IHクッキングヒーターとガスコンロはどっちが安い?【2026年】国の熱効率基準と現行単価では月288〜465円IHが高い

日本の住宅のキッチンに並ぶビルトインガスこんろとIHクッキングヒーター

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同じ料理を同じだけ作るなら、IHクッキングヒーターの電気代はガスこんろのガス代を月288〜465円上回ります。
熱効率はIHが約90%、ガスこんろは省エネ法の目標基準値で48.4〜56.3%と2倍近い差がありますが、電気とガスの単価差がその差を打ち消します。
コンロだけをIHに替えてもガスの基本料金は残るため、電気代とガス代の合計はむしろ増えます。

この記事の要点

  • 4人世帯の標準的な使い方で、IHの電気代は月1,170円(パナソニック公式・日本電機工業会IH調理器技術委員会調べ)。同じ熱量をガスこんろで得ると月705〜882円で、IHが月288〜465円高い
  • ガスこんろの熱効率は省エネ法トップランナー基準で区分ごとに48.4〜56.3%と決まっている。一方IHは省エネ法の特定機器31品目に入っておらず、国が定めた熱効率の基準値も表示義務も存在しない
  • IHが有利になる電気単価は18.7〜26.3円/kWh。現行の目安単価31円/kWhはもちろん、オール電化の夜間単価27.86円でも届かない。
  • ガス代が減るのは限界単価146.05円/㎥の分だけ。平均単価181.2円/㎥で計算すると節約額を24%過大に見積もる。
  • みらいエコ住宅2026事業のビルトイン自動調理対応コンロ18,000円/戸は、ガスこんろでもIHでも同額。熱源では差がつかない。

結論|同じ熱量なら、IHの電気代はガス代を月288〜465円上回る

比較の出発点に、メーカーが公表している実測値を1つ置きます。パナソニックはIHクッキングヒーターの1か月の電気代を「標準的な4名家族世帯が朝・昼・夕食時に標準的なメニューで使用した場合、約1,170円(税込)」と公表しています。出所は日本電機工業会IH調理器技術委員会の調べで、単価は全国家庭電気製品公正取引協議会の電力料金目安単価31円/kWhです。

この金額を単価で割り戻すと、月間の消費電力量は1,170÷31=37.74kWhと分かります。同社が公表するIHの熱効率は約90%(日本電機工業会の自主基準に基づく測定方法・同社実測)なので、実際に鍋へ入っている熱量は37.74×0.90=33.97kWh、単位をそろえると122.3MJです。

あとは「同じ122.3MJを鍋に入れるのにガスこんろは何立方メートル必要か」を計算するだけです。都市ガス13Aの発熱量は45MJ/立方メートル(資源エネルギー庁が金額換算係数の注記で明示)なので、必要なガス量は122.3÷(熱効率×45)で出ます。熱効率には、後述する省エネ法トップランナー基準の区分別の目標基準値を当てはめました。

図1 ガスこんろの区分別に見た「IHと同じ熱量」のガス代(月あたり・4人世帯)
区分機器の種別・設置形態目標基準値
(熱効率)
必要ガス量
(立方m/月)
ガス代
(円/月)
IHとの差
(円/月)
逆転する
電気単価
Hガスレンジ48.4%5.61820+35021.7円
Bガスこんろ(組込形)48.5%5.60818+35221.7円
Gガスグリル付こんろ(キャビネット形・据置形)49.7%5.47799+37121.2円
Aガスこんろ(卓上形)51.0%5.33778+39220.6円
Dガスグリル付こんろ(卓上形・3口以上)52.4%5.19757+41320.1円
Eガスグリル付こんろ(組込形・2口以下)53.0%5.13749+42119.8円
Fガスグリル付こんろ(組込形・3口以上)55.6%4.89714+45618.9円
Cガスグリル付こんろ(卓上形・2口以下)56.3%4.83705+46518.7円
参考資源エネルギー庁の家庭向けページの表記45.0%6.04882+28823.4円
IHクッキングヒーター(37.74kWh・熱効率約90%)1,170基準31.0円

