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同じ前提でそろえると、ひと冬(1日9時間×169日)の暖房費はエアコン約11,400円、石油ファンヒーター約13,400円、ガスファンヒーター約19,500円になります。
ただしこれは電気31円/kWh・灯油86円/L・都市ガス162円/立方メートルという国の換算単価での話で、電気単価が37円/kWhを超えると石油ファンヒーターの方が安くなります。
設定温度を1℃下げたときの削減率はエアコンが約14.5%、ファンヒーターは約7.1%。同じ1℃でも効きめは2倍違います。
この記事の要点
- 暖房器具の比較記事で答えが割れるのは、使用時間・シーズン日数・エネルギー単価の前提がバラバラだから
- 本記事は資源エネルギー庁の「省エネ効果の算出根拠」に前提を統一(電気31円/kWh・都市ガス162円/立方メートル・灯油86円/L・暖房期間169日)
- ひと冬の実費はエアコン約11,400円 < 石油ファンヒーター約13,400円 < ガスファンヒーター約19,500円
- 順位は絶対ではない。灯油86円/Lのとき、電気が約37円/kWhを超えるとエアコンと石油ファンヒーターが逆転する
- こたつ・電気カーペットは「主役」ではなく、エアコンの設定温度を下げるための道具として使うのが正解
暖房器具の比較記事で答えが割れる理由
「暖房器具 電気代」で検索すると、エアコンが最安と書く記事もあれば、こたつが圧倒的に安いと書く記事もあります。数字が食い違うのは、それぞれが違う前提で計算しているからです。
よくある食い違いの原因は3つあります。
比較がズレる3つの原因
- 定格消費電力で計算している:こたつ600W、電気カーペット480Wといった数値は最大値です。実際はサーモスタットで出力が落ちるため、定格で掛け算すると実態より高く出ます
- 1日の使用時間が機器ごとに違う:エアコンは9時間、こたつは5時間で計算した表を並べると、そもそも同じ土俵になっていません
- エネルギー単価と季節日数が記事ごとに違う:電気27円/kWhと31円/kWh、シーズンを90日とするか169日とするかで、結論の金額は2倍近く動きます
そこで本記事では、資源エネルギー庁が省エネポータルサイトで公表している実測ベースのデータと換算係数を使い、すべて同じ前提に置き直して計算します。
前提をそろえる:国が使っている換算単価と暖房期間
資源エネルギー庁の省エネポータルサイトは、省エネ行動の効果を金額に換算する際の係数と季節日数を公開しています。本記事の計算はすべてこの前提に統一しました。
| 項目 | 本記事で使う値 | 出所 |
|---|---|---|
| 電気 | 31円/kWh | 令和4年7月 全国家庭電気製品公正取引協議会 新電力料金目安単価(税込) |
| 都市ガス | 162円/立方メートル | 平成29年版ガス事業便覧 供給約款料金平均を45MJに換算(税込) |
| 灯油 | 86円/L | 石油製品価格調査 全国平均灯油(店頭)価格 平成29年1月〜令和元年12月の3年平均(税込) |
| 暖房期間 | 169日(10月28日〜4月14日) | 省エネポータルサイト 省エネ効果の算出根拠 |
| 1日の使用時間 | 9時間(全機種共通) | 同サイトの空調の試算条件に合わせた |
| ひと冬の運転時間 | 1,521時間 | 169日×9時間 |
ひと冬の暖房費を同じ条件で計算する
省エネポータルサイトは「暖房を1日1時間短縮した場合の年間削減量」を機器別に公表しています。この値を暖房期間169日で割ると、1時間運転あたりの実測エネルギー消費量が求められます。これを9時間×169日に引き延ばしたのが下の表です。
| 機器(設定20℃) | 1時間あたりの消費 | 1時間あたりの金額 | ひと冬(1,521時間) |
|---|---|---|---|
| エアコン(2.2kW) | 電気 0.241kWh | 約7.5円 | 366.6kWh=約11,400円 |
