1時間あたりの電気代は、弱冷房除湿5.3円 < 冷房12.4円 < 再熱除湿16.8円の順です(東京電力エナジーパートナーの試算・31円/kWh)。
ただしこの3つは「取り除いている熱の量」が違うため、1時間あたりの金額を並べただけでは損得を判断できません。
水を1L抜くコストでそろえると、エアコンの弱冷房除湿は約6〜14円/Lとなり、除湿機(コンプレッサー式で21.3円/L)より安く湿気を抜けます。
この記事の要点
- 1時間あたりは弱冷房除湿5.3円・冷房12.4円・再熱除湿16.8円。安い順は「弱冷房除湿→冷房→再熱除湿」
- この3つの数字の出発点は2002年の試験。省エネ向上率を掛けて2025年に換算したもので、24年前の機種が土台になっている
- 3つは室温の下がり方が違う=仕事量が違うので、1時間あたりの金額を並べるのは「走った距離の違う車の燃料費」を比べるのと同じ
- 水1Lあたりで揃えるとエアコンの弱冷房除湿は約6〜14円(中央的な前提で約8.8円)。除湿機の18.2〜37.2円/Lより安い
- 再熱除湿は1日8時間・30日で弱冷房除湿より月約2,750円高い。ただし「室温を下げずに湿度だけ下げる」対価と考える
電力料金目安単価31円/kWh(全国家庭電気製品公正取引協議会)。2026年8月21日確認。
まず結論|1時間あたりでは「弱冷房除湿→冷房→再熱除湿」の順に高い
エアコンの「除湿(ドライ)」は1種類ではありません。東京電力エナジーパートナーの解説によると、家庭用エアコンの除湿は主に弱冷房除湿・再熱除湿・ハイブリッド除湿の3種類に分かれ、弱冷房除湿は一般的なモデルに、再熱除湿はハイエンドモデルに搭載されていることが多いとされています。まず、この3つと冷房の1時間あたりの電気代を並べます。
| 運転モード | 消費電力 | 1時間の電気代 | 室温の変化 |
|---|---|---|---|
| 弱冷房除湿 | 0.172kW | 約5.3円 | 少し下がる |
| 冷房 | 0.399kW | 約12.4円 | 最も下がる |
| 再熱除湿 | 0.541kW | 約16.8円 | ほとんど変わらない |
この順番の理由はしくみで説明できます。ダイキン工業の公式解説によると、弱冷房除湿は「弱めの冷房運転で温度を少し下げて除湿する」方式、再熱除湿は「温度を下げた空気を、ちょうどいい温度に暖めなおしてから部屋に戻す」方式です。再熱除湿は冷やしてから温め直すという二度手間を踏むため、同社も「冷房や弱冷房除湿よりも少し電気代が高くなります」と明記しています。
この3つの数字はどこから来たのか|2002年の試験を割り戻して検算する
「除湿と冷房の電気代」を扱う記事の多くは、5.3円・12.4円・16.8円という数字を出典なしで引用しています。実際にはこの3つには明確な出所があり、算出の過程も公開されています。東京電力エナジーパートナーは、東京電力が2002年に実施した試験結果を出発点に、環境省の「しんきゅうさん」で2002年モデルと2025年モデルの年間消費電力量を比較し、その比を省エネ向上率として掛け戻す、という手順を明示しています。
| 運転モード | 2002年試験の消費電力 | 省エネ向上率 | 2025年換算 | ×31円/kWh |
|---|---|---|---|---|
| 弱冷房除湿 | 0.179kW | 0.96 | 0.172kW | 5.33円 |
| 冷房 | 0.481kW | 0.83 | 0.399kW | 12.37円 |
| 再熱除湿 | 0.652kW | 0.83 | 0.541kW | 16.77円 |
掛け算と割り算を自分で追いかけると、数字の性格が見えてきます。省エネ向上率0.83は「2002年から2025年で、冷房の消費電力量が17%しか減っていない」という意味です。エアコンの省エネ性能はこの20年で大きく伸びたと言われますが、少なくともこの比較条件(東京・木造一戸建て・設定温度24℃・1日18時間)では、冷房の改善幅は2割弱にとどまっています。弱冷房除湿にいたっては0.96で、ほぼ横ばいです。
数字を読むときの注意
この3つの金額は2002年の実測を土台にした推計であり、2026年の実機を測り直した値ではありません。除湿運転の消費電力は室内外の温度・湿度で大きく変わるため、メーカーは除湿時の消費電力をカタログに載せていないのが通例です(東京電力エナジーパートナーも同じ理由を挙げています)。したがって「除湿は5.3円」と断言するのではなく、3方式の大小関係と倍率を読むための数字として扱うのが適切です。
なぜ単純比較が成り立たないのか|3つの運転は「取り除く熱量」が違う