熱効率は省エネ法トップランナー基準(ガス調理機器・こんろ部)の区分別の目標基準値。ガス代は東京ガス「一般契約」料金表B(21〜80立方m)の2026年9月検針分の調整単位料金146.05円/立方m(税込・国の値引き18円/立方m適用後)で計算。IHの1,170円はパナソニック公表値。逆転する電気単価は、そのガス代を37.74kWhで割った値。2026年8月27日時点。

図2 IHとガスこんろの1か月の調理コスト
1か月の調理コスト(4人世帯・円)03006009001200IHクッキングヒーター1,170円ガス こんろ効率45%882円ガス 区分H 48.4%820円ガス 区分A 51.0%778円ガス 区分E 53.0%749円ガス 区分C 56.3%705円

同じ熱量(122.3MJ)を鍋に入れた場合の比較。電気31円/kWh、ガス146.05円/立方m。ガスこんろの熱効率は省エネ法の区分別目標基準値。

熱効率が2倍近く違うのに逆転しないのは、単価の差がそれ以上に大きいからです。1MJあたりに直すと、電気は31円÷3.6MJ=8.61円、都市ガスは146.05円÷45MJ=3.25円で、ガスは電気の37.7%の単価にすぎません。熱効率でIHが1.6〜1.9倍優位でも、単価で2.65倍不利なので追いつかないという構造です。

国が熱効率の基準値を定めているのは、ガスこんろだけ

ここが比較記事でほとんど触れられない点です。省エネ法(エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律)のトップランナー制度は、2014年11月時点で31品目を特定機器に指定しています。その中に「ガス調理機器」は入っていますが、IHクッキングヒーター(電磁誘導加熱式調理器)は入っていません

結果として、ガスこんろには「こんろ部エネルギー消費効率」をカタログと機器本体の見やすい箇所に表示する義務があり、国が定めた区分別の目標基準値も公表されています。測定方法もJIS S 2103という規格で固定されています。一方IHには、国の基準値も表示義務もありません。統一省エネラベルの対象機器にも含まれていないため、店頭の星印で比べることもできません。

つまり「熱効率90%」はメーカーの自主測定値、「48.4〜56.3%」は国が定めた基準値で、性格がまったく違う数字です。この2つを並べて「IHはガスの2倍効率が良い」と書く記事は多いのですが、測定基準がそろっていないことは明示されるべきです。

同じ資源エネルギー庁の中でも数字が割れている

省エネポータルサイトの家庭向けページには、湯沸かしの比較図として「ガスコンロ(熱効率45%)」「ガス給湯器(熱効率80%)」という表記があります。一方、同じ庁が所管する省エネ法のトップランナー基準では、こんろ部の目標基準値は区分により48.4〜56.3%です。最大で11.3ポイント、率にして25.1%の開きがあり、どちらを引くかで試算額が最大で月177円変わります。本記事は、より新しく、区分の定義が明確なトップランナー基準を主に使い、45%は参考値として併記しました。

なお、こんろ部の目標年度は2006年度以降で、資源エネルギー庁は目標年度時点で2000年度比約15.8%の効率改善が達成されたと公表しています。グリル部は2002年度比で約24.0%、オーブン部は約25.8%です。2000年前後の古いガスこんろを使っている場合は、上の表よりさらに熱効率が低い可能性があります。

メーカーの「熱効率90%」は、同じページの湯沸かし時間と合わない

IHの90%という数字は、割り戻しで検算できます。パナソニックは同じページで「3.2kWなら、たとえば1Lの水が約2分12秒で沸かせる」という実測値も公表しています。条件は水温20℃の水1Lを90℃にするまでの時間、直径21cm・定格4Lのステンレス多層鍋です。

水1kgを70K上げるのに必要な熱量は1.0×4.186×70=293.0kJ。投入した電力量は3.2kW×132秒=422.4kJ。割り算すると69.4%で、公表値の90%とは20.6ポイント離れます。

図3 IHの熱効率90%を湯沸かし時間から検算する
公表値90%と、湯沸かし時間から出る69.4%の関係投入した電力量3.2kW×132秒422.4kJ鍋底に入る熱量公表効率90%380.2kJ水の温度上昇分293.0kJ鍋自体と放熱87.1kJ実使用ベースの効率=293.0kJ÷422.4kJ=69.4%

