東北電力エリアの乗り換えで差がつくのは、基本料金・月320kWh超の単価・燃料費調整の有無の3か所です。県限定プランは月600kWh未満だと割高。2026年9月5日時点の公表単価で確認。
設備・世帯・地域で結論がどう入れ替わるかの全体像は電力会社の選び方 2026|省エネ設備・世帯・地域で選ぶ乗り換え完全ガイドにまとめています。この記事はそのうち「東北の電力会社おすすめ比較」に絞って掘り下げます。
情報基準日: 2026-09-05
東北電力エリアで料金表を並べ直すと、乗り換えで動くのは3か所だけです。
第1に基本料金、第2に月320kWhを超えた分の単価、第3に燃料費調整があるかどうかです。
とくに秋田・岩手・山形の県限定プランは「本体は安いが燃料費調整がない」ため、いまの単価水準では月600kWh未満の家では割高になります。
この記事の要点(2026年9月5日確認)
- 東北電力フロンティアの「スマートでんき」は従量電灯Bと単価が完全に同じで、そこに1〜3%の割引だけが乗る。月400kWh・40Aなら年5,620円下がる。
- 「よりそう+eねっとバリュー」は基本料金が全アンペアでちょうど月55円安く、電力量料金は1銭も変わらない。年660円で固定。
- 「よりそう+ファミリーバリュー」は基本料金が従量電灯Bと1円まで同額で、差は電力量料金だけ。分岐点は月319.2kWh。
- 秋田・岩手・山形の県限定プラン(水のチカラ)は基本料金が従量電灯Bのちょうど半額・電力量料金31.61円の一律だが、燃料費調整がない。直近の燃調(▲6.68〜▲8.35円/kWh)を入れると月600kWh未満では逆転する。
- オール電化の昼夜差は7.00円/kWhで、東京電力エリアの7.90円より小さい。夜へ動かす価値は東北のほうが1割ほど低い。
この記事の比較基準|公式単価のみ・アフィリエイト順位なし・情報基準日
- 料金は各社の公式サイトと供給約款に記載された単価だけを使って計算しています。実際の請求額は使用量・契約容量・燃料費調整額・再エネ賦課金で変わります。
- 紹介する順序や掲載の有無を広告の成果報酬で変えていません。提携のあるサービスを案内する場合は記事の冒頭にPR表記を置いています。
- 年額の差は前提の使用量と計算式を本文に明記し、条件によって結果が変わるため「最安」と断定する表現は使いません。
- 情報基準日: 2026-09-12(単価の改定を確認した場合は本文の表と基準日を更新します)
東北電力エリアは東北6県+新潟県|家庭向けの入口は6プラン
東北電力の供給エリアは青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島の6県に新潟県を加えた7県です。家庭向けの入口になるのは、規制料金の「従量電灯B」と、自由料金の「よりそう+」シリーズ、そしてグループ会社である東北電力フロンティアのプランです。まず全体像を1枚の表にします。
図1|東北エリアで選べる家庭向けプラン(税込・2026年9月5日確認)
| プラン | 基本料金(30A相当) | 電力量料金 | 向いている家 |
|---|---|---|---|
| 従量電灯B(東北電力) | 1,108.80円 | 29.62/36.37/40.32円 | 基準。燃料費調整に上限が残る |
| スマートでんき(フロンティア) | 1,108.80円 | 従量電灯Bと同一 | そのまま1〜3%引きにしたい家 |
| よりそう+eねっとバリュー | 1,053.80円 | 従量電灯Bと同一 | eねっとを契約している家 |
| よりそう+ファミリーバリュー | 1,108.80円(3kVA) | 34.07/39.02円(400kWh境) | 月320kWh超の大人数世帯 |
| よりそう+ナイト&ホリデー | 1,108.80円(3kVA以下) | 平日昼34.79〜50.11/夜・休日27.27円 | 平日夜と休日に偏る家 |
| よりそう+スマートタイム | 4,356.00円(10kVA以下) | 平日昼36.86/夜・休日29.86円 | オール電化 |
| よりそう+おひさまeバリュー | 3,366.00円(10kVA以下) | 35.27円(時間帯区分なし) | 太陽光+おひさまエコキュートの家 |
| 水のチカラ(秋田・岩手・山形限定) | 554.40円 | 31.61円(一律) | 3県在住で使用量が多い家 |
この表で最初に目に付くのは、基本料金が1,108.80円で横並びになっている行が4つあることです。東北電力は自由料金プランを作るときに基本料金をほとんど動かしておらず、差を付けているのは電力量料金の刻み方と時間帯の切り方だけでした。乗り換えの効果を読むには、電力量料金の段階を自分の使用量に当てはめるしかありません。