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい点です。1時間あたりの電気代を3つ並べる比較は、走った距離が違う3台の車の燃料費を並べるのと同じ構造になっています。エアコンが使う電気は、部屋から外へ運び出した熱の量にほぼ比例します。ですから電気代が安い運転は、単に「運び出した熱が少ない運転」であることが多いのです。
弱冷房除湿が安い理由
風量を絞った弱い冷房運転なので、そもそも部屋から運び出す熱の総量が小さくなります。室温はあまり下がりません。「安い」のは節約に成功しているからではなく、仕事量が小さいからです。暑い日にこれで粘ると、涼しくならないまま時間だけが過ぎます。
再熱除湿が高い理由
いったん冷やした空気を温め直して戻すため、部屋の熱はほとんど減りません。それでも圧縮機は回り続けます。つまり「電気を使ったのに室温は変わらない」運転で、湿度だけを下げることに全額を払っている状態です。高いのは無駄だからではなく、そういう目的の機能だからです。
言い換えると、比べるべきなのは「1時間にいくらか」ではなく「目的をどれだけ達成したか1単位あたりいくらか」です。室温を下げたいなら1℃下げるコスト、湿気を抜きたいなら水1Lを抜くコスト。この記事では後者で揃えます。
当サイトの他の記事と数字が違って見える場合
資源エネルギー庁 省エネポータルの公表値から逆算すると、冷房の実勢消費は1時間あたり約0.168kWh(約5.2円)になります。本記事の冷房0.399kW(約12.4円)とは約2.4倍の開きがありますが、どちらも誤りではありません。前者は冷房期間112日を通した平均で、涼しい日や設定温度に達したあとの省電力運転を含みます。後者は室内外24℃・湿度80%という特定の試験条件での値です。運転モードどうしを比べる本記事では、条件を揃えた後者を使っています。
水1Lあたりで揃える|エアコンの除湿は除湿機より安い
湿気を抜くコストは、物理の定数を1つ使えば計算できます。空気中の水蒸気を1kg(=約1L)結露させるには、25℃で約2,442kJの熱を取り除く必要があります(水の蒸発潜熱)。これは0.678kWhの熱に相当します。エアコンは電気1に対して数倍の熱を動かせるので、実際に必要な電力はこれをCOP(成績係数)で割った値になります。
計算の手順(弱冷房除湿)
- 消費電力 0.172kW × COP=運び出している熱量(COP3.0〜5.0で0.52〜0.86kW)
- そのうち水蒸気を凝縮させるのに使われる割合(潜熱の割合)を50〜70%と置く
- 潜熱分 ÷ 0.678kWh/L = 1時間に抜ける水の量(0.38〜0.89L/h)
- 1時間の電気代5.33円 ÷ その水量 = 1Lあたり約6.0〜14.0円(中央的な前提のCOP4.0・潜熱60%で約8.8円)
COPと潜熱の割合は機種と運転条件で変わるため、幅を持たせて表示しています。水の蒸発潜熱は25℃の値。
この物差しで、当サイトが別記事で公式仕様から算出した除湿機の1Lあたりの電気代と並べます。除湿機側の数値は、コロナが仕様表に公表している除湿効率21.3円/Lと一致することを確認済みのものです。
| 機器・方式 | 1時間の電気代 | 1Lあたりの電気代 | 熱の捨て先 |
|---|---|---|---|
| エアコン 弱冷房除湿 | 約5.3円 | 約6〜14円(試算) | 室外機から屋外へ |
| 除湿機 ハイブリッド式 | 約7.6円 | 約18.2円 | 室内(部屋が暖まる) |
| 除湿機 コンプレッサー式 | 約5.6円 | 約21.3円 | 室内(部屋が暖まる) |
| 除湿機 デシカント式 | 約8.7円 | 約37.2円 | 室内(部屋が大きく暖まる) |
1時間あたりの絶対額で見ると、エアコンの弱冷房除湿5.3円と除湿機コンプレッサー式5.6円はほとんど同じです。ところが同じ1時間で抜ける水の量が違うため、1Lあたりでは2〜3倍の差がつきます。理由は表の右端にあります。除湿機は圧縮機が出した熱を部屋に戻すのに対し、エアコンは室外機からその熱を屋外へ捨てられるからです。コロナも公式ページで「除湿機にお部屋を冷やす機能はありません。むしろ運転中は熱を発生しますので温度が上がります」と明記しています。
つまりエアコンがある部屋の湿気取りに、わざわざ除湿機を買い足す必要は基本的にありません。除湿機が活きるのは、エアコンがない脱衣所やクローゼット、真冬の低温下(コンプレッサー式が苦手な領域)、そして部屋干しの衣類に直接風を当てたい場合です。用途がはっきり分かれます。