パナソニックが公表する「3.2kWで水温20℃の水1Lを90℃にするまで約2分12秒(直径21cm・定格4Lステンレス多層鍋・同社実測)」から算出。水の比熱4.186kJ/(kg・K)。

差の87.1kJは、鍋そのものを温めた分と周囲へ逃げた分です。ステンレスの比熱0.50kJ/(kg・K)で割り戻すと2.5kg相当、アルミ層の比熱0.90kJ/(kg・K)なら1.4kg相当となり、底の厚い多層鍋の重さとしては妥当な範囲に収まります。90%という値は「鍋底までの効率」であって、鍋を温める分は含まれていないと読むのが正しい理解です。

ここで公平を期すと、ガス側のJIS S 2103も同じ性格の測定です。規定のなべに入れた水の温度上昇からガス消費熱量を割るため、なべ自体を温める熱は有効熱に数えられません。つまり実使用ではIHもガスも表示値より下がり、両者の比率はおおむね保たれます。本記事が図1の計算で90%と48.4〜56.3%を同じ土俵に置いているのは、この理由によります。

ガス代が減るのは「限界単価」の分だけ|基本料金は残る

もう1つ、試算を大きく狂わせるのが単価の取り方です。都市ガスの料金は基本料金と従量料金の2階建てで、使用量帯によって料金表が切り替わります。東京ガスの2026年9月検針分(東京地区等)は次のとおりです。

図4 東京ガス一般契約の料金(2026年9月検針分・東京地区等・税込)
項目料金表A
(0〜20立方m)
料金表B
(21〜80立方m)
基本料金(円/月)759.001,056.00
調整単位料金(円/立方m)160.90146.05
国の値引き適用前(円/立方m)178.90164.05
標準家庭30立方mの本体料金5,437円
30立方m使ったときの平均単価181.2円/立方m

調整単位料金は基準単位料金130.46円に単位料金調整額15.59円を加えた値。2026年9月検針分は国の「電気・ガス料金負担軽減支援事業」により18円/立方mが値引きされている(8月・10月検針分は14円/立方m)。2026年8月27日に東京ガスの公表資料で確認。

読み方の要点は3つあります。

1つ目。コンロだけをIHに替えても、給湯がガスのままなら基本料金1,056円は1円も減りません。月30立方mの家庭がコンロ分6.04立方mを止めても使用量は約24立方mで、料金表Bのままです。減るのは従量部分だけで、6.04×146.05=882円です。

2つ目。使うべきは平均単価ではなく限界単価です。標準家庭30立方mの平均単価は5,437÷30=181.2円/立方mですが、これで6.04立方mを掛けると1,094円となり、実際に減る882円を24%も過大に見積もることになります。基本料金が分子に混ざるためで、水道料金で起きるのと同じ誤りです。

3つ目。資源エネルギー庁の金額換算係数162円/立方mは、平成28年度実績が根拠です。出典は平成29年版ガス事業便覧で、供給約款料金の平均を45MJに換算した値。現行の平均単価181.2円/立方mより11.9%低く、国の値引きがなければ199.2円/立方mなので23.0%低いことになります。電気の31円/kWhは令和4年7月改定で現行に近いのに、ガスだけ10年前の水準に据え置かれているという非対称があります。同ポータルのガス関連の節約額は、実際より1〜2割少なく出ると考えてください。

なお、月20立方m以下の家庭は料金表Aに入り、限界単価が160.90円/立方mと料金表Bより14.85円(10.2%)高くなります。使用量が少ない家庭ほど、1立方m減らしたときの節約額は大きいという逆転が起きます。逆に言えば、コンロをIHにしたときのガス代の減り幅も、いま料金表Aの家庭のほうが大きくなります。

では基本料金が消えるのはいつかというと、ガスを完全に解約したときだけです。東京ガスの料金表Bなら基本料金1,056円/月=年12,672円が丸ごと消えます。ただしそれは給湯・浴室暖房・床暖房まで電気へ置き換える判断とセットで、コンロ単体の話ではありません。オール電化にするかどうかは、給湯機器の入れ替え費用と、昼夜で単価が分かれる電気料金プランの設計まで含めて考える必要があります。

