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2025年4月1日に施行され、以降に着工する新築の住宅・非住宅は、原則すべてが省エネ基準への適合を義務づけられました。
住宅が満たすべきなのは「外皮性能基準(UA値・ηAC値)」と「一次エネルギー消費量基準(BEI 1.0以下)」の2本立てで、計算をせずに断熱材の厚みと窓の性能を照合する「仕様基準」ルートも用意されています。
ただし義務化前の令和6年度時点で小規模住宅の94.3%はすでに基準に適合していました。これから家を建てる人にとっての実質的な分岐点は、義務基準ではなく適合率60.1%のZEH水準です。
この記事の要点
- 2025年4月1日施行。改正前は中・大規模の非住宅だけが適合義務だったが、原則すべての新築住宅・非住宅に拡大され、あわせて省エネ性能の届出義務(第19条)は廃止された。
- 増改築は増改築を行う部分のみが基準適合の対象。既存住宅の断熱リフォーム自体に義務は課されない。
- 住宅の義務基準は外皮性能(UA値・ηAC値)+一次エネルギー消費量(BEI 1.0以下)。UA値は8つの地域区分ごとに0.46〜0.87で設定。
- 省エネ計算をしない仕様基準(平成28年国土交通省告示第266号)なら、断熱材の熱抵抗値と窓の熱貫流率を表と照合するだけで確認できる。
- 令和6年度の住宅の省エネ基準適合率は92.3%(小規模94.3%)。一方でZEH水準は60.1%にとどまる。
- 2026年3月27日には、法律名を「建築物のエネルギー消費性能の向上及び脱炭素化の促進に関する法律」へ改める改正法案が閣議決定された。
出典の一次情報を確認した日:2026年8月17日
省エネ基準適合義務化とは|2025年4月から「すべての新築」が対象になった
省エネ基準適合義務化とは、建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律)にもとづき、新築する建物が国の定める省エネルギー基準を満たすことを法律上の義務とする制度です。令和4年6月17日に公布された改正法により対象が拡大され、2025年(令和7年)4月1日に施行されました。以降に着工する新築の住宅・非住宅は、規模や用途にかかわらず原則すべてが対象になります。
改正前は、適合義務が課されていたのは延べ面積2,000平方メートル以上の非住宅など一部にとどまり、住宅の多くは「届出」や「建築士から施主への説明」といった緩やかな枠組みの中にありました。今回の改正で適合義務が全体に広がったことに伴い、省エネ性能の届出義務(建築物省エネ法第19条)は廃止されています。
| 区分 | 2025年3月まで | 2025年4月以降 |
|---|---|---|
| 新築の住宅 | 規模により届出等(適合義務なし) | すべて適合義務 |
| 新築の非住宅 | 中・大規模のみ適合義務 | すべて適合義務 |
| 増築・改築 | 規模により届出等 | 増改築を行う部分のみ適合義務 |
| 省エネ性能の届出(第19条) | あり | 廃止 |
| 既存住宅のリフォーム | 義務なし | 義務なし(増改築に該当する場合を除く) |
大切なのは、義務がかかるのは新築と増改築部分だけだという点です。いま住んでいる家に内窓を付けたり天井に断熱材を足したりする一般的なリフォームは、増改築に当たらない限りこの義務の対象外です。「2025年から断熱改修が義務になった」という説明は正しくありません。
住宅が満たすべき基準の中身|外皮性能(UA値・ηAC値)と一次エネルギー(BEI)
住宅の場合、満たすべき基準は外皮性能基準と一次エネルギー消費量基準の2つです。どちらか片方ではなく、両方に適合する必要があります(非住宅は一次エネルギー消費量基準のみ)。
外皮性能基準:UA値とηAC値
UA値(外皮平均熱貫流率)は、室内と外気のあいだで熱がどれだけ出入りしやすいかを表す指標で、外皮の総熱損失量を外皮の総面積で割って求めます。値が小さいほど熱が逃げにくく、断熱性能が高いことを意味します。ηAC値(冷房期の平均日射熱取得率)は日射の入りやすさを表し、こちらも値が小さいほど日射を遮る性能が高くなります。基準値は全国を8つに分けた地域区分ごとに、原則として市町村単位で定められています。