月額でいくら違うか|1日8時間×30日の実額
1時間の差は小さく見えても、夏の間ずっと使えば無視できない金額になります。1日8時間・30日で計算します。
| 運転モード | 1時間 | 1日8時間 | 30日 | 弱冷房除湿との差 |
|---|---|---|---|---|
| 弱冷房除湿 | 5.33円 | 約43円 | 約1,280円 | — |
| 冷房 | 12.37円 | 約99円 | 約2,970円 | +約1,690円 |
| 再熱除湿 | 16.77円 | 約134円 | 約4,030円 | +約2,750円 |
注目したいのは再熱除湿と弱冷房除湿の月2,750円差です。再熱除湿は上位機種にしか付いていない機能で、梅雨時や雨の夜のように「暑くはないが湿度だけ下げたい」場面では代えのきかない働きをします。ただし真夏に「除湿のほうが安いらしい」と考えて再熱除湿を選ぶと、冷房より高いうえに涼しくもならない、という最悪の組み合わせになります。自分のエアコンの除湿がどちらの方式かを、取扱説明書かカタログで一度確認しておく価値は十分にあります。
使い分けの判断フロー|迷ったらこの順に決める
最後に、実際にリモコンを持ったときの判断手順に落とします。出発点は「いま不快なのは温度なのか、湿度なのか」の一点です。
今日から見直せるチェックリスト
- 自分のエアコンの除湿が弱冷房除湿か再熱除湿かを取扱説明書で確認したか(再熱除湿は上位機種に多い)
- 真夏に「節約のつもり」で除湿を使っていないか(再熱除湿なら冷房より高い)
- 風量を手動の弱にしていないか(ダイキン公式は冷房時の風量自動を推奨。弱風は冷えるまでの時間が延びて結果的に電力を余分に使う)
- フィルターを2週間に1度掃除しているか(環境省の調査で冷房時約4%の削減効果)
- エアコンがある部屋に、重複して除湿機を買おうとしていないか(1Lあたりではエアコンのほうが安い)
よくある質問
除湿のほうが電気代が安いと聞きましたが、夏はずっと除湿でいいですか?
おすすめしません。安いのは弱冷房除湿の場合だけで、しかも室温があまり下がらないためです。再熱除湿を搭載した機種では、除湿のほうが冷房より約1.4倍高くなります。真夏に室温を下げたいなら冷房が正解で、冷房でも湿度は同時に下がります。
自分のエアコンがどちらの除湿方式か、どう調べればいいですか?
取扱説明書かメーカーの製品ページの機能一覧を確認します。東京電力エナジーパートナーの解説では、弱冷房除湿は一般的なモデル、再熱除湿はハイエンドモデルに搭載されていることが多いとされています。目安として、除湿運転で室温がほとんど下がらないなら再熱除湿、じわじわ下がって肌寒くなるなら弱冷房除湿と判断できます。
部屋干しのために、エアコンとは別に除湿機を買ったほうがいいですか?
湿度を下げるコストだけで見れば、エアコンの除湿のほうが1Lあたり安く済みます。除湿機を選ぶ理由は電気代ではなく、エアコンのない場所で使える・洗濯物に直接風を当てられる・冬の低温でも除湿できるという3点です。この3つに当てはまらないなら、まずエアコンの除湿で足りるか試してから判断するのが確実です。
出典
- 東京電力エナジーパートナー「エアコン除湿の電気代を解説!冷房・除湿機との料金比較や節約法も」(2025年5月29日公開・2025年8月7日更新)— 弱冷房除湿・冷房・再熱除湿の消費電力と電気代の試算、算出手順、除湿方式の分類
- 東京電力「エアコンの『除湿』モードの使用状況(調査結果)」(2002年試験)— 上記試算の基礎データ
- ダイキン工業「エアコンの電気代を節約する方法」(2026年8月7日更新)— 冷房と除湿のしくみ、再熱除湿の電気代が高い理由、電力料金単価31円/kWh、風量自動の推奨
- 環境省「省エネ製品買換ナビゲーション しんきゅうさん」— 2002年モデルと2025年モデルの年間消費電力量比較
- 全国家庭電気製品公正取引協議会「よくある質問」— 電力料金目安単価31円/kWh(税込)
- コロナ CD-P6326 製品仕様(除湿効率21.3円/L)、パナソニック F-YZVXJ60・F-YHVX120 製品仕様 — 除湿機の1Lあたり電気代の算出根拠
- 資源エネルギー庁 省エネポータルサイト — 冷房期間112日・電力単価31円/kWhの算出根拠
数値はすべて2026年8月21日に各公式ページで確認しました。1Lあたりの電気代のうちエアコン側は、公表値ではなく本文に示した前提による当サイトの試算値です。
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