CO2と一次エネルギーでも、いまの係数ではガスのほうが少ない

光熱費だけでなく環境負荷でも比べておきます。資源エネルギー庁が省エネ効果の算出に使っている係数は、電気が0.488kgCO2/kWh・原油換算0.252L/kWh、都市ガスが2.244kgCO2/立方m・原油換算1.16L/立方mです。前者の出典は電気事業者別排出係数の代替値、後者は地球温暖化対策推進法施行令とガス事業便覧です。

図5 CO2排出量と原油換算量の比較(同じ122.3MJを鍋に入れた場合・年あたり)
熱源年間の使用量CO2排出量
(kg/年)
原油換算
(L/年)
IHを1とした比
IHクッキングヒーター(効率90%)電気 452.9kWh221.0114.11.00
ガスこんろ(効率45%・参考値)都市ガス 72.5立方m162.684.10.74
ガスこんろ(効率56.3%・区分C)都市ガス 57.9立方m130.067.20.59

係数は資源エネルギー庁 省エネポータルサイトの算出根拠より。CO2比と原油換算比が3桁目まで一致するのは、両係数の内部比(電気1.937・ガス1.935)がほぼ等しいためで、計算の検算にもなっている。

IHのCO2排出量はガスこんろの1.36〜1.70倍です。ただしこれは電気の排出係数を代替値0.488kgCO2/kWhで置いた場合の話で、資源エネルギー庁自身が「電気については供給事業者によって大きく異なる」と注記しています。逆算すると、契約している電力会社の排出係数が0.287〜0.359kgCO2/kWhを下回れば、CO2ではIHが有利になります。太陽光発電を載せて日中の調理を自家消費でまかなえる家では、その分の係数は実質ゼロに近づきます。

交換工事の前に確認する4つのこと

金額の話より先に、そもそも設置できるかを確かめる必要があります。パナソニックの公式ページに書かれている条件を整理しました。

図6 ガスこんろからIHへ替える前のチェックリスト
1

200Vの引き込みがあるか

分電盤のメインブレーカーに線が3本来ていれば単相3線式で200Vが引き込まれています。200V機器に必要な単相3線式の普及率は、戸建住宅で全国平均が約60%、関西圏が約80%。引き込み線が2本の場合、軒先までは電力会社の負担で工事されますが、屋内配線は電気工事会社への依頼となり依頼者の負担です。

2

集合住宅なら管理組合に確認したか

マンションなどでは建物全体の電気容量の関係で200V工事が行えない場合があります。着工の合意より前に管理組合・管理会社へ確認してください。

3

ガスの閉栓をガス事業者に依頼したか

ガス配管・ガスメーター・ガス栓といったガス工作物を、ガス事業者に連絡せず無断で撤去することは法令により規制されています。閉栓はガス事業者に依頼します。

4

組み合わせるオーブンの種類

IHクッキングヒーターとガスオーブンの組み合わせは、燃焼ガスの排熱の関係でできません。ビルトイン電気オーブンレンジとの組み合わせのみになります。

出典:パナソニック「設置・お取替えについて」(2026年8月27日閲覧)。

ここで見落とされがちなのが1番です。戸建住宅の約4割は単相3線式ではないことになるため、本体価格の比較だけで判断すると、あとから屋内配線工事の費用が乗ります。見積もりを取るときは「200V専用回路の新設が必要かどうか」を最初に確認してもらってください。工事費の内訳が分かれていない見積書は、この費用が入っているのかどうかも読み取れません。

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コンロの交換は、本体価格より「200V専用回路の新設が要るか」「既存キャビネットの高さが合うか」で総額が変わります。複数社の見積もりを並べると、工事費の内訳が分かれている会社とそうでない会社の差がはっきりします。

補助金は熱源で差がつかない|みらいエコ住宅2026事業の18,000円

2026年の国の住宅省エネ支援策のうち、コンロの交換に補助が出るのは「みらいエコ住宅2026事業」のリフォーム区分にあるビルトイン自動調理対応コンロ 18,000円/戸です。ここで重要なのは、対象製品の基準が「JIS S 2103:2019に規定するガスこんろまたは電気用品安全法に規定する電磁誘導加熱式調理器」と書かれていること。ガスこんろでもIHでも補助額は同じ18,000円で、熱源の違いで有利不利は生じません。

