6畳用エアコン(冷房2.2kW)を1ヶ月つけっぱなしにした電気代は、国の算出根拠から逆算すると約3,700円です。
ネット上でよく見る「定格消費電力×24時間」の計算だと約1万2,900円になりますが、これは最大出力で回し続けた場合の上限値で、実勢の約3.5倍です。
エアコンはインバーターで出力を絞りながら運転するため、定格消費電力で電気代を計算した時点で答えは必ず過大になります。
この記事の要点
- 6畳・24時間×30日の目安は約120.7kWh/約3,743円(電気1kWhあたり31円で計算)
- 「定格580W×24時間」で計算すると約12,946円。差は約9,200円で3.46倍
- JISの冷房期間消費電力量から出した平均は約1,938円。これは涼しい時期を含む平均なので下限寄り
- 設定温度を27℃から28℃に上げると、国のデータでは約15%下がる
- 畳数が上がるほど差は開き、18畳では定格計算との差が約3万4,700円になる
結論:6畳なら1ヶ月つけっぱなしで約3,700円
先に答えを置きます。冷房を24時間つけっぱなしにして30日間(720時間)続けた場合の電気代の目安は、6畳用で約3,743円です。電気の単価は、資源エネルギー庁の省エネポータルサイトが省エネ効果の金額換算に使っている31円/kWh(全国家庭電気製品公正取引協議会の新電力料金目安単価)を使っています。
この31円という単価は、同サイトの「冷房を1日1時間短縮した場合、年間18.78kWhの省エネ・約580円の節約」という記載を割り算しても検算できます。580円÷18.78kWh=30.9円/kWhとなり、公表単価と一致します。金額の裏取りができる数字だけを使うのが、この記事の方針です。
一方で、「つけっぱなしは月1万円を超える」という記事も多く見かけます。両者が食い違う理由は計算のもとにした数字が違うからで、どちらかが嘘をついているわけではありません。次の章でその構造を分解します。
「定格消費電力×24時間」が3.5倍になるカラクリ
カタログに載っている「消費電力(W)」は定格消費電力といい、決められた試験条件(室内27℃・室外35℃など)でエアコンが定格能力を出しているときの値です。ダイキンのEシリーズ2026年モデルでは、6畳用(冷房能力2.2kW)の冷房定格消費電力は580Wと表示されています。
ここで見落とされやすいのが、同じ欄に併記された括弧内の運転範囲です。この機種の冷房消費電力は「580(125〜840)W」と書かれています。つまり最小125Wから最大840Wまで動き、580Wはその途中の一点に過ぎません。室温が設定温度に近づくとインバーターが出力を絞り、消費電力は最小値の125W付近まで落ちます。
つまり「定格×24時間」は、エアコンが24時間ずっと定格出力で回り続けたと仮定した計算です。実際には立ち上がりの30分〜1時間だけ大きな電力を使い、その後は絞った状態が続きます。24時間つけっぱなしにするほど、平均消費電力は定格から離れていきます。
注意:定格消費電力での計算がまったく無意味というわけではありません。ブレーカー容量の確認や、電源が100V/15Aで足りるかを判断するときは、定格ではなく最大値(この機種なら840W)を見ます。用途によって見るべき数字が違うだけです。
3つの計算法を並べて検算する(6畳・720時間)
冷房費の計算には、根拠の異なる3つの方法があります。どれも公表値に基づいていますが、意味するものが違うため答えが3倍以上ばらつきます。6畳用(冷房2.2kW)を24時間×30日=720時間動かした前提で並べます。
| 計算のもとにする数字 | 1時間あたりの平均消費電力 | 720時間の消費電力量 | 電気代(31円/kWh) |
|---|---|---|---|
| 定格消費電力(580W)×24時間 | 580W | 417.6kWh | 約12,946円 |
| 国の省エネポータルの算出根拠から逆算 | 約168W | 120.7kWh | 約3,743円 |
| JISの冷房期間消費電力量(211kWh)の平均 | 約87W | 62.5kWh | 約1,938円 |