| 地域区分 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| UA値の基準値 W/(m2・K) | 0.46 | 0.46 | 0.56 | 0.75 | 0.87 | 0.87 | 0.87 | — |
| ηAC値の基準値 | — | — | — | — | 3.0 | 2.8 | 2.7 | 6.7 |
一次エネルギー消費量基準:BEIが1.0以下であること
BEI(Building Energy Index)は、実際に建てる住宅の設計一次エネルギー消費量を、地域や用途などから定まる基準一次エネルギー消費量で割った値です。義務基準ではBEIが1.0以下であることが求められます。算定の対象になるのは暖冷房・換気・照明・給湯の設備で、家電などの「その他一次エネルギー消費量」は除かれます。太陽光発電などでつくったエネルギーは、自家消費分に限り差し引くことができます。
注意したいのは、住宅の基準一次エネルギー消費量が2012年時点の一般的な設備機器の省エネ性能をもとに策定されていることです。つまりBEI 1.0は「2012年並みの設備」を意味し、いまカタログに並ぶ標準的な機器を選べば自然に下回ります。義務基準がそれほど高いハードルではない理由がここにあります。より高い水準を目指すZEH水準(誘導基準)ではBEI 0.8以下が求められ、外皮側の基準値も別途厳しく設定されています。等級ごとの数値の違いは断熱等級4・5・6・7の違い一覧で整理しています。
計算しないルートもある|「仕様基準」で断熱材の厚みと窓を照合する
UA値やBEIの計算は専門的なソフトを使う作業ですが、住宅にはもうひとつ仕様基準という確認ルートが用意されています(平成28年国土交通省告示第266号)。これは「屋根にはこの熱抵抗値以上の断熱材」「窓はこの熱貫流率以下」というように、あらかじめ決められた仕様の表と照合するだけで基準適合を確認できる方法です。省エネ計算をしないため、小規模な住宅ほど採用されやすい実務上の主役になっています。
仕様基準では、外皮側は「躯体の断熱性能」と「開口部の断熱性能・日射遮蔽性能」、設備側は暖房・冷房・給湯・換気・照明の5つについて仕様が定められています。ただし計算ルートに比べて選べる設備の選択肢は限られます。
| 地域区分 | 窓の熱貫流率の基準値 | 参考仕様(国土交通省が例示) |
|---|---|---|
| 1〜2地域 | 2.3 W/(m2・K) 以下 | 樹脂サッシ+Low-E複層ガラス(A12) |
| 3地域 | 3.5 W/(m2・K) 以下 | アルミサッシ+Low-E複層ガラス(A9) |
| 4〜7地域 | 4.7 W/(m2・K) 以下 | アルミサッシ+複層ガラス(A6) |
| 8地域 | 熱貫流率の基準なし | 日射遮蔽対策の基準のみ適用 |
ここは押さえておきたいポイントです。東京・大阪を含む4〜7地域の義務基準はアルミサッシ+複層ガラス(A6)相当で足ります。「義務化されたのだから樹脂サッシが標準になったはず」と考える人は少なくありませんが、義務基準の水準はそこまで高くありません。窓の性能で暮らしを変えたいなら、義務基準ではなく誘導基準(ZEH水準)以上を指定する必要があります。
| 部位 | 1〜2地域 | 3地域 | 4〜7地域 |
|---|---|---|---|
| 屋根 | 6.6(251mm) | 4.6(175mm) | 4.6(175mm) |
| 天井 | 5.7(217mm) | 4.0(152mm) | 4.0(152mm) |
| 壁 | 3.3/3.6(126/137mm) | 2.2/2.3(84/88mm) | 2.2/2.3(84/88mm) |
| 床(外気に接する部分) | 5.2/4.2(198/160mm) | 5.2/4.2(198/160mm) | 3.3/3.1(126/118mm) |
| 床(その他の部分) | 3.3/3.1(126/118mm) | 3.3/3.1(126/118mm) | 2.2/2.0(84/76mm) |
手続きはどう変わったか|省エネ適判が要るケース・要らないケース
