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都市ガス(162円/立方メートル)とエコキュート(年間給湯保温効率3.5)を同じ給湯熱量でそろえると、逆転する電気単価は56.7円/kWh。いまの目安単価31円/kWhの1.8倍です。
LPガス(全国平均の従量単価724円/立方メートル)が相手なら逆転点は115.2円/kWhまで上がり、電気が3.7倍になるまでエコキュートが安い計算になります。
逆に電気温水器(効率1.0)は、都市ガス相手だと16.2円/kWh以下でないと勝てません。「電気が安い」のではなく「ヒートポンプが効いている」というのが正しい理解です。
この記事の要点
- 比較の前提は国の公表値でそろえる。電気31円/kWh・都市ガス162円/立方メートルは資源エネルギー庁 省エネポータルの金額換算係数。
- ガス給湯器の熱効率は、同じポータルの追い焚きデータから80.0%と逆算できる。メーカー公表の「従来型 約80%」と一致した。
- 逆転する電気単価はガス単価×3.6×効率比の一本の式で出る。都市ガス56.7円、LPガス115.2円(いずれも従来型・エコキュート3.5の場合)。
- 浴槽1杯(180L・20℃→40℃)あたりでは、エコキュート37.1円に対し都市ガス従来型67.8円、LPガス従来型137.8円。
- ガス側から見ると、都市ガスが88.6円/立方メートル(現行の55%)まで下がらないとエコキュートは負けない。
「電気とガスはどちらが安いか」の答えが割れる理由
給湯は家庭で使うエネルギーの約29%を占める、いちばん大きな用途です(リンナイがエネルギー白書2017を引いて示している構成比)。それだけに「エコキュートとガス給湯器はどちらが安いのか」は検索の多い問いですが、出てくる答えはページごとにバラバラです。
理由は単純で、比較に使う前提が書かれていないからです。電気の単価をいくらにしたのか、ガスは都市ガスかLPガスか、給湯器の熱効率をいくつと置いたのか、エコキュートの効率はいくつか。この4つが違えば答えは何通りにもなります。金額だけを並べた比較表は、前提を1つ変えるだけで順位がひっくり返ります。
そこでこの記事では、金額を先に出しません。「電気単価がいくらになったら逆転するか」を式で解いて、そのうえで自分の検針票の数字を当てはめてもらうという順序で進めます。前提はすべて国とメーカーの公表値だけを使い、途中の計算も全部書きます。
前提をそろえる|国が公表している単価と発熱量
比較の土台になるのは、資源エネルギー庁の省エネポータルサイトが節約額の算出に使っている金額換算係数です。同サイトの算出根拠ページに、単価とその出典が明記されています。
| 項目 | 値 | 出所 |
|---|---|---|
| 電気 | 31円/kWh | 全国家庭電気製品公正取引協議会 新電力料金目安単価(税込) |
| 都市ガス | 162円/立方メートル | ガス事業便覧の供給約款料金平均を45MJに換算(税込) |
| 灯油 | 86円/L | 資源エネルギー庁 石油製品価格調査の全国平均(過去3年平均・税込) |
| 水道 | 260円/立方メートル | 総務省小売物価統計調査に基づき1立方メートルに換算(税込) |
発熱量は「原油換算係数」から復元できる
コストの比較には単価だけでなく、燃料1単位あたりの熱量(発熱量)が要ります。ここも推測せずに済みます。同じ算出根拠ページには原油換算係数が併記されており、省エネ法の換算則である「1GJ=0.0258キロリットル原油」で割り戻すと発熱量が出ます。
- 都市ガス:1.16L原油/立方メートル ÷ 0.0258 = 44.96MJ/立方メートル(ポータルが明記する45MJと一致)
- 灯油:0.947L原油/L ÷ 0.0258 = 36.71MJ/L
- 電気:0.252L原油/kWh ÷ 0.0258 = 9.77MJ/kWh(一次エネルギー換算。機器の効率計算には使いません)
LPガスだけは省エネポータルに換算係数がないため、LPガス安全委員会の公表値を使います。気体のプロパン1立方メートルの発熱量は99MJ(24,000kcal)です。同じページでは都市ガス1立方メートルを46MJとしていますが、本記事では単価162円/立方メートルと対になる45MJを採用します(単価と発熱量の基準をそろえないと計算が合わなくなるため)。
LPガスの単価は「従量部分」だけを取り出す