2番目の「国の算出根拠から逆算」を補足します。資源エネルギー庁の省エネポータルサイトには、冷房を1日1時間短縮すると年間18.78kWhの省エネになると記載があり、同サイトの算出根拠では冷房期間を3.6か月(6月2日〜9月21日)の112日と定義しています。18.78kWh÷112日=1時間あたり0.168kWh(約168W)。これが2.2kW機を28℃設定で使ったときの、1時間あたりの実勢に近い平均値です。定格580Wの約29%にあたります。
3番目のJIS基準は、カタログの「消費電力量 冷房時期間合計」を使う方法です。この211kWhは、JIS C 9612:2013にもとづき冷房期間5月23日〜10月4日の135日間、毎日6時から24時までの18時間運転した合計として算出されています。135日×18時間=2,430時間で割ると1時間あたり87Wになりますが、この期間には5月下旬や10月初旬の涼しい日も含まれるため、真夏の実感より低く出ます。
結論として、真夏に24時間つけっぱなしにした1ヶ月の電気代は、6畳で3,700円前後、幅を持たせるなら2,000円台後半から5,000円台と考えるのが妥当です。1万円を超えるという計算は、定格消費電力を24時間かけ続けた結果であって、実際の運転を表していません。
畳数別・1ヶ月つけっぱなしの電気代の目安
国の算出根拠は2.2kW機(6畳用)を前提にしているため、他の畳数は各機種のJIS冷房期間消費電力量の比で按分しました。同じ「つけっぱなし」でも、部屋が広くなるほど金額そのものより定格計算との差額が急に膨らむ点に注目してください。
| 部屋の目安 | 冷房能力 | 冷房定格消費電力 | JIS冷房期間消費電力量 | 24時間×30日の目安 | 電気代の目安 | 定格×24時間だと |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 6畳 | 2.2kW | 580W | 211kWh | 120.7kWh | 約3,743円 | 約12,946円 |
| 8畳 | 2.5kW | 720W | 240kWh | 137.3kWh | 約4,257円 | 約16,070円 |
| 10畳 | 2.8kW | 780W | 273kWh | 156.2kWh | 約4,842円 | 約17,410円 |
| 12畳 | 3.6kW | 1,180W | 416kWh | 238.0kWh | 約7,379円 | 約26,338円 |
| 14畳 | 4.0kW | 1,370W | 463kWh | 264.9kWh | 約8,212円 | 約30,578円 |
| 18畳 | 5.6kW | 2,070W | 648kWh | 370.8kWh | 約11,494円 | 約46,202円 |
6畳では定格計算との差が約9,200円ですが、18畳では約3万4,700円に開きます。広い部屋ほど「つけっぱなしは高すぎる」という誤解が強くなるのは、この差が原因です。
なお、この表は木造南向きの標準的な住宅を前提にしたJIS値をもとにしています。断熱性能の低い家、西日が強く入る部屋、最上階の部屋では、同じ設定でも消費電力量は増えます。逆に断熱等級の高い住宅では表よりも下がります。
設定温度を1℃上げると約15%下がる(国の2データを連立)
つけっぱなし運用でいちばん効くのは設定温度です。資源エネルギー庁の省エネポータルサイトには、次の2つの数字が別々に載っています。
- 外気温31℃のとき、2.2kW機の冷房設定を27℃から1℃上げると年間30.24kWhの省エネ(使用時間9時間/日)
- 設定温度28℃で冷房を1日1時間短縮すると年間18.78kWhの省エネ
この2つを、同サイトが算出根拠として示す冷房期間112日で1時間あたりに直すと連立できます。30.24kWh÷(112日×9時間)=1時間あたり0.030kWhが1℃分の差、18.78kWh÷112日=1時間あたり0.168kWhが28℃設定のときの消費です。したがって27℃設定は0.198kWh/時となり、1℃上げたときの削減率は0.030÷0.198=約15%と計算できます。
1ヶ月つけっぱなし(720時間)に換算すると、27℃設定は約142.3kWh・約4,412円、28℃設定は約120.7kWh・約3,743円。差は月あたり約669円です。冷房を消したり点けたりするより、設定温度を1℃見直すほうが確実に効きます。