ただし条件は細かく、次の3つをすべて満たす必要があります。

  • 組込型であること(据置型のガステーブルや卓上IHは対象外)
  • こんろ部に、設定した温度へ自動で調節する自動温度調節機能があること
  • こんろ部またはグリル部に、調理開始から終了まで手動操作なしで調理する自動調理機能があること。なお炊飯機能を必須とする

3つ目の但し書きが実務上いちばんの落とし穴です。自動調理メニューを持っていても炊飯機能がなければ対象になりません。カタログの機能一覧で炊飯メニューの有無を確認するか、事務局の対象製品検索で型番を照合してください。

コンロ単体では補助が出ない構造に注意

みらいエコ住宅2026事業は、外皮に面する開口部を持つ1つの居室(トリガールーム)で定められた組み合わせの断熱工事を行うことが前提です。コンロの交換だけを申請することはできません。ただし公式が示す居室の例には台所(キッチン)が含まれているため、キッチンの窓を断熱改修してトリガールームにする段取りは成立します。玄関ホールや浴室のように居室から除外されている部位とは扱いが異なります。
あわせて、キッチンセットの交換を伴う対面化改修(106,800円/戸)で補助を受ける場合は、ビルトイン自動調理対応コンロと掃除しやすいレンジフードは補助の対象になりません。二重取りはできない設計です。

手続き面では、コンロの性能を証明する書類が「納品書の写し」で足りる点も押さえておくとよいでしょう。宅配ボックスや窓のように建材メーカーの性能証明書を求められないため、施工業者側の負担が小さい項目です。工事写真は着工前と完了後の各1枚が必須で、着工前の写真を撮り忘れると補助金を受け取れません。交付申請の受付は遅くとも2026年12月31日まで(予算上限に達した場合はその時点まで)です。

火災統計は「IHのほうが安全」の根拠にはならない

安全性を理由にIHを勧める記事は多いのですが、根拠として引かれる火災統計は慎重に読む必要があります。令和6年版消防白書によると、令和5年中の出火件数3万8,672件のうち、こんろによる火災は2,838件で全火災の7.3%。出火原因としてはたばこ(3,498件)、たき火(3,473件)に次ぐ3位です。

図7 こんろ火災の内訳(令和6年版 消防白書・令和5年中)
こんろによる火災2,838件の内訳(令和5年中)こんろの種類別ガスこんろ 2,396件(84.4%)その他442件主な経過別放置する・忘れる 1,169件全体2,838件消防白書はこんろの種類別を公表しているが、普及台数を公表していないため1台あたりの発生率は計算できない

出典:総務省消防庁「令和6年版 消防白書」第1章第1節。全火災3万8,672件、こんろ2,838件(7.3%)。

消防白書はこんろの種類別も公表していて、ガスこんろによる火災が2,396件と最も多くなっています。こんろ火災全体に占める割合は84.4%、残りの442件(15.6%)が電気こんろなどです。

ただしこの数字から「IHのほうが火災を起こしにくい」と結論するのは飛躍です。白書は世帯あたりの普及台数を公表していないため、1台あたりの発生率が計算できません。ガスこんろのほうが設置台数が多ければ、件数が多くなるのは当然です。数字として言えるのは、種類別の件数の内訳までです。

むしろ実務的に効くのは経過別の内訳です。こんろ火災2,838件のうち「放置する、忘れる」が1,169件(41.2%)で最も多く、火災の4割は使い方に起因しています。切り忘れ自動オフ、鍋なし自動オフ、こげつき検知といった安全機能は、この4割に直接効く機能です。近年のガスこんろは全口に立ち消え安全装置と調理油過熱防止装置を備えており、機能の有無は熱源よりも機種の世代で決まります。買い替えを検討するなら、熱源を変えるかどうかより、いま使っている機種にこれらの機能が付いているかを先に確認するほうが実利があります。