LPガスの料金は基本料金と従量料金の二部料金です。給湯の使用量が増減したときに効いてくるのは従量単価のほうなので、比較にはこちらを使います。石油情報センターが公表する2026年7月31日調査の全国平均は、10立方メートルで9,785円、20立方メートルで17,022円。差の7,237円を10立方メートルで割ると従量単価は723.7円/立方メートルとなり、本記事では724円/立方メートルとして計算します。
なお20立方メートル時点の平均単価は851円/立方メートルですが、これは基本料金を含んだ数字です。「使う量が1立方メートル増えたらいくら増えるか」を見る本記事の比較には従量単価が適切です。
エコキュートの効率は国の目標基準値を使う
エコキュートの性能はJIS C 9220の年間給湯保温効率で表されます。省エネ法トップランナー制度の2025年度目標基準値は、給湯省エネ2026事業の公式サイトに区分ごとの一覧が掲載されています。
| 区分 | 想定世帯・貯湯容量 | 2025年度目標基準値 |
|---|---|---|
| A / B | 少人数(一般地 / 寒冷地) | 3.0 / 2.7 |
| C / D | 標準・一缶・320L未満(一般地 / 寒冷地) | 3.1 / 2.7 |
| E / F | 標準・一缶・320L以上550L未満(一般地 / 寒冷地) | 3.5 / 2.9 |
| G / H | 標準・一缶・550L以上(一般地 / 寒冷地) | 3.2 / 2.7 |
| I / J | 標準・多缶(一般地 / 寒冷地) | 3.0 / 2.7 |
ガス給湯器の熱効率は、国の公表データから80.0%と逆算できる
比較の最後のピースがガス給湯器の熱効率です。ここは多くの記事が「一般に80%程度」とだけ書いて出典を示しません。しかし省エネポータルの追い焚きデータを使えば、自分で計算して出せます。
ポータルは「2時間の放置により4.5℃低下した湯(200L)を1日1回追い焚きする場合、年間でガス38.20立方メートルの省エネ、約6,190円の節約」と公表しています。ここから、
- 1回あたりの有効熱量 = 200kg × 4.186kJ/(kg・K) × 4.5K = 3,767kJ = 3.767MJ
- 年間の有効熱量 = 3.767MJ × 365回 = 1,375MJ
- 年間の投入熱量 = 38.20立方メートル × 45MJ = 1,719MJ
- 熱効率 = 1,375 ÷ 1,719 = 80.0%
リンナイが公式サイトで示す「従来型の給湯熱効率 約80%、エコジョーズで約95%」とぴたりと一致しました。国のデータだけで、メーカーの公表値を独立に検算できたことになります。
同じ80.0%をシャワーのデータに当てはめると、給水温度まで出ます。1分間に流れるお湯は12リットルなので、1日1分を365日で年間4,380リットル。これはポータルが示す節水量4.38立方メートルと完全に一致します。投入熱量12.78×45=575MJに効率0.80を掛けた460MJが有効熱量で、4,380kgの水を温めた温度差は25.1K。45℃から引くと年平均給水温度は19.9℃になります。設備設計で使われる年平均給水温度の目安(おおむね18〜20℃)と整合しており、逆算した効率80.0%が妥当だったことの裏づけになります。
逆転する電気単価を一本の式で解く
同じ給湯熱量Qをつくるとき、それぞれの費用は次のようになります。
費用の式
ガス系の費用 = ガス単価 × Q ÷(発熱量 × 給湯器効率)
電気系の費用 = 電気単価 × Q ÷(3.6 × エコキュート効率)
両者が等しくなる電気単価
電気単価 = ガス単価 × 3.6 × エコキュート効率 ÷(発熱量 × 給湯器効率)
※3.6は1kWhが3.6MJであることによる換算。Qは両辺で消えるため、使用量がいくらでも分岐点は変わりません。
この式に前節でそろえた前提を入れると、次の早見表になります。表の数字は「電気単価がこの値を超えると、そのガス機器のほうが安くなる」という境界です。
| 比較の相手 | エコキュート3.0 | エコキュート3.5 | エコキュート3.7 |
|---|---|---|---|
| 都市ガス 従来型(効率80%) | 48.6円 | 56.7円 | 59.9円 |
| 都市ガス エコジョーズ(95%) | 40.9円 | 47.7円 | 50.5円 |
| LPガス 従来型(効率80%) | 98.7円 | 115.2円 | 121.8円 |