| 石油ファンヒーター | 灯油 0.094L+電気 0.023kWh | 約8.8円 | 灯油143.2L+電気35.0kWh=約13,400円 |
| ガスファンヒーター | 都市ガス 0.075立方メートル+電気 0.022kWh | 約12.8円 | ガス114.1立方メートル+電気33.5kWh=約19,500円 |
エアコンを基準にすると、石油ファンヒーターは約1.2倍、ガスファンヒーターは約1.7倍のコストです。差額はひと冬でそれぞれ約2,000円、約8,200円になります。
エアコン最安は絶対ではない:順位が逆転する分岐点
上の結果は「電気31円/kWh・灯油86円/L」という前提の上に成り立っています。電気料金が上がれば、エアコンの優位は縮みます。どこで逆転するのかを計算しておきましょう。
ひと冬の消費量は、エアコンが電気366.6kWh、石油ファンヒーターが灯油143.2L+電気35.0kWhです。両者のコストが等しくなる条件を電気単価Eと灯油単価Kで解くと、E=0.432×Kという関係が出ます。同様にガスファンヒーター(ガス114.1立方メートル+電気33.5kWh)との分岐点はE=0.343×Gです。
| 相手の燃料単価 | エアコンと並ぶ電気単価 | 読み方 |
|---|---|---|
| 灯油 86円/L | 約37円/kWh | 電気が37円/kWhを超えると石油ファンヒーターの方が安い |
| 灯油 100円/L | 約43円/kWh | 灯油が高いほどエアコンの優位は広がる |
| 灯油 120円/L | 約52円/kWh | 現実的な電気単価ではエアコンが安い |
| 都市ガス 162円/立方メートル | 約56円/kWh | ガスファンヒーターは電気単価が相当上がらない限り逆転しない |
| 都市ガス 200円/立方メートル | 約69円/kWh | 同上 |
つまり、灯油が安い年ほど石油ファンヒーターの相対的な立場は良くなるということです。灯油86円/Lという国の換算値は数年前の平均で、実勢価格がこれより高い局面ではエアコンの優位はさらに広がります。逆に電気料金だけが上がる局面では、寒冷地で灯油を使う世帯の判断が変わり得ます。
この計算からわかるのは、暖房費を左右するのは機器の種類だけでなく「1kWhをいくらで買っているか」だという点です。冬は暖房で買電量が最も増える時期なので、使い方を絞ったうえで電気そのものの調達を見直すと効果が重なります。
電気の「買い方」から見直すなら
太陽光や蓄電池を入れて自家消費を増やせば、実質的な購入単価を下げられます。価格は施工店によって幅があるため、複数社の見積もりを比べるのが前提です。
設定温度1℃の効きめは、機器によって2倍違う
「暖房は20℃を目安に」はどの節約記事にも出てきますが、1℃下げたときの削減率は機器で大きく違います。同じデータセットから計算すると次のようになります。
金額でみるとエアコンが約1,650円、ガスファンヒーターが約1,320円、石油ファンヒーターが約880円の節約です。エアコンは元のコストが最も低いにもかかわらず、削減率では2倍の差をつけています。エアコン世帯ほど「設定温度を下げる」「厚着する」が効くということです。
こたつ・電気カーペットは「主役」ではなく設定温度を下げる道具
ここでひとつ、正直に書いておくべきことがあります。こたつと電気カーペットについて、国は「シーズンの絶対消費量」を公表していません。公表されているのは設定や使い方を変えたときの差分だけです。カタログの定格W数から掛け算した金額は、サーモスタットによる出力低下を無視するため実態より高く出ます。
そこで、確実に言える「差分」の方を見ます。こちらは行動に直結する数字です。
| やること | ひと冬の削減量 | 削減額 | 平均消費電力に換算 |
|---|---|---|---|
| 電気カーペット3畳の設定を「強」から「中」へ | 185.97kWh | 約5,770円 | 約220W分 |