単価を1銭も変えずに安くする2つ|スマートでんきとeねっとバリュー
東北エリアには、料金表そのものは従量電灯Bのまま、金額だけを下げるプランが2つあります。東北電力フロンティアの「スマートでんき」と、東北電力の「よりそう+eねっとバリュー」です。どちらも公式サイトに従量電灯Bと単価が同じと明記されているので、比較はきわめて単純になります。
スマートでんきは、基本料金と電力量料金の合計額に応じて1%(7,000円未満)・2%(7,000円以上15,000円未満)・3%(15,000円以上)を割り引きます。よりそう+eねっとバリューは、割引ではなく基本料金そのものが安く、10Aから60Aまで全アンペアでちょうど55円差でした。最低月額料金も358.95円と303.95円で同じ55円差です。
図2|スマートでんき割の年額(従量電灯B比・本体料金ベース)
| 契約/月使用量 | 基本+電力量 | 割引率 | 年額の下げ幅 |
|---|---|---|---|
| 20A/150kWh | 5,384.70円 | 1% | 年646円 |
| 30A/200kWh | 7,572.80円 | 2% | 年1,817円 |
| 30A/300kWh | 11,209.80円 | 2% | 年2,690円 |
| 40A/400kWh | 15,611.40円 | 3% | 年5,620円 |
| 50A/600kWh | 24,045.00円 | 3% | 年8,656円 |
| 参考:eねっとバリュー | — | — | 年660円(使用量に関係なく固定) |
注目したいのは、月400kWhで割引率が2%から3%へ上がる境目です。基本料金と電力量料金の合計が15,000円を超えると3%になるので、40A・400kWhの家はちょうどその上に乗り、年5,620円まで届きます。逆に一人暮らしの20A・150kWhでは年646円で、eねっとバリューの年660円とほとんど変わりません。使用量が少ない家では、どちらを選んでも差は年十数円です。
ただしどちらのプランも、燃料費調整の上限がありません。従量電灯Bには上限があるため、燃料価格が急騰した局面では上の年額がそのまま消えるどころか逆転しえます。この点はフロンティア自身が公式サイトに注記しています。
月319.2kWhが分かれ目|ファミリーバリューは基本料金が完全に同額
「よりそう+ファミリーバリュー」は3kVAまで1,108.80円、超過分は1kVAごとに369.60円です。従量電灯Bの30A・40A・50A・60Aと突き合わせると、3kVA=30A、4kVA=40A、5kVA=50A、6kVA=60Aで基本料金が1円まで完全に一致していました。つまり2つのプランの差は電力量料金だけで決まります。
従量電灯Bは120kWhまで29.62円、300kWhまで36.37円、それ以降40.32円の3段階。ファミリーバリューは400kWhまで34.07円、それ以降39.02円の2段階です。累計額を等号で結ぶと、分岐点は月319.2kWhで求まります。300kWhの家ではファミリーバリューが月120円高く、320kWhでちょうど並び、そこから先はファミリーバリューが伸び続けます。
図3|ファミリーバリューに替えたときの年間の下げ幅(本体料金ベース)
子育て世帯や二世帯住宅のように、日中も人がいて月400kWhを超える家では年6,060円から年12,300円の差になります。逆に月300kWh前後で迷っている家は、替えないほうが安いという結論です。分岐点が319.2kWhと高めなのは、ファミリーバリューの第1段階34.07円が従量電灯Bの第1段階29.62円より4.45円高いためで、少ない使用量ほど不利になる設計になっています。
秋田・岩手・山形の県限定プランは「本体は安いが燃料費調整がない」
東北エリアで他地域にない特徴が、県営水力発電所の電気を使う県限定プラン「水のチカラ」です。秋田・岩手・山形の3県だけで申し込めます。3県とも料金表は同じで、基本料金は従量電灯Bのちょうど半額(30Aで554.40円)、電力量料金は段階なしの一律31.61円でした。青森・宮城・福島と新潟には同種のプランがありません。
本体だけを比べれば圧倒的に安く見えます。しかしこのプランには燃料費調整がありません。フロンティア自身が「燃料費調整を行うプランを現在ご契約中の場合は、現在よりも料金が高くなる場合がございます」と注記しています。東北電力の低圧の燃料費調整単価は最近ずっとマイナスで、2026年6月分から10月分までの5か月は国の軽減措置を除いて▲6円68銭から▲8円35銭で推移しました。使った分だけ従量電灯B側が値引きされているということです。