| LPガス エコジョーズ(95%) | 83.1円 | 97.0円 | 102.5円 |
もっとも差が小さい組み合わせ(都市ガスのエコジョーズ vs 効率3.0のエコキュート)でも40.9円/kWh。現在の31円から3割強の値上がりまでは、ランニングコストの順位は変わりません。逆にLPガスの家では115円/kWhが分岐点で、電気が3.7倍にならないと逆転しない計算になります。
電気温水器は「電気だから安い」わけではない
同じ式にエコキュートの代わりに電気温水器(ヒートポンプを使わない貯湯式。効率はほぼ1.0)を入れると、景色が一変します。都市ガスの従来型が相手でも分岐点は16.2円/kWh、エコジョーズ相手だと13.6円/kWhで、現行の31円ではまったく歯が立ちません。LPガス相手でようやく32.9円(従来型)と互角になる程度です。
つまり給湯を電気に替えて安くなるのは電気が安いからではなく、ヒートポンプが投入した電気の3〜3.7倍の熱を運んでくるからです。この一点を押さえておくと、「オール電化は高い」という一般論に振り回されずに済みます。
浴槽1杯あたりに直すと、差はいくらになるか
分岐点だけでは実感がわかないので、具体的な湯量に落とします。180リットルの浴槽を、給水20℃から40℃まで温める場合の有効熱量は 180kg × 4.186kJ × 20K = 15.07MJ。これを各機器でつくると次のようになります。
| 機器 | 1杯あたりの燃料・電力 | 1杯あたり | 毎日で年間 |
|---|---|---|---|
| エコキュート(3.5) | 1.20kWh | 37.1円 | 13,542円 |
| エコキュート(3.0) | 1.40kWh | 43.3円 | 15,795円 |
| 都市ガス エコジョーズ | 0.353立方メートル | 57.1円 | 20,842円 |
| 都市ガス 従来型 | 0.419立方メートル | 67.8円 | 24,747円 |
| LPガス エコジョーズ | 0.160立方メートル | 116.0円 | 42,340円 |
| LPガス 従来型 | 0.190立方メートル | 137.8円 | 50,297円 |
| 電気温水器 | 4.19kWh | 129.8円 | 47,377円 |
湯はりだけで、都市ガスの従来型からエコキュートに替えると年11,205円、LPガスの従来型からなら年36,755円の差になります。ここにシャワーと台所の給湯が加わるので、家全体では都市ガスで年2万円前後、LPガスで年6万円前後の差が出る規模感です。
逆から見る|ガス単価がいくらまで下がれば逆転するか
電気が上がるのではなく、ガスが下がる方向でも逆転は起こります。式を組み替えると、境目のガス単価は次のとおりです。
ガス単価 = 電気単価 × 発熱量 × 給湯器効率 ÷(3.6 × エコキュート効率)
| 相手の機器 | 逆転するガス単価 | 現在の単価との比 |
|---|---|---|
| 都市ガス 従来型 | 88.6円/立方メートル | 現行162円の55% |
| 都市ガス エコジョーズ | 105.2円/立方メートル | 現行162円の65% |
| LPガス 従来型 | 194.9円/立方メートル | 現行724円の27% |
| LPガス エコジョーズ | 231.3円/立方メートル | 現行724円の32% |
都市ガスなら現行の55%、LPガスなら27%まで下がらないと逆転しません。電気側とガス側のどちらから見ても、いまの単価水準ではエコキュートのランニングコスト優位は相当に厚いマージンで守られている、というのがこの計算の結論です。
石油給湯器(灯油)はどう扱うか
寒冷地では石油給湯器も選択肢に入りますが、ここは正直に書きます。石油給湯器の熱効率について、公的機関が示す代表値を確認できませんでした。ガス給湯器のように追い焚きデータから逆算できる公表値も、省エネポータルにはありません。そのため断定的な金額は出しません。
代わりに、前提を明示したうえで式だけ示します。灯油の発熱量は前述のとおり36.71MJ/L、単価は省エネポータルの換算係数86円/Lです。仮に熱効率を85%と置き、エコキュートを3.5とすると、逆転する電気単価は 86 × 3.6 × 3.5 ÷(36.71 × 0.85)= 約34.7円/kWh。現行の31円との差は1割強しかなく、都市ガスやLPガスと比べて分岐点がぐっと近いことが分かります。