| 電気カーペットを3畳用から2畳用へ(設定「中」) | 89.91kWh | 約2,790円 | 約106W分 |
| こたつの温度調節を「強」から「中」へ | 48.95kWh | 約1,520円 | 約58W分 |
| こたつ布団に上掛けと敷布団を併用する | 32.48kWh | 約1,010円 | 約38W分 |
注目したいのは電気カーペットの「強」です。3畳用を強で使い続けると、中にした場合よりひと冬で約5,770円多くかかります。これはエアコンの設定温度1℃分(約1,650円)の3.5倍にあたります。エアコンの温度を我慢する前に、足元機器の設定を見直す方が効く家庭は少なくありません。
局所暖房の正しい使い方は、エアコンの代わりにするのではなく、エアコンの設定温度を下げるために足すことです。エアコンを1℃下げれば約1,650円が浮きます。こたつを「中」で併用してその1℃を我慢できるなら、差し引きで得になる可能性が高い。逆にこたつを「強」で回しながらエアコンも21℃にしていると、両方のコストが積み上がります。
わが家はどれを主役にすべきか
ここまでの数字を踏まえると、選び方は「部屋の広さ」ではなく「どれくらいの時間、どこまで暖めたいか」で決まります。
今シーズン、先にやる5つ
- 電気カーペットとこたつの設定を「強」から「中」へ(最大で合計約7,290円/冬)
- エアコンの設定温度を21℃から20℃へ(約1,650円/冬)
- エアコンのフィルターを月1〜2回清掃(約990円/年)
- 厚手で床まで届くカーテンに替え、扇風機やサーキュレーターで暖気を循環させる
- ファンヒーターは就寝・外出の15分前に切る(室温はすぐには下がらない)
金額はいずれも資源エネルギー庁 省エネポータルサイトの試算値です。
よくある質問
暖房器具でいちばん安いのはどれですか?
電気31円/kWh・灯油86円/L・都市ガス162円/立方メートルという国の換算単価で、設定20℃・1日9時間・169日をそろえて計算すると、エアコンが約11,400円で最も安くなります。石油ファンヒーターが約13,400円、ガスファンヒーターが約19,500円です。ただしこの順位は燃料単価に依存し、灯油が86円/Lのままなら電気が約37円/kWhを超えた時点で石油ファンヒーターが逆転します。
こたつだけで過ごせば暖房費は下がりますか?
国はこたつのシーズン消費量そのものを公表していないため、「こたつだけなら年間いくら」と断定はできません。確実なのは、設定を「強」から「中」に下げると1日5時間の使用でひと冬約1,520円、こたつ布団に上掛けと敷布団を足すと約1,010円の削減になるという点です。こたつは腰から下しか暖めないため、上半身の防寒と室内の温度差に配慮したうえで判断してください。
設定温度を1℃下げると、どれくらい安くなりますか?
外気6℃・1日9時間の条件で、エアコンは年間53.08kWh(約1,650円)の削減です。本記事のシーズン消費量に対する割合に直すと約14.5%にあたります。一方、ガスファンヒーターは約1,320円(約7.1%)、石油ファンヒーターは約880円(約7.1%)で、エアコンのほうが1℃あたりの効きめは大きくなります。
出典
- 資源エネルギー庁 省エネポータルサイト「無理のない省エネ節約 空調」(エアコン・ガス/石油ファンヒーター・電気カーペット・電気こたつの省エネ効果)2026年8月17日確認
- 資源エネルギー庁 省エネポータルサイト「無理のない省エネ節約」省エネ効果の算出根拠(金額換算係数・原油換算係数・暖房期間169日)2026年8月17日確認
- 資源エネルギー庁 石油製品価格調査 調査の結果(最新の灯油・ガソリン価格。2026年8月13日公表分を確認)
※本記事の1時間あたり・ひと冬の金額は、上記データを当サイトが同一前提で再計算したものです。実際の費用は住宅の断熱性能・地域・契約プラン・機器の年式により変わります。
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