くと説明しています。期日を過ぎても直ちに停止するわけではありませんが、無契約が長期間続くと供給が止まることもあり得るため、早めの切替が必要です。

家庭でも最終保障供給を受けられますか

受けられません。東京電力パワーグリッドの電気最終保障供給約款は対象を高圧以上の需要家に限定しており、関西電力送配電も名称を「最終保障供給(高圧LR)」としています。低圧の一般家庭の受け皿は、大手電力が提供する従量電灯(特定小売供給約款=経過措置料金)です。

大手電力の従量電灯はいつまで申し込めますか

2026年9月時点で申し込めます。低圧の経過措置料金は2020年3月末で廃止される予定でしたが、2019年7月に全国すべての供給区域で継続することが決まり、現在も各エリアの大手電力が従量電灯A・B・Cを提供しています。廃止の時期は決まっていません。

撤退した会社への解約連絡は必要ですか

通常は不要です。切替の手続きは新しい契約先が一般送配電事業者を通じて行うため、利用者が旧契約先へ解約を申し出る必要はありません。自分で先に解約すると無契約の期間ができるおそれがあるので、申込の完了を待つほうが安全です。未払いがある場合の精算は別途案内されます。

切替にはどのくらい日数がかかりますか

スマートメーターが設置済みで検針票の供給地点特定番号(22桁)がそろっていれば、最短4日程度で切り替わります。ただし申込の混み具合や次回検針日との関係で1か月近くかかることもあるため、通知された期日の1週間以上前に申し込むのが安全です。

休止中の事業者かどうかを見分ける方法はありますか

資源エネルギー庁「登録小売電気事業者一覧」で名称を探し、右端の「休止予定期間」の開始・終了を確認します。空欄なら通常の登録状態です。2026年9月14日現在の全820社のうち、記載があるのは35社、今日が期間内に入っているのは10社でした。経営の健全性を示す指標ではない点には注意してください。

出典と取得日

  • 資源エネルギー庁「登録小売電気事業者一覧」令和8年9月14日現在(取得日 2026-09-17)
  • 資源エネルギー庁「電力小売全面自由化 よくある質問」(取得日 2026-09-17)
  • 東京電力パワーグリッド「最終保障供給契約について」(取得日 2026-09-17)
  • 関西電力送配電「各種約款・要綱・料金等」最終保障供給(高圧LR)(取得日 2026-09-17)
  • 東京電力エナジーパートナー「料金単価表‐電灯」従量電灯B(取得日 2026-09-17)
  • 経済産業省 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス基本政策小委員会 経過措置料金の規制解除に関する資料(取得日 2026-09-17)

本記事は公表されている単価と公式の一覧から当サイトが計算・集計したものです。特定の事業者が「最安」であるとか、乗り換えれば「必ず安くなる」といった断定は行いません。料金は燃料費調整額・再生可能エネルギー発電促進賦課金・国の支援の有無で毎月変わるため、契約前に必ず各社の公式サイトで最新の単価を確認してください。

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この記事を書いた人

省エネ住宅ナビ編集部です。国・自治体の公式情報をもとに、補助金・太陽光・蓄電池・エコキュート・リフォームの「いくらかかる?いくら戻る?」を中立の立場で整理しています。数値・期限は必ず一次情報で確認し、情報基準日を明示する編集方針です。

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