ただし灯油価格は変動が大きく、86円/Lは過去3年平均に基づく換算用の数値です。実際の店頭価格が上がれば分岐点も比例して上がります。石油給湯器とエコキュートの比較だけは、その時点の灯油価格と機器の効率を確認してから式に入れてください。ここは「前提しだいで順位が入れ替わりうる唯一の組み合わせ」です。
この計算が扱っていないこと
- 初期費用と工事費。エコキュートはガス給湯器より本体・工事とも高く、回収年数の計算が別途必要です。ランニングコストだけで結論は出ません。
- 電気料金プラン。31円/kWhは全国的な目安単価です。夜間が安いプランならエコキュートの実効単価はさらに下がり、逆に燃料費調整額や再エネ賦課金が乗ると上がります。
- 基本料金。ガスをやめて基本料金がまるごと消える家と、コンロだけガスが残る家では、実際の家計への効きめが変わります。
- 設置条件。貯湯タンクの置き場所、寒冷地仕様の要否、配管の引き直しなど、金額以前に成立するかどうかの確認が要ります。
わが家はどう判断すればよいか
ここまでの計算を、判断の順序に組み直すと次のようになります。上から順に自分の家に当てはめてください。
検針票を手元に置いて確認する4項目
- いまの熱源はLPガスか都市ガスか。LPガスなら分岐点は115円/kWhで、ランニングコストの差は年3万円規模。検討する価値がいちばん大きい家です。
- いまのガス給湯器は従来型かエコジョーズか。エコジョーズなら分岐点は下がりますが、それでも47.7円/kWhで現行の1.5倍です。
- 電気の実効単価はいくらか。検針票の請求額を使用量で割ります。燃料費調整額と再エネ賦課金を含めた実額が、図4のどの列より下にあるかを見ます。
- 初期費用の差は何年で戻るか。ここまでの年間差額を、本体と工事費の差額で割ります。補助金を引いた実質負担で計算するのが要点です。
4番目だけは、この記事の計算では答えが出ません。エコキュートの総額は本体価格だけでなく、既存配管の状態、基礎工事の要否、旧機の撤去処分費で数万円から十数万円変わり、同じ機種でも業者ごとの見積差が大きい部分だからです。年間差額が分かっている状態で複数社の総額を並べると、回収年数はその場で計算できます。
よくある質問
エコキュートとガス給湯器は、結局どちらが安いのですか。
ランニングコストだけで見れば、いまの単価水準ではエコキュートです。逆転する電気単価は都市ガスの従来型が相手なら56.7円/kWh、エコジョーズ相手でも47.7円/kWhで、目安単価31円/kWhを大きく上回っています。ただし初期費用と工事費はエコキュートのほうが高いため、最終的な判断は年間差額と設置総額の両方が必要です。
電気代がこれから上がっても、エコキュートは有利なままですか。
図4の分岐点までは順位が変わりません。もっとも条件が厳しい組み合わせ(都市ガスのエコジョーズと効率3.0のエコキュート)でも40.9円/kWhなので、現行から3割強の値上がりまでは耐えます。ガス単価が据え置きのまま電気だけが上がるという前提での話なので、実際には燃料価格の上昇は両方に効くことも押さえておいてください。
LPガスの家は本当に年3万円も変わるのですか。
浴槽の湯はりだけで年36,755円の差になります。これは180リットルを毎日わかす前提での計算で、シャワーや台所の給湯を加えるとさらに広がります。LPガスの従量単価は地域と販売店で大きく違うため、まず自分の検針票から従量単価を出し、本記事の式に入れて確かめてください。
出典
- 資源エネルギー庁 省エネポータルサイト「無理のない省エネ節約」省エネ効果の算出根拠(2026年8月19日確認)
- 資源エネルギー庁 省エネポータルサイト「風呂・トイレ」省エネ行動と省エネ効果(2026年8月19日確認)
- 給湯省エネ2026事業 公式サイト「対象機器の詳細(エコキュート)」(2026年8月19日確認)
- 石油情報センター「一般小売価格 LP(プロパン)ガス 速報」2026年7月31日調査(2026年8月19日確認)
- LPガス安全委員会「LPガスとは?」プロパンの発熱量(2026年8月19日確認)
- リンナイ「エコジョーズのしくみ」給湯熱効率(2026年8月19日確認)
本文中の熱効率80.0%、年平均給水温度19.9℃、逆転単価、浴槽1杯あたりの費用は、上記の公表値をもとに編集部が計算したものです。計算式と前提はすべて本文に記載しています。
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