それでも電気を選ぶ理由があるとしたら

ここまでの計算では、ランニングコストでもCO2でもガスが有利でした。それでもIHを選ぶ理由になり得るのは、金額に換算しにくい次の3点です。

  • 輻射熱が少ない。鍋自体が発熱するため周囲へ逃げる熱が少なく、夏場のキッチンの暑さと冷房負荷が下がります。図3で見たとおり、その分の熱は約87kJ/L分だけ鍋と周囲に配分されており、ガスこんろでは燃焼ガスが加わるためさらに大きくなります。
  • 太陽光発電がある家では単価の前提が変わる。日中の調理を自家消費でまかなえれば、比較すべき電気単価は買電の31円ではなく、売電に回した場合に得られたはずの金額になります。2026年度認定の10kW未満は1〜4年目24円、5〜10年目8.3円なので、5年目以降は逆転する電気単価18.7〜26.3円を下回ります。
  • ガスを完全にやめる計画の一部である場合。基本料金1,056円/月が消えるのは解約時だけなので、給湯の置き換えと同時に判断するときだけ、コンロの電気化が全体として黒字になり得ます。

逆に、この3つのいずれにも当てはまらないのであれば、光熱費を理由にコンロだけをIHへ替えるのは合理的ではありません。安全機能の有無、掃除のしやすさ、停電時に使えるかどうか(IHは停電すると使えず、ガスこんろは乾電池式の点火なら使えます)といった、金額以外の基準で選ぶほうが納得のいく判断になります。

よくある質問

オール電化の夜間料金ならIHのほうが安くなりますか

本記事の前提では逆転しません。IHが有利になる電気単価は18.7〜26.3円/kWhですが、東京電力エナジーパートナーのスマートライフSとLの夜間単価は27.86円/kWh(2026年8月27日閲覧)で、最も甘い条件の26.3円にも1.56円届きません。昼間の35.76円ならさらに差が開きます。ただし夜間単価は電力会社とプランで幅があるため、契約中のプランの単価を上の範囲と照らし合わせて判断してください。

プロパンガス(LPガス)の家ではどう変わりますか

本記事の計算は都市ガス13A(45MJ/立方m)が前提です。LPガスは1立方mあたりの発熱量が都市ガスの約2.2倍ある一方、単価は自由料金で地域差・事業者差が大きく、公的に確認できる全国一律の単価がありません。資源エネルギー庁の金額換算係数にもLPガスの項目はないため、本記事では計算していません。LPガスの家では、検針票の「使用量(立方m)」と「請求額」から自分の家の単価を割り出し、上の逆転単価の考え方を当てはめてください。

ガスこんろの熱効率は、どこで確認できますか

省エネ法により、性能表示のあるカタログと機器本体の見やすい箇所に「こんろ部エネルギー消費効率」を表示することが義務づけられています。区分名(AからH)も同時に表示されるため、図1の表と照らし合わせれば、その機種が目標基準値を上回っているかどうかを自分で確認できます。なおIHクッキングヒーターにはこの表示義務がありません。

出典

  • 資源エネルギー庁「省エネポータルサイト|無理のない省エネ節約」金額換算係数・原油換算係数・CO2排出係数、およびキッチンの項(2026年8月27日閲覧)
  • 資源エネルギー庁「トップランナー制度|13 ガス調理機器」対象範囲・エネルギー消費効率・区分別の目標基準値・表示事項・省エネ効果(2026年8月27日閲覧)
  • 省エネルギーセンター「トップランナー基準」特定機器31品目の一覧(2026年8月27日閲覧)
  • パナソニック「IHクッキングヒーターとは」熱効率約90%・湯沸かし時間・1か月の電気代約1,170円(2026年8月27日閲覧)
  • パナソニック「設置・お取替えについて」200Vコンセント・単相3線式の普及率・集合住宅とガス閉栓の注意(2026年8月27日閲覧)
  • 東京ガス「原料費調整制度に基づく2026年9月検針分のガス料金について(東京地区等)」料金表A・B、基準単位料金、標準家庭の料金(2026年7月30日公表・2026年8月27日閲覧)
  • みらいエコ住宅2026事業「対象要件の詳細【リフォーム】」および「子育て対応改修」ビルトイン自動調理対応コンロの基準と補助額(2026年8月27日閲覧)
  • 総務省消防庁「令和6年版 消防白書」第1章第1節 4.出火原因(2026年8月27日閲覧)

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この記事を書いた人

省エネ住宅ナビ編集部です。国・自治体の公式情報をもとに、補助金・太陽光・蓄電池・エコキュート・リフォームの「いくらかかる?いくら戻る?」を中立の立場で整理しています。数値・期限は必ず一次情報で確認し、情報基準日を明示する編集方針です。

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