適合義務の対象が全建築物に広がると、審査の件数も一気に増えます。国土交通省はこれを見込んで、手続きと審査を簡素・合理化する仕組みを同時に用意しました。施主の立場では、これが設計期間や着工までのスケジュールに効いてくる部分です。
原則は、所管行政庁または登録省エネ判定機関による省エネ適合性判定(省エネ適判)を受け、その判定通知書の写しを建築主事または指定確認検査機関へ提出する流れです。ただし仕様基準を用いるなど審査が比較的容易な場合は、この省エネ適判の手続きが省略され、建築確認の中で審査されます。
注意:審査が不要でも「基準を守らなくてよい」わけではない
図6の①に当たる建物は、行政による適合性の審査が省略されるだけで、省エネ基準に適合させる義務そのものは免除されません。設計・工事監理を行う建築士が基準適合を確認する責任を負います。契約前に「どの基準・どのルートで確認するのか」を書面で確認しておくと、後の行き違いを防げます。
義務化で家はどれだけ変わったのか|適合率の実データで検証する
ここが本記事でいちばんお伝えしたい部分です。国土交通省は「新築建築物の環境性能に関するデータ」として、令和6年度(2024年度)の適合率を公表しています。義務化の施行は2025年4月ですから、これは義務化される前の年度の実績にあたります。
一般的な戸建住宅にあたる小規模区分では、義務化前の令和6年度ですでに94.3%が省エネ基準に適合していました。つまり義務化によって新たに性能を引き上げる必要が生じたのは、およそ残りの5.7%です。「2025年4月を境に新築住宅の性能が大きく変わった」という説明は、この数字と整合しません。
では義務化に意味がなかったのかというと、そうではありません。変わったのは主に手続きと責任の所在です。これまで努力目標だったものが法的な適合義務になり、確認申請の中で書面として確認されるようになりました。施主にとっての実務的な変化は、性能の飛躍というより「設計図書が増え、確認のプロセスが1段増えた」ことだと理解しておくと、見積書や工程表を読むときに迷いません。
そして本当の分岐点は義務基準ではなくZEH水準にあります。住宅全体で60.1%、小規模でも63.5%と、およそ3〜4棟に1棟はまだZEH水準に届いていません。国の第四次答申(令和8年1月29日)によれば令和5年度時点のZEH水準適合率は約46%でしたから、1年で約14ポイント伸びたことになります。伸びは速いものの、2030年以降の新築をZEH・ZEB水準にするという政府目標との差はまだ残っています。
もうひとつ押さえておきたいのが、令和6年度の新築戸建住宅の太陽光発電設備の設置率が40.0%だという点です。一次エネルギー消費量の計算では太陽光でつくったエネルギーを自家消費分に限り差し引けるため、太陽光は「BEIを下げる最短ルート」として選ばれています。新築で太陽光を検討しているなら、蓄電池を同時に載せるかどうかで補助金の使い方も見積額も変わります。
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これからどうなる|2030年のZEH水準と2026年3月の改正法案
省エネ基準の適合義務化は終着点ではなく、段階的な引き上げの第一段です。政府は地球温暖化対策計画で、2030年以降に新築される住宅・建築物についてZEH・ZEB水準の省エネ性能を確保することを目標に掲げており、2050年にはストック平均でZEH・ZEB水準を目指すとしています。
2026年1月29日には社会資本整備審議会の第四次答申が出され、「今後の基準の引上げも見据え、設計者・施工者の技術力の向上や、自治体・機関など審査側の体制確保・強化が必要」と整理されました。あわせて「新築住宅・建築物への支援について、基準引上げに先行したZEH・ZEB水準への適合要件化を検討すべき」とも明記されています。補助金を受け取る条件がZEH水準へ寄っていく方向性が、答申の段階で示されているということです。
さらに2026年3月27日には、建築物省エネ法の改正法案が閣議決定されました。建物の資材製造から解体までを通したCO2排出量を評価するライフサイクルカーボン(LCCO2)評価制度の創設、市場のおよそ4分の1を占める住宅供給事業者を対象とする上位住宅トップランナー制度、環境性能の第三者認証・表示制度などが柱で、法律名も「建築物のエネルギー消費性能の向上及び脱炭素化の促進に関する法律」へ改められる内容です。