図4|県限定プランと従量電灯Bの月額差(プラスは県限定プランが高い)
| 契約/月使用量 | 本体の差 | 燃調▲6.68円のとき | 燃調▲8.35円のとき | 逆転する燃調 |
|---|---|---|---|---|
| 20A/150kWh | −273.60円 | +728.40円 | +978.90円 | ▲1.82円/kWh |
| 30A/200kWh | −696.40円 | +639.60円 | +973.60円 | ▲3.48円/kWh |
| 30A/300kWh | −1,172.40円 | +831.60円 | +1,332.60円 | ▲3.91円/kWh |
| 40A/400kWh | −2,228.20円 | +443.80円 | +1,111.80円 | ▲5.57円/kWh |
| 50A/600kWh | −4,155.00円 | −147.00円 | +855.00円 | ▲6.93円/kWh |
| 60A/800kWh | −6,081.80円 | −737.80円 | +598.20円 | ▲7.60円/kWh |
右端の「逆転する燃調」は、県限定プランと従量電灯Bが並ぶ燃料費調整単価です。この値より燃調が深い(マイナスが大きい)と、県限定プランのほうが高くなります。直近5か月の実績が▲6.68円から▲8.35円なので、月600kWh未満の家では県限定プランが割高でした。月800kWhの大所帯でも、燃調が浅い月にだけ逆転する水準です。
誤解しやすいところ
燃料費調整がないことは「損」ではなく「振れ幅がない」という意味です。燃調がプラスに転じた局面では、この表の符号がそのまま反対になります。県限定プランは料金の安さで選ぶより、県産水力100%でCO2排出量がゼロという中身と、請求額が読みやすいことで選ぶプランだと考えたほうが実態に合います。なお秋田のAターン・子育て応援割、岩手のいわて応援特典、山形のやまがた移住・子育て割はいずれも基本料金が6か月間0円になるオプションで、30Aなら6か月で3,326.40円ぶんです。
オール電化は2択|分岐は「夜間比率が何パーセントか」
オール電化の入口は「よりそう+スマートタイム」です。基本料金は10kVA以下で4,356.00円、電力量料金は平日昼間(8時〜22時)36.86円、夜間・休日29.86円。昼夜の差は7.00円/kWhで、当サイトが確認した東京電力エナジーパートナーのスマートライフS・Lの7.90円より0.90円小さい水準です。10kWhの蓄電池を毎日1回動かした場合の理論上限は年25,550円で、東京電力エリアの年28,835円より年3,285円少なくなります。
もう1つが「よりそう+おひさまeバリュー」です。太陽光発電とおひさまエコキュート(東北電力のリースサービス)を設置している家が対象で、基本料金は3,366.00円とスマートタイムより月990円安く、電力量料金は時間帯の区分なしで一律35.27円です。昼に沸かす前提の機器に合わせて、昼の単価を下げ、夜の割安をなくした設計になっています。
図5|おひさまeバリューが有利になる夜間比率の上限
| 月の使用量 | この比率未満ならおひさまeバリューが安い | 基本料金差の効き(1kWhあたり) |
|---|---|---|
| 400kWh | 58.1% | 2.48円 |
| 600kWh | 46.3% | 1.65円 |
| 800kWh | 40.4% | 1.24円 |
| 1,000kWh | 36.9% | 0.99円 |
| 1,200kWh | 34.5% | 0.83円 |
読み方はこうです。月600kWhの家なら、夜間・休日に使う割合が46.3%未満のあいだはおひさまeバリューのほうが安く、それを超えるとスマートタイムが逆転します。使用量が増えるほど基本料金990円の効きが薄まり、分岐点は下がっていきます。太陽光を載せていない家、あるいは夜間にEVや蓄電池を充電する家は、素直にスマートタイム側です。
なお、オール電化プランは基本料金そのものが重い点も見落とせません。スマートタイムの4,356.00円は従量電灯Bの60A(2,217.60円)の約2倍で、年25,660円ぶん基本料金が多い計算になります。給湯を電気に寄せることで浮く額がこれを超えるかどうかは、機器の効率と使用量しだいです。エコキュート側の実額はエコキュートの電気代で整理しています。
申し込む前に必ず見る3つの条件