この15%を29℃・30℃へ外挿しないでください。国が公表しているのは27℃から28℃への1℃分だけです。設定温度を上げるほど室内外の温度差が縮まり、削減幅は逓減します。また環境省のクールビズは室温28℃を目安としており、これを大きく上回る室温は熱中症のリスクが高まります。金額だけで設定温度を決めないでください。
どの数字を使うべきか(目的別の使い分け)
カタログに並ぶ数字は、それぞれ別の目的のために測られたものです。電気代を知りたいのか、機種を比べたいのか、電源が足りるか確かめたいのかで、見るべき欄が変わります。
特に間違えやすいのが2番目です。機種の省エネ性を比べるときは、定格消費電力ではなく期間消費電力量とAPF(通年エネルギー消費効率)を見ます。今回のダイキンEシリーズなら、6畳から10畳まではAPF5.8、12畳と14畳は4.9、18畳は5.0でした。同じシリーズでも畳数によってAPFが1割以上違うことがあります。
つけっぱなし運用で確認したい5項目
チェックリスト
- 設定温度は28℃を目安にしているか(27℃からの1℃で月約669円)
- フィルターを月1〜2回そうじしているか(国の試算で年31.95kWh・約990円の差)
- 室外機の吹き出し口の前に物を置いていないか
- レースカーテンやすだれで日射を遮っているか(入る熱そのものを減らす)
- 契約している電気料金プランの単価を検針票で確認したか
フィルターそうじの効果は資源エネルギー庁の公表値で年間31.95kWh・約990円。設定温度の見直しと合わせれば、つけっぱなし運用でも1ヶ月の冷房費を1割前後は下げられる計算になります。
それでも電気代が下がらない場合は、使い方ではなく単価そのものか家の断熱のどちらかに原因があります。検針票で1kWhあたりの単価を確認し、31円を大きく上回っているならプランの見直しが先です。
よくある質問
冷房はつけっぱなしとこまめに消すのでは、どちらが安いですか。
外出が短時間ならつけっぱなしのほうが安くなります。エアコンは室温を下げる立ち上がりでいちばん電力を使うため、再起動の回数が増えるほど不利になるからです。境界となる不在時間の目安は30分前後とされています。ただし本記事の金額は24時間連続運転を前提にした上限側の目安なので、日中不在の家庭では実際の請求額はこれより小さくなります。
電気代の計算に使う単価は31円/kWhでよいのですか。
31円は全国家庭電気製品公正取引協議会の新電力料金目安単価で、資源エネルギー庁が省エネ効果の金額換算に使っている値です。あくまで全国の目安なので、正確に知りたい場合は検針票の請求金額を使用量で割って自分の単価を出してください。単価が35円なら本記事の金額を約1.13倍、27円なら約0.87倍すれば換算できます。
10年前のエアコンでも同じ計算でよいですか。
按分の前提が変わるため、そのままでは使えません。手元の取扱説明書やカタログで「冷房時期間消費電力量」を確認し、本記事の6畳の211kWhと置き換えて比を取り直してください。たとえば冷房時期間消費電力量が300kWhの機種なら、300÷211=1.42を6畳の目安3,743円に掛けて約5,300円と見積もります。
出典
- 資源エネルギー庁「無理のない省エネ節約|空調」(冷房1日1時間短縮=年18.78kWh・約580円、設定温度1℃=年30.24kWh、フィルターそうじ=年31.95kWh・約990円)該当ページ
- 資源エネルギー庁「無理のない省エネ節約」省エネ効果の算出根拠(電気31円/kWh=令和4年7月 全国家庭電気製品公正取引協議会 新電力料金目安単価、冷房期間3.6か月=6月2日〜9月21日の112日)該当ページ
- 日本冷凍空調工業会「期間消費電力量を省エネ性のめやすにお選びください」(JIS C 9612:2013の算出基準=冷房期間5月23日〜10月4日・6時から24時の18時間・設定温度冷房27℃)該当ページ
- ダイキン工業「Eシリーズ 仕様(スペック)」2026年モデル(冷房定格消費電力・冷房時期間消費電力量・APF)該当ページ
本記事の金額は上記の公表値をもとにした筆者計算です。住宅の断熱性能・方位・地域・機種・契約プランによって実際の電気代は変わります。最終的な判断は検針票の実額とお使いの機種のカタログでご確認ください。
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