これから新築する人の確認チェックリスト
- □ 建てる場所の地域区分(1〜8)と、その地域のUA値基準を把握したか
- □ 提案されている仕様は義務基準か、ZEH水準(誘導基準)かを書面で確認したか
- □ 確認は省エネ計算ルートか仕様基準ルートか、UA値の実数値は提示されるか
- □ 窓がアルミサッシ+複層ガラス相当で止まっていないか(4〜7地域の義務基準はここ)
- □ 省エネ適判が必要な計画か、必要なら審査期間を工程表に織り込んであるか
- □ 太陽光を載せる場合、自家消費分だけが一次エネルギー計算から差し引けることを理解しているか
- □ 使う予定の補助金がZEH水準以上を要件にしていないかを最新の公募要領で確認したか
よくある質問
2025年4月より前に建てた家も、省エネ基準に適合させる義務がありますか?
ありません。適合義務がかかるのは2025年4月1日の施行後に着工する新築と、増改築を行う部分です。既存住宅にさかのぼって断熱改修を求める制度ではありません。ただし国は既存ストックの省エネ化も重視しており、窓の断熱改修や高効率給湯器の導入に対する支援の充実は第四次答申でも打ち出されています。
省エネ基準に適合していれば、断熱等級4ということですか?
義務基準の外皮性能の水準は、住宅性能表示制度の断熱等性能等級4に相当する水準です。ただし住宅性能表示制度の等級取得と、建築物省エネ法にもとづく適合確認は別の手続きです。「等級4相当で設計している」ことと「等級4を第三者機関に評価してもらった」ことは同じではないため、住宅ローン控除や補助金で等級の証明書が必要な場合は、どちらの手続きを踏むのかを事前に確認してください。
義務化で建築費はどれくらい上がりますか?
金額を一律に示せる公的なデータはありません。ただし令和6年度時点で小規模住宅の94.3%がすでに基準に適合していたことを踏まえると、多くの計画では仕様そのものを大きく変える必要がなく、増えるのは主に設計図書の作成と審査にかかる手間です。一方でZEH水準まで引き上げる場合は、窓や断熱材、設備のグレードが実際に変わるため費用差が生じます。相場感はハウスメーカーの坪単価比較もあわせて確認してください。
出典
- 国土交通省「建築物省エネ法のページ」(最終更新:令和8年8月12日)https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/shoenehou.html
- 国土交通省「令和4年度改正建築物省エネ法の概要」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/shouenehou_r4.html
- 国土交通省「【建築物省エネ法第11・12条】適合性判定の手続き・審査の合理化について」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/02.html
- 国土交通省「住宅の仕様基準・誘導仕様基準について」(2026年8月5日掲載、UA値・ηAC値・BEI・仕様基準の数値の出典)https://www.mlit.go.jp/common/002015540.pdf
- 国土交通省「新築建築物の環境性能に関するデータ」(2026年2月13日更新、令和6年度の適合率・太陽光設置率の出典)https://www.mlit.go.jp/common/001878243.pdf
- 国土交通省「今後の住宅・建築物の省エネルギー対策のあり方(第四次答申)の概要」(令和8年1月29日、令和5年度ZEH水準適合率 約46%の出典)https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001978675.pdf
- 国土交通省「『建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律の一部を改正する法律案』を閣議決定」(令和8年3月27日)https://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_001129.html