図6|ここを外すと試算が崩れます
- 燃料費調整の上限がないプランがある。東北電力は自由料金プランについて「燃料費調整単価の算定に用いる平均燃料価格に上限を設定しておりません」と明記しています。従量電灯Bには上限が残るため、燃料価格が上がった局面では上の試算が入れ替わります。
- 受付を終了したプランが多い。よりそう+ナイト8・ナイト10・ナイトS・シーズン&タイム・ナイト12・サマーセーブは2023年3月31日で新規受付が終了しています。時間帯別電灯A・B・Sとピークシフト季節別時間帯別電灯は2016年3月31日で終了です。他社の比較記事にはまだ現行プランとして載っていることがあります。
- 単価の表示時点がプランごとに違う。フロンティアのスマートでんきは2024年4月1日現在、いわてeでんきは2024年7月17日現在、やまがたeでんきは2024年11月26日現在の表示です。申し込む直前に各社の料金表で確認してください。
もうひとつ、「よりそう+eねっとバリュー」は東北電力のインターネットサービス「よりそうねっと」への加入が前提です。年660円の値下げのために通信契約を動かす価値があるかは、いま払っている通信費と並べてから決めてください。使用量が多い家なら、同じ手間でスマートでんきの3%(年8,656円)を取りにいくほうが効きます。
どれを選ぶか|4つの質問で決まる
東北エリアのプラン選びチェックリスト
- オール電化、または太陽光・蓄電池・EVがある? → はい:よりそう+スマートタイムを基準に、太陽光とおひさまエコキュートがあるなら図5でおひさまeバリューと比べる。
- いいえの場合、月320kWh以上使う? → はい:よりそう+ファミリーバリュー。基本料金は同額のまま年6,060円から12,300円下がる。
- 月320kWh未満で、手間をかけずに下げたい? → はい:スマートでんき。単価は従量電灯Bのままで1〜2%引き。年646円から2,690円。
- 秋田・岩手・山形在住で、県産の再エネを選びたい? → 水のチカラ。ただし料金は図4のとおりで、いまの燃調水準では月600kWh未満なら割高になる。
市場連動型(30分ごとに単価が動くタイプ)や基本料金0円型も東北エリアで申し込めますが、判断の軸が上の4つとは別になります。仕組みと向き不向きは市場連動型プランとは何かで整理しています。
よくある質問
Q. 新潟県は東北電力エリアですか、東京電力エリアですか?
新潟県は東北電力の供給エリアです。東北電力フロンティアのスマートでんきも加入条件を「東北6県または新潟県において60アンペア以下で電気を使用されること」と定めています。ただし佐渡島・粟島(新潟県)と飛島(山形県)は離島等供給約款の対象で、スマートでんきの対象外です。
Q. 県限定プランは本当に県産の水力100%ですか?
フロンティアは2026年度の計画電源構成を公表しており、秋田と山形は水力(3万kW未満)100%、岩手は水力(3万kW以上)58%と水力(3万kW未満)42%です。県営水力由来の非化石証書を使ってCO2排出量ゼロの電気として供給する仕組みで、異常渇水などで供給量が著しく不足した場合は構成が変わることがあると明記されています。
Q. 太陽光を載せている家は、どの単価を見ればよいですか?
買う電気が集中する時間帯の単価です。おひさまエコキュートのように昼に沸かす機器がある家はおひさまeバリューの一律35.27円、夜に蓄電池やEVを充電する家はスマートタイムの夜間29.86円が判断材料になります。設備がある家の選び方は太陽光がある家の電力会社の選び方で詳しく扱っています。
出典
- 東北電力「従量電灯B」電気料金単価・計算方法(2026年9月5日確認)
- 東北電力「一般のご家庭向けプラン」プラン一覧と新規加入受付終了プラン(2026年9月5日確認)
- 東北電力「よりそう+eねっとバリュー」「よりそう+ファミリーバリュー」「よりそう+ナイト&ホリデー」「よりそう+スマートタイム」「よりそう+おひさまeバリュー」各電気料金単価(2026年9月5日確認)
- 東北電力「2026年6月分・7月分・8月分・9月分・10月分の燃料費等調整単価について(低圧のお客さま)」(2026年9月5日確認)
- 東北電力フロンティア「スマートでんき」料金表・スマートでんき割・ご加入条件(2026年9月5日確認)
- 東北電力フロンティア「水のチカラ〜あきたeでんき〜/〜いわてeでんき〜/〜やまがたeでんき〜」料金表・電源構成(2026年9月5日確認)
- 東京電力エナジーパートナー「スマートライフS・L」料金単価(当サイトが2026年8月27日に確認)
